『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』 大阪市立東洋陶磁美術館

大阪市立東洋陶磁美術館
『リニューアルオープン記念特別展「シン・東洋陶磁―MOCOコレクション」』
2024/4/12~9/29



1982年に住友グループより安宅コレクションを寄贈されたことをきっかけに誕生した大阪市立東洋陶磁美術館は、同コレクションの中国・韓国陶磁を中心に、李秉昌(イ・ビョンチャン)コレクションの韓国陶磁、または日本陶磁の収集などを重ね、世界第一級の東洋陶磁のコレクションを築いてきました。


『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』 展示風景

その大阪市立東洋陶磁美術館のリニューアルを期して開かれているのが、『リニューアルオープン記念特別展「シン・東洋陶磁―MOCOコレクション」』で、会場には同館の誇る東洋陶磁コレクションなど約380件の作品が公開されていました。


『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』 展示風景

今回のリニューアルに際して一新したのはエントランスホールの増改築で、展示ケースの改修やLED照明の更新といった展示環境の整備、また国宝の『油滴天目茶碗』専用ケースの導入などが行われました。


『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』 展示風景

展示は「天下無敵(てんかむてき)」や「翡色幽玄(ひしょくゆうげん)」、さらに「泥土不滅(でいどふめつ)」などと名付けられた13のセクションより構成されていて、いずれの陶磁器も透明度の高いガラスの中、「紫」励起LEDと呼ばれる照明の効果も相まって美しいすがたを見せていました。


国宝『飛青磁 花生』 元時代・14世紀 住友グループ寄贈(安宅コレクション)

『飛青磁 花生』とは中国で「玉壺春」の名で知られ、酒器として用いられた作品で、日本では花器として珍重されてきました。


重要文化財『法花 花鳥文 壺』 明時代・15世紀 住友グループ寄贈(安宅コレクション)

『法花 花鳥文 壺』は、花樹にとまるつがいの鳥が浮き彫りで表されたもので、法花としては最大級の作例といわれるように優美でかつ堂々としたすがたを見せていました。


『シン・東洋陶磁―MOCOコレクション』 展示風景

充実極まりない東洋陶磁コレクションを、最良の展示空間で鑑賞できる展覧会といえるかもしれません。まさに右も左も名品揃いで圧倒されました。




撮影も可能です。9月29日まで開催されています。

『リニューアルオープン記念特別展「シン・東洋陶磁―MOCOコレクション」』 大阪市立東洋陶磁美術館@OsakaMuseums
会期:2024年4月12日(金)~9月29日(日) 
休館日:月曜日、5/7(火)、7/16(火)、8/13(火)、9/17(火)、9/24(火)
 *但し祝日の4/29(月)、5/6(月)、7/15(月)、8/12(月)、9/16(月)、9/23(月)は開館。
時間:9:30~17:00。
 *入館は16:30まで
料金:一般1600(1400)円、高校生・大学生800(700)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:大阪市北区中之島1-1-26(大阪市中央公会堂東側)
交通:京阪中之島線なにわ橋駅1号出口すぐ。Osaka Metro御堂筋線・京阪本線淀屋橋駅1号出口、Osaka Metro堺筋線・京阪本線北浜駅26号出口各駅から約400m。
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『板倉鼎・須美子展』 千葉市美術館

千葉市美術館
『板倉鼎・須美子展』 
2024/4/6~6/16


板倉鼎『黒椅子による女』 1928年 松戸市教育委員会

幼い頃より松戸市に過ごした板倉鼎(1901年生まれ)は、東京美術学校西洋画科に進んだのち、ロシア文学者である昇曙夢の長女須美子と結婚すると、ハワイを経由してパリへと留学しました。


板倉鼎『雲と秋果』 1927年 松戸市教育委員会

そのふたりの画業を紹介するのが『板倉鼎・須美子展』で、会場には鼎と須美子を長く顕彰してきた松戸市教育委員会の全面的な協力のもと、約240点もの作品と資料が展示されていました。

東京美術学校の在学中より帝展への入選を果たした鼎は、パリにて斎藤豊作や岡鹿之助と親交すると、アカデミー・ランソンではロジェ・ビシエールに絵を学びました。

そして若手芸術家の登竜門であるサロン・ドートンヌやサロン・ デ・ザンデパンダンなどに入選を果たすと、エコール・ ド・パリの画家たちの影響を受けながら、窓辺の静物を描いた作品や須美子をモデルとした連作などを制作しました。


板倉須美子『午後 ベル・ホノルル12』 1927〜28年 松戸市教育委員会

一方で須美子は鼎に出会って油彩画を手がけると、ホノルルの風物を描いた作品で独自の画風を切り開き、代表作「ベル・ホノルル」では当時のパリで鼎を上回るほどの評価を得ました。どことなく童話の世界を思わせるような幻想的な作風も魅力といえるかもしれません。


