根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

桜桃忌 2013

2013-06-19 22:40:58 | エッセイ、コラム
本日は太宰治の死と生を祈念する「桜桃忌」というものでした。
例年ならば、玉川上水の入水地にも花が供えられていたりするのですが、今日の東京は天気が読めなく、また平日でもあったため、夕刻その場所に赴いてみた時には、1人の太宰ファンらしい文学青年が近くのベンチでスマフォをいじっていた以外は人気もなく、写真の通りお花もありませんでした。
太宰のお墓がある禅林寺には、たぶん花が沢山供えられていたと思うのですが…。

私が太宰と本格的に触れたのは、高校生の頃、小学生の頃は児童文学と漫画、中学生の頃は漫画だけ、高校生になって、クラスメイトと議論になった時に言い負かされる事が続いたため、こりゃ読書をして教養をつけなきゃならん!! と思ったのがきっかけでした。
大学で文学を学んでいた、兄に頼んで蔵書を貸して貰ったその中に太宰治作品群が混じっていたのです。
兄の他の作家の蔵書も含めて高校生活で太宰は全巻読破したのですが、田舎の人生経験が浅い少年には、太宰の作品で評価が高い作品はよく分からなかったというのが、正直な所でした。

そののち生きていくに当たっての酸いも甘いも味わい、その兄が貸してくれた蔵書に始まり読書に目覚め、数千冊、万単位で本を読んできた今なら、ひょっとしたら共感出来るものがあるのかもしれませんが…。

ここで有名な『走れメロス』は別格として、取っ付きやすい太宰の作品を2冊紹介しておきましょうか。

まずは『グッドバイ』、既婚にもかかわらず女好きでお調子者の男が戦争の混乱の中で訳あって別居していた妻との生活を復活させるため、幾人もいる浮気相手との関係を精算するべく奮闘する様がユーモラスに描かれた作品です。
執筆途中で心中してしまったので未完ですけどね。

もう1冊は『ろまん燈籠』、アカデミックな家庭の兄弟が、遊びで1つの物語を順番につむいでいくという劇中劇を盛り込んだ作品。
兄弟の性格が、割り当てられたパートに反映するという、興味深く面白い構成になっています。

太宰を読まず嫌いでいる本好きの方はこの辺から入っていくと好いと思います。
日本文学史を語る上で必ず登場する太宰治ですし。

梅雨時の外出が億劫に感じる現在や、夏の暑さで、これまた外に出るのに気合いが必要な時、部屋やカフェで太宰の世界の一端を垣間見るのも一興かと。