根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

終わりの虹

2007-08-31 23:48:24 | エッセイ、コラム
遅い夕食をとりに出掛ける。
何てことない夕食を済ませ家路に着く。
明日からの始まる9月に合わせたように涼しい夜。
くちくなった腹を抱え、見上げた夜空は薄曇りに月。
8月の終わりは、月光を反映して薄雲にかかる丸いおぼろげな虹だった。


映画『夕凪の街 桜の国』

2007-08-24 05:06:07 | エッセイ、コラム
レイトショウの割引サービスを利用して、映画『夕凪の街 桜の国』を観て来ました。
シネコンの座席数170の劇場に10名程の観客。
大体に於いてレイトショウはこの程度の観客で運営される劇場側のサービスなのかもしれません。



映画の方は「原爆」という重いテーマを扱いながらも、これでもか、という目を背けたくなるような凄まじい原爆の被害映像のオンパレード、という様な作品とは殆ど無縁のものでした。
原爆という放射能を使った大量破壊兵器の使用は、そこで生き残った人々をも長年に渡って心身ともに確実に蝕んでいくから、そしてその悪しき影響は世代を超えて受け継がれてしまうから、NO!なのだ、ということを、そこに強いメッセージ性をはらませながらも、さり気ない語り口で、それとなく伝えようとしていて、その押し付けがましくない点に、かなり好感が持てました。


広島・長崎は平和教育が徹底しています。
私の出身地の長崎県では夏休みの登校日が8月9日になり、そのときに原爆の悲惨さを子供の頃から嫌という程叩き込まれるのですが、以前、東京の学校の先生と話す機会があって、その話しをすると、東京あたりではそんな感じの平和教育の徹底はない、との答えでした。
その話しを聞いたとき、被爆国としてこれで良いのだろうか、と疑問に思ったことを、この映画を観たことでふと思い出しました。


映画『天然コケッコー』 in MOVIX昭島

2007-08-21 00:04:22 | エッセイ、コラム
5度目の『天然コケッコー』を観に行ってきました。
今回の劇場は昭島のモリタウン内にあるシネコン・MOVIX昭島。
初めて郊外の大型ショッピング・モールというものに足を踏み入れました。


大小12個ある劇場のうち、座席数130の小さめの劇場が『天然コケッコー』には当てられていました。
座席部分の傾斜がかなり急になっていて、とても観やすい劇場でした。
音響もかなり良し。
今日はMOVIXのサービス・デイで千円で観られる日であることも作用したのか、平日の夕方の回にも関わらず、座席数の3分の1くらいは埋まっていました。


いつもの如く、決まった所で感動し、泣き、クスリと笑い、里山の風景に癒やされ、そんな心地良い2時間でした。

ふと思ったのは、劇中の「木村」という地域や、「分校」、「教室」という、夢のように穏やかでピュアな場所は、キラキラした主人公の年代の象徴なんだな、ということ。
その夢のように穏やかでピュアな場所に、年代に、主人公が決別し大人の階段を上がっていくから、そして一度上がってしまうと二度とそこに戻れないことを私たちは分かっているから、そこを去るとき主人公が無邪気に呟く、

「サヨナラ、また来るけ」

という台詞が切なく響くのでしょう。
二度と帰ることなんて出来ないのに…。


『天然コケッコー』は5度観たので、とりあえずここで勘弁してやりましょう。
あとはDVD化されるまで、心の中でこの作品を熟成させたいと思います。


私の2007年・夏は完全に『天然コケッコー』と共にあったということで…。


阿波踊り

2007-08-20 00:42:31 | エッセイ、コラム
甲子園の準々決勝、佐賀北と帝京の好試合を途中からテレビ観戦し、そのあとダラダラと午睡をして、夕刻になったので所用で三鷹の駅前に出掛ける。
8月も半ばを過ぎると、午後の光が切なさを帯び始める。
そんな光を浴びながら駅前の商店街に向かう。

商店街に近付くと、賑やかな鳴りモノと掛け声、そして人混みに出くわす。
そうだ、昨日と今日と、阿波踊り大会が開かれていたのだった。

最近こういう騒がしいのは苦手なのだが、あまり拡声器による増幅音がないせいか、充分な睡眠の後で機嫌が良かったせいか、そこら辺は分からないが、嫌な気分になるよりは、珍しくちょっとウキウキした気分になった。
道端に出店している露店でアメリカンドッグを50円で買うと、その中身は肉のソーセージではなく、魚肉ソーセージであった(笑)。
世の中には旨い話しはない、ということで…。
あとインド料理屋のラッシーを買って飲む。
こちらは真っ当な本物。
コールド・ドリンクというにはやや温(ぬる)さを感じたが、それでも旨し。