板倉鼎『垣根の前の少女』 1927年 千葉市美術館

『垣根の前の少女』とは鼎がサロン・ドートンヌに初入選した1927年に描かれた作品で、表題の通り垣根の前で立つ少女が、鼎の妹から送られたという孔雀草を口にくわえるすがたを捉えていました。必ずしも一概に言えないものの、女性の肖像画で人気を博したキスリングの画風を彷彿させる面があるかもしれません。


板倉鼎『ダリアと少女』 1929年 松戸市教育委員会

パリで新境地を開いた鼎は、帰国を目前とした1929年、敗血症により28歳の若さにて急死しました。そして幼い子を連れて帰国した須美子も1934年、結核によりわずか25歳にて世を去りました。


板倉須美子『ベル・ホノルル24』 1928年頃 松戸市教育委員会

夭折した洋画家夫妻の足跡を丹念に追いつつ、手紙などを交えて、1920年代のパリで活動した日本人画家の生き様を浮き彫りにするような展覧会だったかもしれません。作品や資料に不足はありませんでした。


一部作品のみ撮影が可能です。6月16日まで開かれています。おすすめします。

『板倉鼎・須美子展』 千葉市美術館@ccma_jp
会期:2024年4月6日(土)~6月16日(日) 
休室日:4月15日(月)、5月7日(火)、20日(月)、6月3日(月)*第1月曜日は全館休館
時間:10:00~18:00。
 *入館は閉館の30分前まで
 *毎週金・土曜は20時まで。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
 *常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
 *ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は観覧料が半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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『百年後芸術祭‐内房総アートフェス‐』 内房総5市

内房総5市 (市原市・木更津市・君津市・袖ケ浦市・富津市)
『百年後芸術祭‐内房総アートフェス‐』
2024/3/23〜5/26


梅田哲也 展示風景

千葉県内の内房総5市 (市原市・木更津市・君津市・袖ケ浦市・富津市)にて、『百年後芸術祭‐内房総アートフェス‐』が開かれています。

その見どころの一部についてPenオンラインに寄稿しました。

千葉県にて新たな芸術祭がスタート!『内房総アートフェス』で注目したいスポットとは|Pen Online


『里見プラントミュージアム』 展示風景

まず市原市でフェスの1つの拠点となっているのが旧里見小学校で、豊福亮が体育館のスペースを丸ごと用いた『里見プラントミュージアム』を展開していました。


『里見プラントミュージアム』 展示風景

これは市原市の臨海部に広がる工場夜景のイメージを、足場やドラム缶、踏み切りや鉄道のレールなどを素材に構築したもので、あわせて角文平、栗山斉、千田泰広、原田郁、柳建太郎といった作家の作品も公開していました。


保良雄 展示風景

君津市の無人となった団地の部屋を用いた、保良雄の『種まく人』も見ごたえのあるインスタレーションでした。


保良雄 展示風景

『Reborn-Art Festival 2021-22』などでも腐葉土や植物を用いた作品を発表した保良は、今回、古びた部屋の中に大量の土を持ち込むと、さまざまな植物を植え込んでいて、映像を交えながら未来への持続可能な農業のあり方などを問い直していました。


岩崎貴宏 展示風景

富津市の富津埋立記念館での岩崎貴宏の作品も見ておきたいのではないでしょうか。ここでは500リットル以上もの醤油を和室の空間に流し込み、海上都市を海苔で作り上げていて、東京湾のコンビナートの風景を意外な素材で立ち上がる光景を目の当たりにできました。


キム・テボン 展示風景

木更津駅周辺の小谷元彦や梅田哲也、袖ケ浦公園内の旧進藤家住宅の大貫仁美とアクアラインなるほど館のキム・テボン、君津市の旧内箕輪保育園のさわひらき、富津市の富津公民館の中﨑透の作品もそれぞれ見ごたえがありました。


クルックフィールズ

このほか、木更津市のサステナブルファーム&パーク、クルックフィールズも、立ち寄りたいスポットの一つといえそうです。


小谷元彦 展示風景

一つの芸術祭としてのエリアは想像以上に広大でした。お出かけの際は公式サイトのモデルコースなどをご参照ください。


会期も残り少なくなりました。5月26日まで開かれています。

『百年後芸術祭~環境と欲望~内房総アートフェス』@100nengo_artfes
会期:2024年3月23日(土)〜5月26日(日)
 *火・水曜日定休(4月30日・5月1日は除く。一部施設は定休日が異なる)(全49日)
時間:10:00~17:00
 *作品によって公開日・公開時間が異なる場合あり
会場:内房総5市 (市原市・木更津市・君津市・袖ケ浦市・富津市)
料金:一般 3500円、小中高生 2000円、小学生未満無料。
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『Oita Cultural Expo! '24』 大分県内各地

『福岡・大分デスティネーションキャンペーン』の開催にあわせ、大分県内4地域にて『Oita Cultural Expo! '24』が行われています。



そのうち大分市と別府市にて展開するカルチャーイベントの見どころについて、FIGARO.jpに寄稿しました。

大分の魅力をアートで再発見!「Oita Cultural Expo! '24」の見どころ6選。:madameFIGARO_jp

まずカルチャーイベントとはアーティストらが県内の各地域に滞在し、作品を構想して制作するもので、大分市では木崎公隆と山脇弘道によるアートユニットYotta(ヨタ)、また別府市では栗林隆が作品を公開していました。



