根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

祝、梅崎司 A代表デビュー!~サッカー日本代表 アジア杯最終予選 VSイエメン ~

2006-09-07 14:35:58 | スポーツ
後半ロスタイム、大分トリニータの梅崎司がたった一分
間だけイエメンのピッチに立った。
一分間では当然仕事なんかできる筈もない。
しかし、

『19歳の長崎人がA代表の一員として試合に出場した』

とりあえずはこれで充分だ。
梅崎の“A代表選出・ベンチ入り・試合出場”に県内外の
長崎人がどれだけ刺激を受け、力をもらい、そして、

「オイも頑張らんば!」
(※長崎弁で『オレも頑張らないと!』の意味)

と思ったことだろう。
それを考えると、たった一分間ではあったが、梅崎の功
績は非常に大きいと言える。


試合後の梅崎のコメント

「A代表でもやれると思った」

これも頼もしい限りじゃないか!
次回はピッチ上で躍動する彼の姿に期待したい。

松橋も徳永も中村北斗も平山も大久保(大久保は代表
復帰となるが…)も梅崎に続け!

松橋章太

2006-08-27 17:40:26 | スポーツ

サッカー・Jリーグの大分トリニータでFWをやっている選手に
松橋章太
http://soccer.yahoo.co.jp/jleague/player/3921/index.html
という人物がいる。
国見出身で高校選手権の時、大久保の盟友として得点を重
ねた選手だ。
大会では結構目立っていた選手ではあったが、クラブのスカ
ウター達の目には今ひとつという印象であったのか、大会が
始まった当時は進路が決まってなく、実況を担当していたア
ナウンサーが、
「松橋選手、まだ進路決まってないようですよ。どこか彼を獲
得するクラブはないんですかねぇ?」
なんて語る程度の選手でしかなかった。
その後、大会中に大分がオファーを出し、その才能をドブに
捨てる事なくプロとしてのキャリアをスタートさせる事が出来
た。

 しかし、スピードはあるもののスター選手のような突出したも
のに欠けるせいか、なかなかちゃんと使ってもらえず、出場
しても後半途中からというのが殆どという状態が続いていた。
良くも悪くも注目を浴びながら桧舞台に立ってきた大久保と
は大違いである。
Jリーグもシビアな世界で成績を残せない選手はチームから
解雇を言い渡され、毎年ひっそりと引退していく選手も多い
と聞く。
松橋もその内引退してしまうのかと思っていたのだが、大分
は辛抱強く彼の才能が開花するのを待ってくれていたみた
いで、今年まで彼の引退という寂しい情報を耳にする事はな
かった。

その松橋章太が今期調子が良い。
今期の通算得点が8。 8月26日時点のデータを基にすると
得点ランキングでは12 位となっている。
しかし、12位とは言っても日本人選手の中では巻や佐藤の
10得点に続いて2番目のゴール数。
これだけをみると代表に呼ばれてもおかしくない位の成績だ。
何か人間自分を信じて地道に努力しているといつかチャン
スは巡ってくるものだなぁっていうのを実感する。
問題は幸運の女神の前髪をキチンと掴む事が出来るかだ。
今が彼の踏ん張り所でもある。ここはさらに得点を重ね、オ
シムにもアピール、そして代表での彼の姿を観てみたいもの
だ。

頑張れ、松橋章太!
さらなるブレイクを期待しているぞ!!


P.S. 最近はこういう記事も書かれていたようである。 http://kyusyu.nikkansports.com/soccer/jleague/trinita/p-kt-tp0-20060821-78523.html


W杯・ドイツ大会 フランスvsイタリア ~プライドの代償~

2006-07-10 15:24:09 | スポーツ
延長戦の後半、暴力行為でレッドカードを受けたジダン
が、W杯のトロフィを尻目に、ピッチからロッカールーム
へ続く階段を肩を落としながら下りてゆくシーンが、今
回の決勝戦の行方を如実に表していたように思う。
もし、これが漫画やドラマならば、「ジダンのために!」
と奮起したフランス選手たちが怒涛の攻撃をみせてゴ
ール! という事になるのだろうけど、現実にはそんな
事もなく、1-1のドローのままイタリアにPK戦にまで持
ち込まれた末、逆にそこでPKを外したフランスが負け
てしまう、という結果になってしまった。

今回で引退してしまうジダンがいる事で漠然とフランス
を応援してはいたが、結局の所どちらが勝っても構わな
いとも思っていた。
しかし、このジダンの退場でいっきにフランスに気持ち
が傾いてしまい、残り少ない試合時間は盲目的にフラ
ンスを応援してしまう。
そして、PK戦を制し、イタリア優勝! 
フランスに感情移入してしまっていた事もあり、ブラウン
管の中で歓喜に沸くイタリア選手たちを苦々しくみつめ、
涙まで流してしまう始末。