各町内ごとにチームを作って、踊るらしく、竿の先に地域ごとの提灯を付けた物を持つ者を先頭に、その後に踊り手、囃子を鳴らす者、の順で阿波踊りチームは構成され続いていた。

踊っている人たちが一番楽しそうにしていて、それがなんか良かった。


こういうイベントが地域にある人たちは、これによって「過ぎ行く夏」を感じるのだろう。
今の場所に結構長いこと住んでいるが、地域コミュニティーとは無縁なので、こういうイベントに参加することもないのだが、たまにはこんなのも悪くないなぁ、とホンの一瞬だけ思った。


8月もあと10日ほど、まだ暑いし、暫くはまだ暑い日が続く筈で、涼しい日々はずっと先なのだろうけど、9月は近い。
狂った気候の中でも、切ないニュースが絶えない世知辛い世の中でも、それでも確実に時は流れているようで…。


映画『天然コケッコー』 in 立川シネマシティ

2007-08-14 13:06:00 | エッセイ、コラム
昨夜、4度目の『天然コケッコー』に行って来ました。
今回の小屋は立川にあるシネコン、シネマシティです。
レイトショウ、20時30分以降に上映される作品の視聴だと料金が千二百円になるので、そのシステムを利用しました。
175席あるホールでしたが、お盆休みの時期の、しかも郊外都市の立川で、20時55分から上映される、淡々とした映画をわざわざ観ようとするような、酔狂な人間は少ないとみえて、今回の観客は30人に満たない程度でした。
今まで公開2日目、映画の日、サービスディーと満員の中でこの映画を観てきただけに、いつもとちょっと違う雰囲気に少し戸惑いました。
音響はさすがシネコン、サラウンド効果がかなり効いていて、淡々とした映画には勿体無い臨場感でした。
シートはやや硬めながら、前列との間が結構空いている作りでゆったりと出来、意外と快適な2時間を過ごせました。



映画は相変わらずの心地良さ、夏の田園風景にトンボが舞う姿、秋や冬場に田畑から立ち昇る焚き火の煙り、里山を覆う朝霧、そして夏の午後の切なさを宿した陽光、などなど長閑(のどか)な「田舎」が画面いっぱいに広がります。

長閑な田舎を舞台に、穏やかな人たちが繰り広げる日常、主人公の少女がみせる思春期独特の微妙なココロの動き、そして永遠に続くと思われたそんな小さく平和な世界との少女の否応無い決別。
少女と少年の淡い恋と初々しい付き合い。

全てが瑞々しく、優しく、切ない。

大きな事件が発生する訳でもなく、幾つかの他愛もないエピソードをバラまいただけのような、起伏の少ない淡々とした作風。
退屈なのか、心地良いのか、の微妙なラインで描かれる物語。

刺激を求める人たちには決して受け入れられないだろうけれど、「都会生活」や「人間関係」に疲れてしまった人には確実に、静かな感動と癒やしを与えてくれることでしょう。


そして、誰かが既にmixi日記で指摘していましたが、劇中フレームの端にて愛らしい姿で観客の微笑みを誘い、素晴らしい演技(?)をみせていたネコちゃんの名前が「大沢」であることを、昨夜の視聴の最後、クレジットロールで確認しました(笑)。


『天然コケッコー』三度目

2007-08-08 18:03:37 | エッセイ、コラム
渋谷のシネ・アミューズの水曜千円ディーを利用して、三度目の『天然コケッコー』に行ってきました。

三度目ともなると、ストーリーは頭に入っているし、美しいシーンやココロの揺さぶられ所が分かっているので、さぁここで泣くぞ、と準備をしながらの視聴となってきます。
しかし、この映画は優れた絵画を観るように、回を重ねても飽きがきません。
それは元々刺激的なシーンが存在しないが為に、逆に起きる現象なのかもしれません。

