『五十嵐靖晃 海風』 千葉県立美術館

千葉県立美術館
『五十嵐靖晃 海風』
2024/7/13~9/8



千葉県出身のアーティスト、五十嵐靖晃による回遊型美術展覧会「海風」が、千葉県立美術館にて開かれています。



今回の展覧会は美術館内だけでなく、千葉みなとエリアをフィールドに屋外にも作品を展示しているのが特徴で、さんばしひろばでは参加者とともに漁網を編み、空に掲げる五十嵐の代表作『そらあみ』が港の景色を美しく彩っていました。



また千葉ポートパーク展望の丘では、近隣の小学生とともに制作し、風を可視化する吹き流しの『風の子』を公開していて、ポートタワーと工場地帯を望む丘の上から、白い吹き流しが風に揺られる光景を見ることができました。



千葉県立美術館内では「協働の海」、「再生の海」と題した2つの大規模なインスタレーションと、「記憶の海」する五十嵐のアーカイブ展示を行っていて、「協働の海」では吹き抜けの空間へ糸を用いて海と星空を創出していました。



このほか、コレクションとのコラボとした「再生の海」も、糸の表現によりコレクションに新たな気づきを与えるような展示だったかもしれません。



アーカイブの「記憶の海」では、三宅島や瀬戸内、太宰府から北アルプス、さらにブラジルから南極など世界各地にて人々と協働しながら多様なプロジェクトを行う五十嵐の取り組みを知ることができました。



過去の活動や『海風展』の内容、また今後の取り組みなどについて、アーティストの五十嵐靖晃にインタビューをしてきました。(Penオンラインに寄稿しました。)

アートで現代を航海する。アーティスト、五十嵐靖晃の活動の軌跡と『海風展』|Pen Online


こちらもご覧いただければ幸いです。



千葉の埋立地へアートで新たな歴史を築いた展覧会だったといえるかもしれません。これまでも何度も通った美術館と千葉みなとエリアが、今回ほど魅力的に感じられたことはありませんでした。



9月8日まで開かれています。

『五十嵐靖晃 海風』 千葉県立美術館@chiba_pref_muse
会期:2024年7月13日(土)~9月8日(日)
休館:月曜日(7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)、8月13日(火)
時間:9:00~16:30。
 *金・土曜日及び休前日は19:30まで
 *入場は閉館の30分前まで
料金:一般1000円、高校・大学生500円、中学生以下、65歳以上無料。
住所:千葉市中央区中央港1-10-1
交通:JR線・千葉都市モノレール千葉みなと駅より徒歩約10分。
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『空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン』 東京ステーションギャラリー

東京ステーションギャラリー
『空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン』 
2024/7/13〜9/23



20世紀後半のベルギーのアーティスト、ジャン=ミッシェル・フォロンの展覧会が、東京ステーションギャラリーにて開かれています。

その『空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン』の見どころについて、Penオンラインに寄稿しました。

「空想旅行エージェンシー」と名乗ったアーティスト、ジャン=ミッシェル・フォロンとは? |Pen Online

今回のフォロン展の特徴は、自ら名刺に「空想旅行案内人」と名乗っていたフォロンの制作を、時系列やジャンルではなく、いくつかのストーリーによって紹介していることで、さまざまな角度からフォロンの作品の奥深さや魅力を味わうことができました。

そのうち作品に登場する「リトル ハット マン」とは、フォロン自身が「私に似たある誰か」であると同時に「誰でもない」という人物で、あたかも空想旅行を誘うかのようにあちこちに描かれていました。

また矢印もフォロンがよく表したモチーフの一つで、同じく作品に頻繁に登場しながら、時に見るものを惑わすかのごとく迷路のように曲がったりしていました。


フォロンの仕事で重要であるのは、環境問題や人権問題などを告発するようなメッセージ性を持った作品を多く手がけていることで、アムネスティ・インターナショナルより依頼された「世界人権宣言」の挿絵も制作しました。

私として特に惹かれたのは、主に後年に制作された地平線や水平線の登場する作品でした。南仏モナコにアトリエを構えたフォロンは、そこから望む景色をインスピレーションの源としていて、七色に染まるような空を鳥が飛ぶ光景などを幻想的に表していました。



出展は初期のドローイングから水彩画、版画、ポスター、そして晩年の立体作品などと約230点にも及んでいて、質量ともに不足ありませんでした。まさに回顧展の決定版といえる内容だったかもしれません。