こんな形で選手生活にピリオドを打たなければならない
ジダンはひたすら気の毒で、サッカー史に残るであろう
人物のラストダンスに泥を塗ったイタリア(実際に悪いの
はマテラッツィだけなのだけど)は、もはや嫌悪の対象で
しかない。
特殊な事情がない限り、この先私がイタリアを応援する
事は決してないだろう、と思った。
日本代表の敗戦共々、W杯・ドイツ大会の決勝戦の結
果もまた釈然としないものになってしまった。

ジダンがフランス優勝の可能性を遠ざけ、また自身の輝
かしい選手生活に傷を付けてまで守りたかったものとは
一体何だったのだろうか…。

ワースト・ゲーム~日本テレビによる最悪のW杯中継~

2006-06-17 16:36:45 | スポーツ
ワーストつまり最悪というのは試合内容の事ではない。
日本テレビによる試合の実況についての感想だ。
基本的に実況のアナウンサーと解説の方とのコンビネー
ションによって行われていく筈の実況にさんまさんがゲス
トだったかで名前を連ねている事に対して嫌な予感はし
ていた。
試合が開始されゲームが進行していく中、その嫌な予感
が当たってしまった事に気付く。
アナウンサーが実況をしないのだ!

アナウンサーが事前に調べてきた資料を読む、その調べ
てきた事についてさんまさんにコメントを求める、それを受
けてさんまさんが自分のサッカーに対する思い入れをギャ
グ混じりで語る、そういった展開に同じくゲストの中山選手
が時々絡んでくる。
そんな感じで白熱した試合映像に似つかわしくないまった
りとした音声がかぶさってくるという具合。

始めこれは副音声じゃないかと思った。
何かの折に聞いていた副音声メインのものがそのままに
なっていて、通常の状態に戻すのを忘れていたものでは
ないのかと…。
そう思って音声出力の表示をみてもそこにあるのは単な
るステレオ放送を示すもので、決して二カ国語放送のも
のではなかった。
BS受信のシステムを持っていないのでこんな最悪の放
送でも観ない訳にはいかない。
音声を消して観る事も考えたがそれでは会場の歓声が
聞こえず、迫力に著しく欠けたものになってしまう。
そんなこんなで我慢しながら観続ける。
これは最初だけで落ち着いてくると、ちゃんと実況してく
れるだろうと思っていたからだ。

ただそうではなかった。
後半には多少実況もするようになったが、前半はこの調
子の具にもつかない音声が垂れ流しされていたのだ。
印象としてはそんな試合とは直接関係ないそんなさんま
さん主体のトークが7割といった所か。

日本テレビのスポーツ中継にはトリノ五輪の時にもイラ
イラさせられたが、またやってくれたなという感じだ。
スポーツ中継は飽くまでもその場で行われているスポー
ツの映像が主体でなくてはならないのだ。
目の前で展開しているスポーツの映像を如何に視聴者に
対して分かりやすく、面白く伝えるかという事に主眼が置
かれていなければならない。
実況や解説は基本的に黒子に徹してもらわなければ困る。
いや何も静かで落ち着いたしゃべりを求めているのではな
い。
場合によってはアナウンサー自ら興奮し試合を伝える事
も重要だ。
それによってテレビの前の視聴者も会場の観客と共に一
体となって興奮に包まれたスポーツ観戦が可能になるか
らだ。
また資料読みで選手を紹介したり、プレイに関する意味
を解説者に訊いたりする事も試合に対する理解を深めた
りするのには役立つもので、決して不要なものではない。
しかし、それは程度問題で決して多すぎてはいけない。
そういう静と動を上手に使い分けた実況もアナウンス技
術の一つではないかと思う。
飽くまでメインは、今現在、目の前で行われているプレ
イを伝える事だ。

料理でいうとスポーツ実況は調味料ではないだろうか。
塩やスパイス、あるいはハーブといったものを上手に使
い分け素材の良さを巧みに引き出していく存在だ。
使い方によっては素材の美味さを殺してしまう。

昨夜の日本テレビによるアルゼンチンvsセルビア・モンテ
ネグロの放送は、最高の素材を使いながら塩やスパイス
を山のように使ってしまったがため、ジャンク・フードよりも
不味い料理を作ってしまったものと言える。


