日本缶詰協会の発行している缶詰手帳
缶詰に関する規格や法規が載っている
2010年版は表紙が赤でカッコいいのだ
今回の『缶詰の現場から』は年末特別編であります。
いつもは缶詰企業を取材するのだが、今回は社団法人日本缶詰協会の研究所を取材したのだ。
その日本缶詰協会というのは、我が国の缶詰企業(工場を含む)の約88%が会員になっている社団法人。
その会員企業が生産する缶詰の総数は、日本の缶詰生産量の90%以上にもなる。
言ってみれば、日本の缶界の総元締めなのであります。
その日本缶詰協会が所持する研究所は、神奈川県横浜市にあった。
横浜のシーサイドライン(横浜新都市交通)に乗って、福浦駅で下車。
金沢産業団地内にあり、観光地の八景島にもほど近い場所だ。
これが研究所の入り口。
周囲はとても静かで、じっくりと研究に取り組めそうなロケーションであります。
まずは3階の食品化学研究室へ。
ここでは品質、栄養、衛生に関しての化学的な実験を行っていて、計測室や準備室、研究員の居室などがある。
ところで筆者は、化学にはまったくヨワい。ヨワいのだが、話を聞いたり、見たりするのはすごく好きだ。
科学的なことにワクワクするのは男子の性(さが)なのかもしんないですなァ。
どうです、この光景。ワクワクしませんか?
手前にあるのは食品の固さを数値化する機械。食感という曖昧な感覚も、数値化することで標準化できるのだ。
これは分光光度計という機械で、食品の成分を分析した結果。
アスパラギン酸など、含まれている成分が分かるんですぞ。
これは缶の巻締部分を顕微鏡で見ているところ。
巻締というのは右の略図にある通り、缶詰のフチの部分を巻いて締めることだ。
ここが規定通りに巻き締められていないと、密封されていないことになり、保存性が保てないということになる。
缶詰の要諦の第一は、缶蓋と本体との巻締なのだ。
ちなみにこの顕微鏡の画面には2つの巻締部が映っているが、どちらが正しい巻締か分かるだろうか。
正解は左側。缶蓋と本体が二重にきっちりと丸まってます。
こちらは1階のプラント室。
缶詰工場とほぼ同じ設備が並んでいて、材料さえあれば缶詰が作れるところだ。
レトルト殺菌釜の前にいるのは、取材当日に案内してくださった駒木勝所長であります。
これは缶詰の内部、特に中心部の温度が測れる装置。
前出のレトルト殺菌釜で加熱殺菌するときに大事なのは、缶詰の中心部分が規定の温度に達しているかということ。
熱湯や蒸気で過熱すると、当然ながら熱は周囲から中心部へと伝わっていく。
だから中心部を殺菌するためには、ある程度の時間をかけて加熱する必要があるのだ。
これが缶詰の要諦の第2なのであります。
殺菌するためには加熱すればいいんだけど、一般的に加熱時間が長ければ、食品は柔らかくなってしまう。
すなわち食感が変わってくる。
この“安全性”と“食感”のかねあい、これが各企業のノウハウが生かされる部分なのですなァ。
缶詰というのはノウハウのかたまりなのであります!
これは手動式の巻締機。筆者も体験させてもらった。
ハンドルを回していくと、まず第1のローラーが缶蓋の周囲を丸める。ここで最初の手応えがある。
そのまま回すと第2のローラーが缶蓋と本体を巻き締めていくのだ。巻締が終わると手応えがすっと軽くなるので分かる。
これがその巻締ローラー部のアップ
真ん中の円柱は上から押さえつける役目をする
この研究所の最も大きな役割は、会員企業から送られてくるサンプルを分析することにある。
例えば成分分析などは、各企業でも測定機器を持っているとはいえ、公平中立的な立場にある日本缶詰協会の研究所で分析してもらうことで、公正な結果というお墨付きをもらえることになるのだ。
だから同研究所では、日々、分析と研究を行っているんであります。
この取材が実現したのは、日本缶詰協会の増田寛行専務理事と、前出の駒木所長、並びに戸塚英夫次長のおかげでありました。
さらに筆者を同協会に紹介してくれたのは、清水食品の阿部齊社長だった。
人と人とのつながりの大事さをあらためて思い、みなさんには感謝多謝であります!