9月23日まで開催されています。

『空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン』 東京ステーションギャラリー
会期:2024年7月13日(土) 〜9月23日(月)
休館:月曜日(ただし7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館)、7月16日(火)。
料金:一般1500円、高校・大学生1300円、中学生以下無料。
時間:10:00~18:00。
 *金曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
住所:千代田区丸の内1-9-1
交通:JR線東京駅丸の内北口改札前。(東京駅丸の内駅舎内)
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2024年8月に見たい展覧会【海とつながる。アートをめぐる。/高橋龍太郎コレクション/神戸六甲ミーツ・アート2024】

この夏は全国的に凄まじい猛暑に襲われ、関東でも連日、身の危険すら感じるような暑さが続いています。いかがお過ごしでしょうか。



8月にスタートする展覧会は多くありません。今月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・『海とつながる。アートをめぐる。― Harmony with Nature ―』 葛西臨海水族園、葛西臨海公園(8/2~8/18)
・『TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション』 東京国立近代美術館(5/21~8/25)
・『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』 東京都庭園美術館(6/1~8/25)
・『内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙』 国立西洋美術館(6/11~8/25)
・『柳宗悦と朝鮮民族美術館』 日本民藝館(6/15~8/25)
・『岡本秋暉 百花百鳥に挑んだ江戸の絵師』 千葉市美術館(6/28~8/25)
・『美麗なるほとけ』 根津美術館(7/27~8/25)
・『田中達也展 みたてのくみたて MINIATURE LIFE・MITATE MIND』 日本橋髙島屋S.C(8/1~8/28)
・『シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝』 森美術館(4/24~9/1)
・『伊藤潤二展 誘惑』 世田谷文学館(4/27~9/1)
・『幻想のフラヌール ─版画家たちの夢・現・幻』 町田市立国際版画美術館(6/1~9/1)
・『111年目の中原淳一』 渋谷区立松濤美術館(6/29~9/1)
・『五感であじわう日本の美術』 三井記念美術館(7/2~9/1)
・『徳川美術館展 尾張徳川家の至宝』 サントリー美術館(7/3~9/1)
・『PROJECT UMINOUE「五十嵐靖晃 海風」』 千葉県立美術館(7/13~9/8)
・『神護寺 ─ 空海と真言密教のはじまり』 東京国立博物館(7/17~9/8)
・『吉田克朗展 ―ものに、風景に、世界に触れる』 埼玉県立近代美術館(7/13~9/23)
・『エッシャー 不思議のヒミツ』 豊田市美術館(7/13~9/23)
・『【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏』 山種美術館(7/20~9/23)
・『平田晃久―人間の波打ちぎわ』 練馬区立美術館(7/28~9/23)
・『今森光彦 にっぽんの里山』 東京都写真美術館(6/20~9/29)
・『鴻池朋子展 メディシン・インフラ』 青森県立美術館(7/13~9/29)
・『「オバケ?」展』 PLAY! MUSEUM(7/13~9/29)
・『昭和モダーン、モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界』 泉屋博古館東京(8/31~9/29)
・『大地に耳をすます 気配と手ざわり』 東京都美術館(7/20~10/9)
・『特別展「昆虫 MANIAC」』 国立科学博物館(7/13~10/14)
・『空間と作品』 アーティゾン美術館(7/27~10/14)
・『舟越桂 森へ行く日』 彫刻の森美術館(7/26~11/4)
・『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024』 越後妻有里山現代美術館 MonET(7/13~11/10)
・『開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ』 東京都現代美術館(8/3〜11/10)
・『日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション』 東京都現代美術館(8/3〜11/10)
・『田名網敬一 記憶の冒険』 国立新美術館(8/7~11/11)
・『神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond』 六甲山上(8/24~11/24)

ギャラリー

・『曽谷朝絵 Colorings』 アートガーデンかわさき(8/3〜8/16)
・『稲葉友宏「THE STORIES THAT YOU SEE VOL.2」』 YUKIKOMIZUTANI(7/19~8/31)
・『松井えり菜「アストラル・ドリーマー」』 ANOMALY(7/20~9/7)
・『キャラクター・マトリクス』 BUG(8/30〜9/16)
・『Ryu Itadani「Everyday Life “THERE“」』 ポーラ ミュージアム アネックス(8/9~9/23)
・『ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展』 GYRE GALLERY(7/17~9/24)
・『空想の宙(そら) 「静寂を叩く」 大乗寺十三室|十文字美信』 資生堂ギャラリー(8/27〜10/20)
・『ハルーン・ミルザ Ceremonies and Rituals』 SCAI THE BATHHOUSE(8/27〜10/12)

