難民がEU域内へ入るのを制限しておきながら
不法でもいいから、EU国境を越えて入ってしまえば、域内の自由往来が保証される(シェンゲン協定)
というのも、不法な越境を認める奇妙な論理ですね。
シェンゲン協定があるから国境に壁をつくるのでしょうが、まるで「壁を作ることは正しい」とシェンゲン協定で認められているように思われます。
このようにしてEU諸国が陸上で域外と接している場合、国境に壁を作って、中東などの難民がEU域内に不法侵入しないよう見張りをしています。
壁については
- アメリカとメキシコの国境の壁(2000kmほどある)
- ハンガリー(2004年EU加盟)が中東などからの侵入者阻止のためセルビア(EU非加盟)との国境に壁(100kmほどある)
などが知られていますが・・・・・・
アメリカに関して
トランプが「アメリカに、メキシコから不法入国者が多数やってくるため、アメリカの労働者が失業した」と言っています。
たしかに不法難民が不当な低賃金で働くため現地の人たちが失職するというのはEUやアメリカで共通してみられる現象ですが、アメリカの場合、経済格差が広がったためにこの問題が大きく取りあげられるようになった、と言えます。グローバル化の恩恵を受けず放置されたままの人たちが、「あの邪悪」とも思われるトランプを支持したのでしょう。
今までアメリカがこの問題を放置してきたことに責任があるのは誰が見ても明らかですね。
貿易協定でアメリカとメキシコの関税がほとんどないためにアメリカからメキシコへ穀物などの輸出が増えました。しかしメキシコからの不法移民がアメリカの農場で安い賃金を得て生産してきたからこそ大量にメキシコへ輸出できたわけで、この人たちを閉め出すと安い輸出価格を維持できなくなり、結局ほかの国(例えば中国など)から輸入することになり、中国との貿易赤字は益々広がるばかりです。これを防ごうとして中国からの製品に関税をかけると、結局アメリカ人が高いコストのアメリカ産穀物を買うしかなくなるのです。
自動車の部品についても、高度な品質を誇るアメリカからメキシコへ輸出し、人件費の安いメキシコで車として組み立てて、アメリカへ再輸入しても関税がかからないので成り立っているのです。もしも関税をかけてそれを国境の壁の建設費に充てようとしても、そもそもメキシコから車を輸入できなくなってしまい充てられません。しかも車を高い人件費でアメリカ生産することになり、アメリカ車の国内での車の価格が高額になり、おそらく販売不振に陥るでしょう。
アメリカでは、品質のいい外国車がよく売れているようですが、関税をとるようになると、アメリカでの車販売そのものが伸び悩み、ひいては技術の進歩が止まってしまい、アメリカ国民が高いものを買わされてしまうでしょうが、それでもいいのでしょう。アメリカ・ファーストでさえあれば!
産業構造を根本的に変えるためには時間が必要でして、トランプが考えるほど急激に変えることはできないと思うのですが・・・・・・。
これらのことを、トランプが充分に分って言っているのかどうか、心配な人は多いことでしょう。
まとめて言えば、・・・・・・
アメリカの産業が空洞化しており、アメリカの生産者を犠牲にしてまで消費者を優遇しすぎた結果が現在の姿なんでしょう。
よってトランプがいきなり輸入関税をかけてアメリカ保護を目指し短期の外科手術を施しても、結果はさらに悪化するだけではないか。
トランプが公約を実現させようと保護主義に走ると、かえって事態を悪化させるのではないか。
という私のような素人でもわかる結論でした。
EU一般について
再度ハンガリー首相に復帰したオルバーンが中東難民を排除しようとしており、ルクセンブルク外相が「ハンガリーが難民を入国させないために設置した壁があるため、難民が大勢セルビアに留まっている」のがEUの理念に反すると非難しています。
しかしキリスト教を守ろうとして難民を排除しているハンガリー側は「租税回避国から言われる筋合いではない」とツッパっており、同じカトリック国同士でも、細かい違いが大きくなるのか(これが「針小棒大」で)対立が絶えません。
