根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

夕焼けがキレイだった!

2007-06-29 20:21:52 | エッセイ、コラム
午後に降り出した雨があがりかけで、西の空が変な感じ
に、でも美しく紅色に染まっていた。
しかし、夏至あとの、陽が沈むような時刻に、私の年齢で
暇しているような酔狂な友人はひとりもいないので、その
感動を分かち合うことはできない。
携帯電話ももっていないのでメールも打てない。
打ったところで仕事で余裕がないであろう人間に、あの美
しさを感じる感覚などはどこにもないだろう。

安売りの、でも品揃えがマニアックな酒屋に出掛け、アメ
リカン・ウィスキーの試飲をする。
一杯100円。
この前、喉の急激な渇きに耐えかね、ギネスをハーフ・パ
イントだけ飲むため、清水の舞台から飛び降りるような気
持ちで入ったショット・バーで目をつけていた「レベッカ」と
いうバーボン・ウィスキーがラインナップされていたため、
貯金箱のようなものに、チャリンとコインを入れ、迷わず一
杯。
バーで飲んだら安くても一杯600円、高けりゃ1000円以上
は軽く取られるであろう酒を只(ただ)のような値段で飲める
のは嬉しいことだ。
しかもなかなか旨い酒。
まぁ、でも一般人の感覚ではない。
そんなことは誰に言われなくても分かっている。
チェイサーなんて気の利いたものなどは用意されてなく、生
(き)でいったウィスキーで喉が焼けたため、一個10円のサラ
ミ・ソーセージを買い酒屋をあとにする。
しめて110円、酒屋にしたらロクな客ではない。

タバコのレベルがフィリップ・モリスからゴールデン・バットに
までいっきに落ちる。
両切りのゴールデン・バットも慣れれば悪くはない。
まぁ、これも人生。

夕焼けの美しさにひとり目を細めるのも、平日の午後から酒
屋の試飲ウィスキーに喉を焼くのも、ゴールデン・バットを蒸
し暑い空気の中でふかすのも、いま現在のリアルな自分だ。
自己認識はとても大事。
そして、いまはボトム、あとは上がっていくしかない。
いまにみてろ!
そう吉祥寺の週末に毒づく六月二十九日の夜だった。


フラワー・エロス

2007-06-26 17:35:47 | エッセイ、コラム
庭のスカシユリが花を付けた。
淡いオレンジの花。
仄(ほの)かにユリ独特の匂いもさせている。
梅雨らしい天気のせいで花には幾つもの水滴が付着して
いる。
非常に艶(なまめ)かしく。

コーヒーを淹れ、タバコをふかし、このスカシユリをためす、
すがめつ愛でてみる。
ときを忘れながら…。

昔、写真家のアラーキーが、花の、確か蘭あたりの写真
を官能的に撮っていたのを覚えているが、ヌードを得意と
する彼が花を題材に選んだ理由はよく分かる気がする。
花はときに人間の女性の裸体以上にエロチックな姿をみ
せることがあるのだ。
そんなことを、庭に咲いたスカシユリをみながら思うのだっ
た。


マックの夕暮れ

2007-06-20 12:02:30 | エッセイ、コラム
先日、G・レトリバーの友犬・マックの家を通りかかった
所、ひどく枯れた声で鳴いていてどうも様子が変だった。
腰にはコルセット状のものも巻いている。
尋常ではない状態だ。
昨日、マックの飼い主さんをお見かけしたので、マック
はどうしてしまったのか、と尋ねると、実はマックは15年
生きている老犬で体のあちこちにガタがきている状態で
獣医さんにはこの夏を越えられるかどうか微妙な所だと
診断された、という答えが返ってきた。

この秋にはマックは存在していないかもしれない…。
哀しいとき、うれしいとき、怒りに体がふるえそうなとき、
喜びでひとり踊りだしそうなとき、いつもの場所に寝そ
べって道行く人を眺め、私のこともちゃんと覚えていてく
れていて、私の存在を認めると尻尾をふり、手を舐めて
くれた優しい彼がこの夏には遠くに行ってしまうかもしれ
ない。
私は彼の存在によって何回救われたか分らないくらいだ。
いやはや、なんてことだろう…。
飼い主さんの話しを聞いていて思わず泣き出しそうになっ
てしまった。
形あるものは必ず壊れ、命あるものは絶対に死のときを
迎える。
それは自然のことなのだが、しかし…。

これからは思い残りがないように、彼が触れられる距離
に寝ているときには、今までよりも沢山マックのことを撫
でてあげようと思った。


不条理

2007-06-10 10:14:25 | ダイアリー
天気悪くなるからと外出をなるべく控えていた昨日まで
は特に天候の急変もなくて、大丈夫だろうとネットカフェ
に出てきた今日は雷雨に見舞われる。
人生とは得てしてこんなものなのである…。
雲の上の鬼なんて死んでしまえ…。