何回観てもよく撮れているなぁ、と思うのは、夏の午後の少し傾きかけた陽の光の色です。
あるいは四季の移り変わりで様々な表情をみせる里山の風景など。

舞台となる所は、少し変わり者の人間は存在していても、基本的には善人で構成された田舎のコミュニティーです。
そんな地域社会が日本には、なかなか存在しなくなってきているからこそ、そこで生き生きとした表情をみせる子供たち、あるいは思春期真っ只中の主人公「そよ」のココロの微妙な動きに感情移入し、なんでもないシーンに涙してしまうのかもしれない、そう思いました。

ひとつの映画を観る為に何度も劇場に足を運ぶのは初めての経験です。
この映画には今の私に欠落した「何か」が存在するのでしょう。
とりあえず、今回で『天然コケッコー』を現在都内で上映している映画館3館は全て制覇しました(笑)。


梅雨明け→晩夏

2007-08-05 13:49:17 | エッセイ、コラム
いやはや暑い。
昼食をとったら無性に眠気が襲ってきた。
いま本格的な睡眠をとってしまうと、夜に眠れなくなることは分かっているので、少し抗ってみせるが、程なく軽い眠りに就いてしまう。

部屋の外では蝉が鳴いている。
既に晩夏の蝉のツクツクホウシまで鳴き出していて、梅雨明けはこの前だったのに、もう季節が無茶苦茶だ。
しかし、こう暑いと外出もままならず、下手に外に出て熱射病にでもなったらコトなので、しばらくは大人しくエアコンの効いた部屋で過ごし、気温が落ち着く夕方まで買い物に出掛けるのは控えることにしよう。

たぶん、こんな夏の午後なんだろうなのだと思う、白昼夢なんてものをみてしまうのは。
まったく脳みそもエラーを起こしてしまうだろう、こんな感じの暑さでは。

なぜか、私は白昼夢というとサルスベリの紅い花とリンクして考えてしまう。
陽炎が立ち昇るアスファルトに、青い空と入道雲、そしてサルスベリの紅い花、それが白昼夢をみる条件のように思えてしまう。
もちろん、尋常ならざる気温の高さもあるのだが…。


軽い仮眠をとって、朝、落とした珈琲を口にしたら少し脳が覚醒してきた。

さて、真夏に似合う音楽でもかけながら、読書でもすることにするか…。

やっと手に入れました!

2007-08-04 19:25:48 | エッセイ、コラム
昨日、映画『天然コケッコー』の原作漫画のオムニバス本がコンビニで廉価で販売されている、という情報を得て、深夜の吉祥寺をコンビニをハシゴしながら探して歩くものの、行くコンビニにはワザとのように置いてなく、結局手に入れられず家に戻って来ました。
時間にして90分程のナイトウォーキングでした。

気を取り直し、仕切り直して、本日の午後、三鷹駅前のコンビニに行くとアッサリ目的の本を発見。
“急性『天コケ』症候群”に罹患している私は即購入、いまはホクホクとした気分です。

まだ軽く眺めてみただけですが、たぶんこの特別編集の原作本のなかにも、映画と同じく現代日本人が忘れてしまった「良き日本」が詰まっているのでしょう。


しかし、何故この本はコンビニのみでの販売なのでしょうか…流通の謎です。


リベンジ『天然コケッコー』

2007-08-01 21:51:23 | エッセイ、コラム
先日睡眠不足から不覚にも途中で寝てしまった映画『天然コケッコー』を「映画の日」の利用で観てきました。
今回の小屋は“新宿武蔵野館”、用心のため1時間前から映画館に入り備えます。
さすがに千円で映画を観られる日だけに、上映時間が迫るにつれ、人が増えてゆきました。
キャパが130名という小屋で、さらに特別な日だったので上映時には満席となっていました。


今回はちゃんとストーリーを追える程度には覚醒していたので、結構細かいところまで楽しめました。
この映画の「力」なのか、なんでもないシーンに心動かされ涙すること数回。
前回観逃したオチ的なパートもバッチリ視聴しました。
とても美しいシーンを観逃していたことに気付きました。
カメラワークと光の変遷により、ワンシーンで時間の経過を描いてゆくところが、なんとも美しく見事!
主人公が劇中みせる中学時代へのサヨナラの仕方も素晴らしい。


なんにもない、なんでもない日常が、実はとってもキラキラしたもので、貴重なものなんだ、と思わせてくれるには充分な映画でした。