Yottaは大分の駅前にて巨大なこけしのバルーン『花子』を展示していて、中心市街地のアーケード街の中ではレトロな車を用いた『金時』と『穀』(たなつ)を並べていました。



『金時』とは実際に焼き芋を販売できる車で、もともとは2010年に行われた「六本木アートナイト」へ出品するために作られました。また『穀』とは大砲のような機械でポン菓子を生み出せる車のことで、突発的にデモンストレーションも行われました。



一方の別府市でカルチャーイベントを手がける栗林隆は、北浜公園にて「Tanker Project」を展開していて、薬草を用いたスチームサウナの『元気炉トリップ』を体験することもできました。



別府八湯のひとつである鉄輪温泉には植物を育てる『植物元気炉』を新たに公開していて、全国各地から集めた多種多様な常緑植物が植えられる光景を見ることができました。



このほかFIGAROの記事では大分県立美術館や街中に広がる「おおいたストリートアート」、また別府市でのマイケル・リンの作品、アート宿泊体験の楽しめるGALLERIA MIDOBARUなどについても紹介しました。



本イベントを企画するYamaide Art Officeの山出淳也は、現在は別々の事業として行われているさまざまな企画を横につなげ、今後は持続可能な芸術祭として、九州全体を視野に入れながら活動を展開していくそうです。



期間中に住民がガイドし、アーティストのアトリエ訪問などを行う散策ツアーや、地域の食文化を体験するバスによる旅、カルチャーツアーに参加するのも楽しいかもしれません。


『Oita Cultural Expo! '24』は6月30日まで開かれています。

「Oita Cultural Expo! '24」
会期:2024年4月1日(月)~6月30日(日)
 *イベントにより異なる
会場:大分県大分市、別府市、佐伯市、臼杵市、竹田市、国東半島(豊後高田市、国東市)
公式サイト:www.oita-cultural-expo.com
Instagram:www.instagram.com/oitacexpo24
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『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』 パナソニック汐留美術館

パナソニック汐留美術館
『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』
2024/4/6〜6/9


『カラカラ浴場 復元縮小模型』 模型制作:東京造形大学デザイン学科・室内建築専攻上田ゼミの学生

ヤマザキマリの漫画『テルマエ・ロマエ』をきっかけに、古代ローマと日本の浴場文化を紹介する展覧会が、パナソニック汐留美術館にて開かれています。

それが『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』で、会場にはナポリ国立考古学博物館所蔵の絵画、彫刻、考古資料をはじめ、日本の入浴文化に関する資料などが展示されていました。


『ヴィーナス』(ナポリ国立考古学博物館・50〜79年)

古代ローマの公共浴場を意味するテルマエは、4世紀になると大規模な浴場は11、小規模なものでは900を数えるほど存在すると、医療と健康と結びつきながら、ローマ市民が疲れを癒す場所として利用されてきました。


『ヘラクレスのトルソ』(個人蔵・1〜2世紀)

テルマエのルーツは古代ギリシャの運動施設の水風呂などにあったとされていて、それをローマ人は水道敷設といった高い技術力などによって、大規模な施設へと発展させました。

また単に身体を洗うために使われるだけでなく、付随する運動場や部屋などで運動や歓談をする場としても重要視されていて、大規模なテルマエには神々の像といった大理石彫刻なども飾られました。


『恥じらいのヴィーナス』(ナポリ国立考古学博物館・1世紀)

今回の展覧会では饗宴を楽しむ光景を描いた『ヘタイラ(遊女)のいる饗宴』や、温泉に祀られたというニンフを象った『アポロとニンフへの奉納浮彫』、さらに『恥じらいのヴィーナス』といった1〜2世紀の彫刻作品も少なからず出展されていて、いわば古代ローマの美術展としても捉えても見応えがありました。


三浦宏『湯屋模型』(個人蔵・1980年代)

このほか、江戸時代後期の湯屋の模型や昭和初期の花王シャンプー、そしてどこか懐かしいケロリンの桶といった日本の入浴文化に関する展示も楽しかったかもしれません。


古代ローマと日本の浴場文化を体感! パナソニック汐留美術館の『テルマエ』展の見どころ|Pen Online


ケロリンの桶などが並ぶ展示風景

GWを挟んで一部の作品が入れ替わりました。これ以降の展示替えはありません。


『テルマエ展』フォトスポット

一部エリアの撮影が可能です。6月9日まで開催されています。

『テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本』 パナソニック汐留美術館@shiodome_museum
会期:2024年4月6日(土)〜 6月9日(日)
休館:水曜日。ただし6月5日は開館。
時間:10:00~18:00 
 *入館は閉館の30分前まで。
 *5月10日(金)、6月7日(金)、6月8日(土)は20時まで開館。
料金:一般1200円、65歳以上1100円、大学生・高校生700円、中学生以下無料。
 *ウェブサイト割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分
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