まずは葛西臨海公園にてはじまる新たなアートイベントです。『海とつながる。アートをめぐる。― Harmony with Nature ―』が開かれます。



『海とつながる。アートをめぐる。― Harmony with Nature ―』@葛西臨海水族園、葛西臨海公園(8/2~8/18)

これは「アートをめぐる」をテーマに、同公園内にて4組のアーティストが作品を展示するもので、蜷川実花 with EiMは東京湾を望むクリスタルビューにおいて、多様な光をまとう花やクリスタルを使用し、建築と自然が一体となるような空間を演出します。

また園内のひまわり広場では、落合陽一、河瀨直美、平子雄一の作品展示を行うほか、葛西臨海水族園の空の広場では霧の演出も実施されます。このほか、キッチンカーなども出店するなど、夏休みの臨海公園の気軽に楽しめるイベントとして人気を集めそうです。

続いては東京都現代美術館です。『日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション』が開かれます。



『日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション』@東京都現代美術館(8/3〜11/10)

これは精神科医、高橋龍太郎が1997年より収集をはじめた日本現代美術コレクションのうち、作家115組の代表作を紹介するもので、ひとりのコレクターの目によって築かれた日本現代美術の流れをたどります。


高橋龍太郎コレクションは「ネオテニー・ジャパン」(2008〜2010年)や「ミラー・ニューロン」(2015年)など、国内の美術館でも度々公開されてきましたが、さらに近年加わったコレクションを見る貴重な機会となるのではないでしょうか。

最後は夏から秋に向けて開かれる現代アートの芸術祭です。六甲山上にて『神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond』が行われます。



『神戸六甲ミーツ・アート2024 beyond』@六甲山上(8/24~11/24)

2010年より毎年、神戸・六甲山上にて開かれてきた『神戸六甲ミーツ・アート』には、これまで延べ520組以上のアーティストが参加してきました。そして今年は過去最多となる招待・公募を合わせ60組以上のアーティストによる、多彩な展示プログラムが展開されます。


昨年、招待アーティストの拡充や芸術祭の拠点づくりなどが行われ、従来より大幅に内容が拡充されましたが、その流れを今回も受け継ぎ、六甲という自然とともにアートを楽しめるユニークな芸術祭となりそうです。

しばらくブログは不定期での更新となります。それでは今月もどうぞよろしくお願いします。
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2024年7月に見たい展覧会【オバケ?展/ジャン=ミッシェル・フォロン/舟越桂】

関東では7月に入り、夏本番を思わせるような猛暑が続いています。今月は夏から秋に向けて多くの展覧会がスタートする時期です。見ておきたい展覧会をリストアップしてみました。



