根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

マックの災難

2007-05-17 18:01:28 | エッセイ、コラム
先の暑かった日の夕刻、G・レトリーバーの友犬マックの家
を通りかかったときのこと。
昼間の暑さに閉口したのか、マックくんは僅かな涼を求め
玄関先に駐車してある車の下に頭を突っ込んで寝ていた。
身体は大きくて入らなかったらしい。
犬の浅知恵がユーモラスで可愛らしい。

耳が不自由な犬なので彼が寝ているときは身体を軽く撫
でて挨拶をする。
そうするとビクッと身体を震わせ起きるのがいつものパタ
ーンで、その日も特に他意はなかった。
そんな風に起こしてもマックくんが私に対して怒ったことは
一度もない。
見知らぬ人が家に近づくと吠えるのをみかけることもある
ので、そこは私とマックくんの長年の信頼関係にもよるの
だろう。
起こされると時々は迷惑そうな顔もするのだが…。

そういう訳でその日も寝ているマックくんの身体を軽く撫で
て挨拶をしたのだった。
しかし、そのときはマックくんの頭の位置が悪かった。

ゴンッ!

それは刺激に驚き、飛び起きたマックくんが頭を車の床に
ぶつけた音。
結構派手な音だった。

「あぁ、ごめんなマック、痛かったろう」

マックくんの耳には私のそんな声は届かないことは分かっ
ているのだが、思わずそんな言葉が出てしまう。
同時に身体も撫でてご機嫌もとる。
通常ならば、私の存在を認めると尻尾くらいは振るのだが、
さすがにその日はぶつけた頭が痛かったらしく、そんなこ
とはしなかった。
怒りはしないものの、やはり

『何やってくれるんだ。痛てぇーじゃねぇーか!』

くらいの気持ちはあったのだろう。
マックくん自身も何が起こったのか把握するのに時間が必
要だったようで、一拍して落ち着くと、今度は少しバツが悪
そうな、心なしか恥ずかしそうな、そんな表情を浮かべなが
ら私をみていた。

ごめんなぁ、という気持ちを込め、いつもより長くマックくん
の頭を撫で、そしてサヨナラをする。
まったく…、そんな顔をして私を見送るマックくんの顔がま
た可笑しかった。

友犬マックは、こんな風にして、いつも私を笑わせ和ませ
てくれる大事な友達の一人なのだ。


カミツレ、安藤裕子、星空

2007-05-14 20:47:20 | エッセイ、コラム
最近恒例となった就寝前のハーブ・ティーを淹れる作業
をする。
旬のカモミールを主体にしたハーブティーだ。
カモミールは花のみを使用するため、茎から花を外す作
業が欠かせない。
現在使用しているのは友人の所で分けてもらったカモミ
ールであるが、私の台所の戸棚には乾燥のカモミール・
ティーのティー・バッグもあってそれはケニア産のものだ。
何でもフェア・トレードなる運動の一環で作られたものら
しい。
多分、ケニアの貧しい女性の手によって摘まれたカモミ
ールが使用されているのだろう。
そんなことを頭に置きながら、カモミールの花を茎から外
していると、ケニアの少女のことに思いがおよぶ。
家が貧しくて、でも夢はあって、しかし仕事はなくて、当
然教育も満足に受けられなかったりして…、そんななか、
先進国のボランティア団体からこういう仕事があるよ、と
カモミール摘みの仕事を紹介される、そんな架空の少女
のことだ。

そんな想像とも妄想ともつかないことをやりながら作業を
しているうちに一回分のお茶に使う量の花外しは終わっ
てしまう。
それに同じく分けてもらった、レモングラス、マジョラム、
セージ、ブラックミントを加え、お湯を注いだら、ハーブ・
ティー・スリーピー・スペシャルの完成だ。

庭に出て、ハーブ・ティーを片手にインド煙草のビディを
吸う。
暗闇に溶けていく煙を追って、夜空を見上げるとそこに
は北斗七星が光っていた。
安藤裕子の曲に「夜と星の足跡 3つの提示」というのが
あって、そこにはこんな歌詞が出てくる。

♪晴れた夜に星まみれたら 二人を残して全てを消そう

星にまみれることができると感じられる夜空にはどれ程
一杯の星が光っていたのだろうか。
長崎の山の上でみた星空は、ミルキーウェイというのは
このことなのか、と感動する程クリアで星が一杯の夜空
であったが、多分そんな星空をみて安藤裕子はこの曲を
書いたのだろう。
しかし、「星まみれ」る、とはなんて詩的な表現なのだろ
うか。
残念ながら、冬でもない、この季節の東京の夜空の星に
は、「まみれ」ることは、できそうもない。

そういえば、インドのアーグラでサイクル・リクシャに揺ら
れながら見上げた星空も綺麗だった。
この辺の連想は吸っているビディの影響によるものか。

ケニアのカモミール摘みの少女も夜空一杯の星を見上げ
ながら、星にまみれて恋人と愛を語りあったりしてるのだ
ろうか。

しかし、星すら満足にみられない東京と、多分降ってくる
ような星空のケニアと、一体どちらの方が幸せなのだろう
…。

やさしい雨

2007-05-06 18:18:39 | ダイアリー
GWの晴天が去り、雨がアジサイの葉を叩き出した。
外出するのが面倒になる雨は基本的には嫌いなのだが、
たまに妙に良く感じるときがある。
5月のやさしい雨。
一時的にではあるが「落ち着き」が戻ってくる。