ドイツが最初、国民の同意を得たとは思えないまま、いやEUの承認を得ないまま難民を受け入れようとし、シェンゲン協定で一旦受け入れたら自由にEU域内を移動できるため、各国で難民が数多くの犯罪を起こし、これに反発した国民が怒りのあまり難民に対する犯罪を起こします。
またこれに呼応してEU各国で極右勢力も台頭したため、難民の受け入れを制限し始めましたが、そもそもここに諸悪の根源がありそうです。
なぜ一旦は受け入れ、途中から制限したのか。受け入れを表明したから数多くの難民が押し寄せ、結局は「難民が多すぎた」とぼやくハメに陥ったのではありませんか。
もっと言えば、EU設立時に、難民を受け入れることなど想定していなかったに違いありません。
そもそもシリアに対して各国が矛盾だらけの空爆をして鎮圧しようとしたこと、さらにさかのぼればそういった混乱を引き起こしたアサド政権に問題がありそうです。
ここでは
これからどうすればいいか、に触れないまま、今までのいきさつの中で問題点をかいつまんで述べてみました。
言い出せば、レバノンやイスラエルやシリアにも関係してわけが分らなくなります(笑)。
最後に「国境」に関する引用です。
「トランプ大統領は現実を理解していない。メキシコ抜きで我々の商売は成り立たない」。米南部テキサス州エルパソで電子部品を製造するセサルスコット社のグスタボ・ファレル社長(55)は、大統領が「国境税」の導入や北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱を強行するのかを心配し、沈痛な面持ちだ。
この会社は、米国内で製造した部品をメキシコ北部シウダフアレスに輸出し、そこでさまざまな製品に組み立て、再び米国に輸出している。「関税がかかれば最終価格に転嫁せざるを得ない。1%値上げしても顧客を失う状態なのに」とファレルさんは言う。
エルパソにも工場がある金属部品を製造する米国キーツ・サウスウェスト社のマット・キーツ社長(59)も、労働集約的な作業を労賃の安いメキシコ工場に任せて製造コストを抑えてきた。「それができなくなれば、中国のライバル社に客を取られるだけだ」:毎日新聞2017年2月22日
トランプが、国境税を施行すると、一見してアメリカ産業を保護するようにみえるものの、実際はメキシコに依存する体質になっており、中国製品の輸入が増えるだけだという声です。それを押えるために中国への関税を高くすれば、中国で安く製造してきた製品をアメリカへ輸入できなくなり、結局こまるのはアメリカ庶民ではないのでしょうか。
とにかく緻密な計算を経てたてた長期計画によらないと、何事もうまくいかないようです。
フィンランド政府、難民向け社会保障削減へ
「ロシアからフィンランド北部に到着した難民グループはフィンランドへの亡命申請を拒否された。申請者は電車でロシアに送り返される。彼らはロシアへの永住権を持っている」
フィンランド当局によれば、現在ロシアからラヤ・イオオセッピおよびサッラ検問を通じて到着した難民の申請が審査されている。すばやい審査を行う態勢がとられているが、拒否された場合には即時退去が求められる。
中東・アフリカからの難民がムルマンスク州からフィンランドに入るケースが増えている。そのルート上には上記のふたつの検問所がある。各検問所で、一日あたり10-20人が申請を行うという。これまで難民はノルウェー国境を使っていたが、同国が管理法制を強めたので、難民は別ルートを開くことを余儀なくされた。:2015年12月06日
スカンディナヴィア半島の3国は
西から東へ順に、ノルウェー・スウェーデン・フィンランドですが、不思議な事にノルウェーが北のほうでぐるりと東方にまで領土をもち、ロシアと陸上で国境を接しています。
ロシアと陸上で国境を接していないのは、スウェーデンだけでした。
このことを理解していないと上のニュースがさっぱりわからないでしょうね。
1年前のニュースで
ノルウェーが国境の検問を厳しくしたので、難民がフィンランドに押し寄せたのですが、これをロシアへ強制送還したというのです。
さてさて、皆様はどう思われますか。