展覧会

・『企画展 歌と物語の絵 ― 雅やかなやまと絵の世界』 泉屋博古館東京(6/1~7/21)
・『国芳の団扇絵 ―猫と歌舞伎とチャキチャキ娘』 太田記念美術館(6/1~7/28)
・『カルティエと日本 半世紀のあゆみ「結 MUSUBI」展』 東京国立博物館(6/12~7/28)
・『梅津庸一|エキシビション メーカー』 ワタリウム美術館(5/12~8/4)
・『未来のかけら: 科学とデザインの実験室』 21_21 DESIGN SIGHT(3/29~8/12)
・『大成建設コレクション もうひとりのル・コルビュジエ~絵画をめぐって』 大倉集古館(6/25~8/12)
・『TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション』 東京国立近代美術館(5/21~8/25)
・『生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界』 東京都庭園美術館(6/1~8/25)
・『内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙』 国立西洋美術館(6/11~8/25)
・『柳宗悦と朝鮮民族美術館』 日本民藝館(6/15~8/25)
・『北斎 グレートウェーブ・インパクト ―神奈川沖浪裏の誕生と軌跡―』 すみだ北斎美術館(6/18~8/25)
・『超・日本刀入門 revive―鎌倉時代の名刀に学ぶ』 静嘉堂@丸の内(6/22~8/25)
・『岡本秋暉 百花百鳥に挑んだ江戸の絵師』 千葉市美術館(6/28~8/25)
・『美麗なるほとけ』 根津美術館(7/27~8/25)
・『シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝』 森美術館(4/24~9/1)
・『伊藤潤二展 誘惑』 世田谷文学館(4/27~9/1)
・『幻想のフラヌール ─版画家たちの夢・現・幻』 町田市立国際版画美術館(6/1~9/1)
・『111年目の中原淳一』 渋谷区立松濤美術館(6/29~9/1)
・『五感であじわう日本の美術』 三井記念美術館(7/2~9/1)
・『徳川美術館展 尾張徳川家の至宝』 サントリー美術館(7/3~9/1)
・『鈴木康広展 ただ今、発見しています。』 二子玉川ライズ スタジオ & ホール(7/20~9/1)
・『PROJECT UMINOUE「五十嵐靖晃 海風」』 千葉県立美術館(7/13〜9/8)
・『神護寺 ─ 空海と真言密教のはじまり』 東京国立博物館(7/17~9/8)
・『巨大恐竜展2024』 パシフィコ横浜(7/13~9/13)
・『ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム』 パナソニック汐留美術館(6/29~9/16)
・『髙田賢三 夢をかける』 東京オペラシティ アートギャラリー(7/6~9/16)
・『内藤礼 生まれておいで 生きておいで』 東京国立博物館(6/25~9/23)
・『CLAMP展』 国立新美術館(7/3~9/23)
・『吉田克朗展 ―ものに、風景に、世界に触れる』 埼玉県立近代美術館(7/13~9/23)
・『空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン』 東京ステーションギャラリー(7/13~9/23)
・『エッシャー 不思議のヒミツ』 豊田市美術館(7/13~9/23)
・『【特別展】没後25年記念 東山魁夷と日本の夏』 山種美術館(7/20~9/23)
・『平田晃久―人間の波打ちぎわ』 練馬区立美術館(7/28~9/23)
・『今森光彦 にっぽんの里山』 東京都写真美術館(6/20~9/29)
・『鴻池朋子展 メディシン・インフラ』 青森県立美術館(7/13~9/29)
・『「オバケ?」展』 PLAY! MUSEUM(7/13~9/29)
・『大地に耳をすます 気配と手ざわり』 東京都美術館(7/20~10/9)
・『特別展「昆虫 MANIAC」』 国立科学博物館(7/13~10/14)
・『空間と作品』 アーティゾン美術館(7/27~10/14)
・『舟越桂 森へ行く日』 彫刻の森美術館(7/26~11/4)
・『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024』 越後妻有里山現代美術館 MonET(7/13~11/10)
・『フィリップ・パレーノ:この場所、あの空』 ポーラ美術館(6/8~12/1)

ギャラリー

・『田原桂一「OPÉRA de PARIS」』 ポーラ ミュージアム アネックス(6/21~7/28)
・『イワン・エフェンディ「articulate-雄弁なものたち」』 ミヅマアートギャラリー(7/6~8/10)
・『MARK LECKEY』 エスパス ルイ・ヴィトン 東京(2/22~8/18)
・『2024 JAGDA 亀倉雄策賞・新人賞展』 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(7/22~8/24)
・『稲葉友宏「THE STORIES THAT YOU SEE VOL.2」』 YUKIKOMIZUTANI(7/19~8/31)
・『辰野登恵子展/松井えり菜「アストラル・ドリーマー」』 ANOMALY(7/20~9/7)
・『ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展』 GYRE GALLERY(7/17~9/24)

まずはファミリーでも楽しめる夏休み向けの展覧会です。PLAY! MUSEUMにて『「オバケ?」展』が開かれます。



『「オバケ?」展』@PLAY! MUSEUM(7/13~9/29)

これは古今東西、さまざまな呼び名で登場したオバケをテーマに、約20組のクリエイターが多様に表現するもので、絵本『ねないこだれだ』を落語家の春風亭一之輔が朗読する部屋や、谷川俊太郎・谷川賢作親子によるオバケ音楽「けいとのたま」、さらにアニメーション作家・加藤久仁生の新作アニメーションなどが公開されます。


このほか絵本研究者の広松由希子が選ぶオバケ絵本や原画が展示されるほか、静嘉堂文庫美術館館長で、江戸時代の妖怪に詳しい安村敏信がオバケ・幽霊・妖怪の歴史をひも解きます。

続いては20世紀後半のベルギーを代表するアーティストの展覧会です。『空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン』が東京ステーションギャラリーにて行われます。



『空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン』@東京ステーションギャラリー(7/13~9/23)

1934年に生まれたフォロンは、若き日にマグリットの作品に感銘を受けて絵画に惹きつけられると、ドローイングを手がけ、のちにアメリカにて有力誌の表紙を飾るなどして注目を浴びました。

その後、ミラノ・トリエンナーレ(1968年)のフランス館で壁画を依頼されたほか、サンパウロ・ビエンナーレ(1973年)などでのベルギー代表としての参加するなど活動の幅を広げ、世界中から高く評価されてきました。

