根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

映画『クライマーズ・ハイ』

2008-07-05 23:59:16 | エッセイ、コラム
原作:横山秀夫、監督:原田眞人、出演:堤真一、境雅人、高嶋政宏、尾野真千子、山崎努、遠藤憲一、田口トモロヲ、堀部圭亮、螢雪次郎、西田尚美、小澤征悦、他、の映画『クライマーズ・ハイ』を観てきました。


ストーリーは、1985年8月12日の日航機墜落事故発生の一報を受けて、事故現場となった群馬県の地元紙“北関東新聞社(群馬県の地元紙という設定の架空の新聞社)”の編集部の怒涛の1週間を、この事故に関するニュースの全権デスクを任された遊軍記者の悠木和雅(堤真一)を主人公に描いたものです。


もっと日航機墜落の事故がメインにきて事故そのものが細かく描かれると思っていたのですが、この大惨事を受けて、まるで戦場と化す新聞社の人間模様や、デスクとして活躍する悠木の記者魂、そして同時にプライベートでも問題が発生し公私共に苦悩する主人公に焦点が当てられた作品になっていました。

日々ニュースを伝え、それを翌朝には紙媒体として形にしなければならない、新聞社の編集部の目まぐるしさなどは非常に興味深く、記者としての信念は勿論、そこにも「政治」や「権力争い」があったり、メディアでもあると同時に、利益を追求する会社でもあり、序列がある会社組織でもある、という特殊な環境の一つである新聞社を、日航機墜落を通して炙(あぶ)り出した作品とも言えるでしょう。
同業他社に先んじてスクープを狙う記者たちの血の滲むような苦労もよく描かれていたように思います。

“クライマーズ・ハイ”とは、登山者が山を登る際に、興奮状態が極限まで達し、恐怖感も麻痺して、山頂を目指し脇目もふらず登山していく様を表した言葉のようです。

未曽有の大惨事を受けて、その事故に関するニュースの全権デスクを任された悠木という人物を初めとする記者たちの、事故が起きてからの1週間の精神状態がまさに“クライマーズ・ハイ”そのものだったという事でしょう。

今回、堤真一や境雅人以外で非常に好演していたのが、社会部・部長・等々力を演じた遠藤憲一のように感じました。
バイ・プレイヤーとしては有名な俳優さんですが、クセのある人物を実に上手く演じて、堤真一を際立たせる事に一役かっていたように思います。

2時間半という長めの作品でしたが、退屈せずに観られたのは監督の腕でしょう。
ただラストのエピローグはちょっと蛇足だったかな、と個人的には思いました。