ドイツW杯。スペインvsウクライナ戦。そして日本代表…

2006-06-15 17:29:22 | スポーツ
読書をしながらいつの間にかうたた寝をしてしまい、そ
して短く浅い眠りから目覚めるとそこにはW杯のスペイ
ンvsウクライナの試合があった。
読書をする際のBGV代わりに音声を消した状態でつけ
ていたTV映像によるものだ。
ばんやりした頭で成り行きを見守る。
試合は既に後半に入っていて、スペインが3点を先制し
ている状態だった。
パス→トラップ、パス→トラップ、パス…基礎的なサッカ
ー技術の正確さと的確な判断のもとに中盤でボールを
繋いでいくスペイン。
またそうした事を簡単に許してしまうくらい、ウクライナ選
手は戦意を喪失してしまっているようにも思える。
1タッチ、2タッチでボールを繋ぎ、そうやってボールをま
わしていく間にウクライナDF陣に出来たほころびを巧み
に突きゴールに向かって突進、相手ディフェンダーを交
わしてシュート!
攻撃に至るまでの緩急のつけ方が見事だ。
また、相手陣内の深い所でボールを受けた時のスペイン
攻撃陣に迷いはない。
そこにあるのはゴールへの強い意志だけ。

3点を先制され、さらに退場者まで出してしまったウク
ライナであった為、中盤でスペインのパスが自由に繋が
ったというのもあったのだろうが、それにしても見事な横
綱相撲であった。
またこういった優勝候補に挙げられるような国のFWは
ゴールへの意識が格段に違う。
相手ディフェンダーに当たり負けする事もなくドリブル突
破も可能、そしてチャンスを無駄にする事なく確実に得
点出来るだけの決定力が備わっている事もあるのだろ
うが、しかし、スペインのFWが非常に難しい事をやって
いるかと言えばそうではなく、やっている事は至ってシ
ンプル、ペナルティエリア付近でボールをもらったらシュ
ートにまで持っていく、これだけだ。
そして、彼らを衝き動かしているものは、ゴールに対す
る貪欲さにほかならない。

さらに言えばそういったゴールへの貪欲さを著しく欠い
ているのが日本人FW(先日の豪州戦では特に)ではな
いだろうか…。


W杯豪州戦~It Ain't Over 'Til It's Over. 頑張れニッポン!~

2006-06-13 12:59:28 | スポーツ
船頭が悪けりゃ船はあらぬ方向に進んでしまうし、場合に
よっては沈んでしまう。
そんな思いに囚われた2006年サッカーW杯・日本vsオー
ストラリアの試合であった。
紛う事なく日本サッカー史上最高のタレント、それが実力
を付け、経験を増し、最高の舞台で最高のパフォーマンス
をみせてくれる筈だった。
普通にやれば決勝トーナメント進出も夢ではない。
そんな所まで日本代表は昇りつめてきていた筈だ。
でも指揮官に経験がなかった。
いやジーコ監督の掲げる理想のサッカーで勝ち進んで行く
為にはまだまだ日本人の能力が足りないと言うべきだろう
か。

大舞台で自らの能力を普通に最大限に発揮する事の難し
さを痛感させられる。
それは選手のみならず監督にも当てはまるという事だろう。
これが五輪やW杯に潜むと言われる「魔物」の正体なのか
もしれない。

さて、追い込まれると何故か勝負師としての能力が発揮
されるジーコ監督。
さぁ、舞台は整った。
あなたの勝負運の強さをクロアチア戦・ブラジル戦でみせ
てもらうとしますか。


It Ain't Over 'Til It's Over.
頑張れニッポン!

ホントに世界一?

2006-03-23 19:20:55 | スポーツ
WBCの日本優勝で選手や日本のファンの間に「世界一」「世
界一」という言葉が飛び交っていたのに何か違和感を憶えて
しまう。
確かにワールド・ベースボール・クラシックという名前の野球の
国際大会で日本が優勝したのは事実で、それは同じ日本人と
してとても誇らしい事なのだが、それによって日本が「世界一」
というのは違うと思う。
なぜなら野球が世界的なスポーツではないからだ。
野球というスポーツはアメリカと日本が影響力を及ぼす国での
み盛んに行われている競技で、世界的にみれば、いちマイナ
ー・スポーツに過ぎない。
今回の日本の優勝は多分ヨーロッパやアフリカあるいは中東
では多分報道されていないだろう。
これらの国々ではひょっとしたら野球というスポーツの存在すら
分からない人が殆どかも知れない。
そういうスポーツで優勝したからといって気軽に「世界一」
と言ってしまうのは何ともおこがましく、また早計だ。

