ハヤカワ文庫 406ページ 740円+税
初めて神林長平を読みました。避けてきたわけではなく、どういう理由か今まで縁がなかったのです。まずは 代表作 、かつ日本SF界の名作とされている本作を手に取った次第。
南極大陸に出現した超空間通路。ここから未知の異星体 ジャム が地球への侵攻を開始した。人類は通路の反対側に存在する惑星フェアリイに実戦部隊FAFを派遣、戦術戦闘電子偵察機 雪風とその操縦士 深井零 はここで闘いを続けている。
味方の機がやられていても、それは顧みず敵の情報を持ち帰るという任務を遂行する深井零と雪風。雪風のコンピューターは学習機能により、操縦士が不要というところまでの完成度に達しつつある。雪風にとれば、人間とは 敵の攻撃を回避するにあたって、搭載した人間が壊れてしまわない範囲でしかGをかけられないという制約が付くやっかいなもの。こういう方向に進んでいく。一方で冬には基地の滑走路の除雪作業は人間によってなされているという矛盾。その裏には 異星体 ジャムが狙うのは人間ではなく、コンピュータなのかという謎が潜む。
1984年の作品とは思えません。特にコンピューターの学習機能、コンピューターの判断の基準など、今年の作品と言われても全く違和感無しです。
また戦闘機のエンジン始動から始まるルーティンは臨場感がありすごい。エンジンが停止してしまった時の再始動までをコンピューターが判断して実行していく様は、まさにこのとおりやるであろうな と感心するばかりです。
こういう緻密なディテールの描写と、ざっくりと割り切った人間の心理描写のバランスが、最高のレベルで成り立っています。コンピュータがものを考え、一方で人間が部品化していくところを表しているとなれば、この感性は驚きです。
本作はまれに見るSFの名作。お薦めです。
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