そうしたフォロンの活動を辿るのが今回の個展で、ドローイングから水彩画、版画、ポスター、そして晩年の立体作品など約230点が公開されます。幻想的で詩情に満ちながら、環境破壊や人権問題などへの告発が潜むフォロンの作品世界をまとめて見る良い機会となりそうです。

最後は今年3月に亡くなった彫刻家、舟越桂の展覧会です。彫刻の森美術館にて、『舟越桂 森へ行く日』が開催されます。

『舟越桂 森へ行く日』@彫刻の森美術館(7/26~11/4)


これは自らが「心象人物」と名付けた人物像を中心に、舟越の制作の軌跡を辿るもので、初期の『妻の肖像』(1979〜80年)から『山と水の間に』(1998年)、さらには『水に映る月蝕』(2004年)や『戦争を見るスフィンクスⅡ』(2006年)などの新旧の作品が展示されます。

Penオンラインに今年の7月から12月にかけてのおすすめの展覧会を寄稿しました。あわせてご覧いただければ幸いです。

Penが選んだ、2024年下半期「必見の展覧会」5選|Pen Online


しばらくブログは不定期での更新となります。それではどうぞよろしくお願いいします。
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『石川九楊大全』 上野の森美術館

上野の森美術館
『石川九楊大全』
2024/6/8~7/28



上野の森美術館にて書家、石川九楊の個展が開かれています。

それが『石川九楊大全』で、過去に石川が手がけた書作品2000点から選ばれた300点あまりが、前期【古典篇】と後期【状況篇】に分けて紹介されていました。

このうち6月の前期【古典篇】では、石川が1980年〜90年代に日本の「歎異抄」や「源氏物語」はじめ、中国の「李賀詩」といった古典文学を題材とした作品が展示されていて、とりわけ滲みを多用しながら主題の「涙」を表したという巨大な『李賀詩 感諷五首』(五連作)が目立っていました。

また「桐壺」から本文のない「雲隠」、そして「夢浮橋」へと至る全五十五帖を表した『源氏物語書巻』では、一点一点の作品に異なる筆触を用いつつ、物語の内容を暗示、あるいはえぐるとるように書いていて、現代アートすら連想させる石川の多様な表現を見ることができました。

このほか、石川自らが制作のターニングポイントとなったという『歎異抄 No.18』をはじめ、古代の象形文字を思わせるような『方丈記 No.5』、さらには抽象表現を思うような『屈原』なども見どころだったかもしれません。

私自身、2017年に同じ上野の森美術館にて開催された『書だ!石川九楊展』にて大いに感銘を受けましたが、時にさまざまな心象風景を喚起させたり、音楽のリズムすら感じさせる作品世界に改めて魅せられました。

展示替えについての情報です。出品作品は前期【古典篇】 と後期【状況篇】にてすべて入れ替わります。

前期【古典篇】 遠くまで行くんだ:2024年6月8日(土)~6月30日(日)
後期【状況篇】 言葉は雨のように降りそそいだ:2024年7月3日(水)~7月28日(日)

後期【状況篇】では初期の代表作 『エロイ・エロイ・ラマ・サバクタニ』および、続編である超大作『エロイエロイラマサバクタニ又は死篇』をはじめ、アメリカ同時多発テロ事件や福島第一原子力発電所事故、それに新型コロナウイルスのパンデミックやヨーロッパでの戦争など、石川が現代社会の混沌や病理をえぐった最新の自作詩などが公開されます。


なお『石川九楊大全』の前期【古典篇】の見どころや内容についてPenオンラインに寄稿しました。

石川九楊が切り開く、前人未踏の新たな書の世界。上野の森美術館にて「石川九楊大全」が開催中!|Pen Online

こちらでは主催者の許可をいただき、会場内を展示風景を掲載しています。あわせてご覧いただければ嬉しいです。

7月28日まで開かれています。

『石川九楊大全』@kyuyoh_taizen) 上野の森美術館@UenoMoriMuseum
会期:2024年6月8日(土)~7月28日(日)
 前期【古典篇】 遠くまで行くんだ:2024年6月8日(土)~6月30日(日)
 後期【状況篇】 言葉は雨のように降りそそいだ:2024年7月3日(水)~7月28日(日)
休館:7月1日(月)、7月2日(火)
時間:10:00~17:00
 *最終入館時間は16:30
料金:一般・大・高生2000円、中学生以下無料。
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分、東京メトロ・京成電鉄上野駅より徒歩5分。
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