こんな考えは自分達が生きている所だけが「世界」と信じて疑
わないアメリカ人と変わらずなんとも恥ずかしい。

我々日本人の様に子供の頃から野球というモノに慣れ親しん
できた国民には、野球のルールにしても動きにしても当たり前
で何て事ない競技であるが、客観的にみてこんなに複雑なル
ールで高度な動作を要求されるスポーツも珍しいのではないだ
ろうか。
本格的に野球をする場合には用具の高価さや他の競技に転用
出来ないスタジアムの特殊性という問題もあるし、これを圧倒的
に貧しい国々が多くを占める世界に広げていくというのは、かな
りの困難な作業のように思える。

また日本の場合でも競技者の最終地点であるプロ野球が未だ
に企業スポーツであったり、アマチュアとプロに垣根があり組織
が一本化されていなかったりで、近代的なプロスポーツとはお世
辞にも言えない状況だ。
そういう悪条件下にある日本の選手達が国際大会で優勝してき
て、さらには野球の近代化を阻んでいる企業グループの系列下
にあるテレビ局が今回の歴史的瞬間の中継を担当してしまうの
は何とも皮肉としか言いようがない。
プロ野球の人気がなくなってしまったのは単純にサッカー人気が
高まってしまった事にあるのではない。
みんなJリーグの発足で気付いてしまったのだ、「現在の既得権
益の上に胡坐をかいて何の努力もせず、そのくせ新しき考えを持
った新参者には平気で門戸を閉ざしてしまう者達が運営している
競技には何の魅力も感じない」という事を。
「今回の優勝で野球離れが進んだ日本人に野球の面白さが分か
ってまた野球の人気が高まるといいのですが…」なんて楽観的
なコメントをしている人がいたがこのままじゃ別段何も変わりはし
ないだろう。
ひょっとしたら、ナショナリズムを刺激され、また負けたら後がない
真剣勝負の面白さを分かってしまった後だけに、企業色が著しく
強く地域性が今一つ希薄で、ダラダラとシーズンと試合を運んで
しまう日本のプロ野球はいっそう色褪せて感じてしまうかもしれな
い。
今回、日本選手達が死に物狂いでもぎ取ってきた国際大会の優
勝でもあるし、これを機会に近代プロスポーツとして野球が新たな
道を進んでいく良いきっかけにして欲しい。

今日、近くの路地で野球をしている少年達を見かけた。
リトル・リーグの野球少年は見かけるがこんな風に遊びで野球を
している少年達は近頃非常に珍しい。
間違いなくWBCの影響だろう。
彼らの心に宿った芽をむざむざと摘んではいけない。
アメリカ主導でアメリカの為に開催されたWBCであるが、結果的に
優勝したのは日本だった。
これは内も外も改革しなさい、という神からの啓示のように思えて
ならない。
その役割を日本という国が神から託されたのだ。
日本の野球関係者には褌を締め直してもらい、日本プロ野球の近
代化とWBCの真の世界大会化への努力に邁進し、野球という競
技の魅力を国内外に喧伝していって欲しいものだ。

日テレのモーグル中継にモノ申す!

2006-02-12 19:22:15 | スポーツ
憤慨しながら女子モーグルの放送を観ていた。

メダル獲得が期待される選手にパワーもらいこれからの
生活に弾みをつけたい、そんな気持ちでテレビ観戦して
いたモーグル中継だった。

水物を控え、トイレも済ませ、準備万端で観戦に望んだ
明け方。さぁ、これから日本人選手の劇的なメダル獲得
の瞬間に立ち会うぞ、と集中を高めていた中継序盤でC
Mが入る。まぁ、1回や2回のCMは仕方がないか、と思
っていたら、これが非常に頻繁に挿入されるのだ。さすが
に、競技を行っている最中にCMを流すという事はやらな
かったものの、前座的で実力的にイマイチの海外選手の
採点待ちの時には必ずといってもいいほどのCM。その度
に臨場感や競技観戦の集中が害されて仕方がない。日
本人としてはそんなに重要でない選手の採点待ちであっ
ても、その間の選手の不安気な表情を観察し、その場の
観客の興奮に心を熱くさせ、あるいは解説者のマメ情報
に耳を傾けつつテレビを観るのが、こういったものを観戦
する際の醍醐味であるのにも関わらずだ。日本人選手や
注目の海外選手だけを押さえておけば良いというもので
はない。序章があってこそ結末やクライマックスが活きて
くるのだ。CMを流したければ中継が始まる前や終了して
からまとめて放送するという手もあった筈だ。

