「第3回 日経日本画大賞」展 ニューオータニ美術館

ニューオータニ美術館千代田区紀尾井町4-1
「第3回 東山魁夷記念 日経日本画大賞」
11/2-12/17(会期終了)

町田久美、三瀬夏之介、長沢明ら、今年のMOTアニュアルでも活躍した作家が揃っていました。「21世紀の美術界を担う新進気鋭の日本画家を表彰する制度として創立」(パンフレットより。)された、今年で3回目を数える日経日本画大賞の展覧会です。



大賞に選出された奥村美佳の「かなた」は、出展作品の中でとりわけ王道的とも言える日本画でした。東山魁夷記念というこの賞の名前からすると、この作品が大賞に選ばれたのも納得です。どこか懐かしい風情の街並を覆う白んだ夕焼けと、窓から仄かに滲み出す明かりが美しい。また、まるで積み木細工で出来たような家々のフォルムも独特です。素朴な風情を醸し出しています。



さて、今回の展示で一番印象深かったのは、見れば見るほど惹かれる町田久美の作品でした。この画像では全く伝わりませんが、しっとりとして艶やかな線が、とても流麗にひかれ、シュルレアリスム風な人物を鮮やかに象っています。それにしてもこの簡潔極まりない線だけで、どうして丸みのある頭部の立体感や、背中の肉付きがこれほど巧みに表現出来るのでしょう。そしてその線には、目を凝らして見ないと良く分からないくらい薄い影が、とても控えめに、そして器用に付いていました。また、爪に塗られた鮮やかな緑がぽっかりと浮き出しています。その類い稀な描写力と不思議なモチーフの双方に魅力のある作品です。今後も積極的に見続けていきたい方だと思います。



三瀬夏之介の「日本の絵」も迫力満点でした。大空へ突き出すようにそびえる大観風の富士山の裾野に広がる雪化粧を纏った街が、屏風絵風の大パノラマにて広がっています。富士をより神々しい様子に見せているのは、やはり大胆に貼られた金箔の味わいでしょうか。筍がニョキニョキ生えているようなビル群と、巨大なキノコの群れのような山々がひしめく合うように繋がっていました。まるで浦上玉堂の奇岩奇山を思わせる光景です。また、左手前部分に描かれた白い沼が叙情的でした。小舟も浮いているのか、木々が水辺へ迫出して幽玄な雰囲気すら醸し出しています。まるで空に舞う粉雪が積もって、沼が徐々に凍り始めているかのようです。そしてよく見ると、何やら人影のようなものがポツポツと描かれていました。荒涼とした険しい大自然の中で、それに埋もれながらも逞しく、また健気に生きているようです。



その他では、サム・フランシスを思わせる抽象的な書画を見せた小滝雅道の「一文字波」も印象に残りました。深い青みから湧き上がる霧と、その中で陽炎のようにまたたく線の動きが興味深い作品です。

いわゆる日本画の技法を用いた現代アートは大好きです。次回もまた拝見したいと思います。(12/9鑑賞)
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