大体、自分らが日本を代表してオリンピック競技を放送し
ているという自覚に著しく欠けている。どうやったら視聴者
がスポーツ中継を楽しんで観られるか、という事に観点を
置いていないからこういう事になってしまう。芸人達がバカ
騒ぎをするバラエティ番組を放送している訳じゃないのだ。
放送中に小刻みにCMを入れてしまえばどうなるかという事
をまったく考えていない。結局、彼らが気にしているのは視
聴者ではなく番組提供に協力してくれる企業なのだろう。
やはりこの辺はスポーツを金儲けの一手段としてしか考え
られない人物をグループのトップに置く企業の限界なのだ
ろうか…。

モーグル中継に限った事ではないが、日テレがオリンピッ
クを伝える中でタレントの上戸彩を担ぎ出している意味も分
からない。確かに上戸彩はカワイイ。女優としての実力は飛
びぬけたものがあるし人気もある。しかし、それがオリンピッ
クを伝える上で適任であるかというと、それはまったく違う話
しだ。ウインター・スポーツに類なき実力や知識を持っている
訳でもない、卓越した「しゃべり」がある訳でもない、鋭い感
性がありそれを視聴者に分かりやすく伝えるだけの語彙の
豊富さや技術がある訳でもない、スポーツの興奮や感動を
視聴者に届けるという意味では彼女はまったくの役不足な
のだ。実際、彼女は「キャー!」「カッコいい!」「スゴイ!」「
感動した」そんな事を言っているだけ。それはタレントとして
研鑽は積んでいるものの、結局は二十歳そこそこの女の子
でしかない彼女の限界なのだと思う。その点は上戸彩の責
任ではない。人選を行った人間の責任だ。数字を取る為に何
でも突っ込めば良いというものではないのだ。スポーツ中継
(当り前だがさすがに実際の中継には上戸彩は関わってない
が…)をナメてもらっちゃ困る。

結局、今回の女子モーグルでメダルが獲れなかったのは、こ
ういう姿勢のテレビ局がモーグル中継の権利を獲得してしま
ったからではないだろうか。

唯一の救いは、メダル獲得ならずとも、笑顔を絶やさない爽や
かな上村愛子の表情だけだった。


飛べないトンボ

2006-02-09 19:19:11 | スポーツ
先週末の深夜にフジテレビで、トリノオリンピックに出場す
る選手を幾人かに絞って特集する番組をやっていた。その
中にモーグルの里谷多英も入っていて、インタビューや過
去の大会の模様、練習風景などが放送されていた。

モーグルの夏期の練習に人工芝を張った斜面を滑り降り
ジャンプ台から飛んで、エアの技術を磨くトレーニングがあ
る。諸事情から全日本の合同合宿には参加せず少人数
のスタッフとそのトレーニングを繰り返す里谷選手の様子
が映し出される。思うように技が決まらず、ビデオをみたり、
コーチから手取り足取り指導を受けながらの練習を黙々と
やっていた。夏の間そんな風にして600本飛ぶそうだ。トレ
ーニングをするそのジャンプ台の下にはプールがあって、エ
アを決めた後はそのプールにザバーンっと飛び込むように
なっている。多分、着水というのが一番体に負担のかから
ない方法なのだろう。

スーっと滑って来て、ジャンプをし、エアを決め、水飛沫を上
げながら着水する、という映像が何度か繰り返される。と、
いつもは水に飛び込んだ後は機械的に泳いで陸に上がって
くる彼女がストックを投げ捨て片手を水から上げ泳いでいる。
映像ではよく分からなかったが水から上げたその手にはトン
ボが乗っていたらしい。なんでも、プールに飛び込んだ際に
溺れたトンボを見つけたそうで、そのトンボを水から救出する
為とっさにとった行動だという事だった。そこでナレーションが
入る。

「飛べないトンボに彼女は何をみていたのでしょうか…」。

見事だった。プロの作り手はここが違う。凡人なら練習風景
の中の微笑ましい光景という事で済ましてしまう所だろう。
多分、里谷選手は溺れたトンボに、もがき苦しむ自分の事な
ど投影なんかしてない。単純に自分が行っているトレーニン
グの影響で溺れてしまったトンボを可哀想に思っただけだろう。
その模様を逃さずカメラに収め、気の利いたフレイズを挿入す
る事でグッと全体が引き締まりちょっとした感動を呼ぶ。料理
に於いてひと振りのスパイスが凡庸な味をキレのあるものに
仕上げる様に…。テレビマンに限らず、プロとアマチュアの違
いは、こういうプラスアルファが出来るか否かなのだろう。

実に良い仕事をみせてもらった。ただ、これが自社社員であ
る里谷選手の好感度を上げ感動を誘発する為に仕組まれた
過剰な「演出」である可能性も否定出来ないのであるが、こ
こは田舎の子供の様に無垢な心で番組スタッフを信じる事に
しよう。