都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」 東京オペラシティアートギャラリー
東京オペラシティアートギャラリー
「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」
4/18-6/28
東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」を見てきました。
精神科医、高橋龍太郎による日本の現代美術コレクションこと高橋コレクション。前回、都内でまとめて公開されたのは2009年、上野の森美術館の「ネオテニー・ジャパン」展のことでした。
それ以来の展示です。作家は全52名、作品は約140点です。「1990年以降の日本のアートシーン」(チラシより)の一部を俯瞰し得る現代美術作品がずらりと並んでいます。
始まりは草間彌生でした。お馴染みの水玉、先に90年代以降と触れましたが、一番古いものでは1950年代です。キャリア初期の水彩も展示されています。
草間彌生「レペティション A, B」 1996年 フォトコラージュ、ペイント、紙
さながら草間ルームです。中央には立体の「鏡の部屋ー愛は永遠に(NO.3)」が置かれ、四方の壁には50年代の「Star(星)」や2000年以降の近作、ネット状に線が広がる「INFINITY-NET(TWZO)」などが掲げられています。全15点ほどです。高橋コレクションの中でも重要なポジションなのかもしれません。草間の今と昔の制作を見ることが出来ました。
展示は基本的に作家別です。空間を区切った小さな展示室が続きます。そこで作家を個展形式、あるいは相互に関係し合うように紹介しているのもポイントです。(リストと展示順は一致しません。)
菅木志雄「補われた素材」 1986年 木、パテ
草間の次の部屋では関根伸夫や菅木志雄、李禹煥、それに榎倉康二といったもの派の作品を紹介。李禹煥は近年の照応でした。白いキャンバス地にグレーのストロークが打ち付けられます。その反対側は金色です。金箔を用いた関根伸夫の「神話素」が展示されていました。
奈良美智「Candy Blue Night」 2001年 アクリル絵具、キャンバス
人気の奈良美智、村上隆はほぼ各一室での展開です。村上の銀に輝く屏風は「ルイ・ヴィトンのお花畑」です。先だっての熱海の光琳アート展(MOA)を終え、ここ初台へ改めてやって来ました。小さなギャラリーでの個展を見ているような気にもさせられます。
会田誠「ジューサーミキサー」 2001年 アクリル絵具、キャンバス
ちなみにMOAといえば会田誠です。同じく光琳アート展に出ていた戦争画RETURNSの2点、「美しい旗」と「紐育空爆之図」も展示されています。前者が宗達の風神雷神、或いは光琳の紅白梅図だとしたら、後者は鈴木其一の朝顔図屏風を連想させるのではないでしょうか。大作「ジューサーミキサー」も久しぶりに見ました。グロテスクながらも、どこか美しくもあります。細部の描き込みもリアルです。思わずミキサーに引込まれてしまいます。
2009年のオペラシティでの個展の記憶が蘇りました。鴻池朋子です。作品は1点、横幅2メートルを超える「第4章 帰還ーシリウスの曳航」です。堂々たる姿、大変な迫力です。神々しくさえあります。
迫力といえば西尾康之の「Crash セイラ・マス」も忘れられません。ホワイトキューブの中央に鎮座するのは特大の立体彫刻作品、何と長さは6メートルです。目をひん剥き、物凄い剣幕でこちら側を見据える女性。サイボーグなのでしょうか。全身は隆々たる筋肉で覆われ、腹は開き、内臓も露出しているように見えます。
この「セイラ・マス」、ちょうど顔の部分が展示室の入口に向くように置かれていました。部屋に入ったらあの巨人がいきなり目に飛び込んで来るわけです。右手は振り上がってパンチ、何かをぶん殴ろうとしています。目を合わすとさも噛みちぎられそうなほどのスケールです。思わず後ずさりしてしまいました。
ついこの前、谷中のSCAIの個展に出た塩保朋子の「cosmic perspective」が早くも高橋コレクションに収められていました。そして前で燦然と輝くのは名和晃平のピクセルシリーズから「Lion」です。またこのセクションではやや照明を落として宮永愛子の「はるかの眠る舟」も展示。そう言えば須田悦広の「雑草」もいつものようにひっそりとありました。少し探して歩く必要があるかもしれません。
松井えり菜「食物連鎖 Star Wars!」 2008年 油彩、キャンバス、オルゴール
ラストの長い通路では2人の写真家、荒木経惟と森山大道の作品が向かい合うように展示されています。さらに奥には青山悟に町田久美、安藤正子やChim↑Pomと続いています。改めて見ても幅広いコレクション。2009年の上野の森の展示と重なる点も少なくありませんが、まずは一定数を楽しむことが出来ました。
なお一つ上の階、常設展に続いて若手アーティストを紹介する「project N」も見逃せません。
「project N 60 富田直樹」@東京オペラシティアートギャラリー
作家は富田直樹。1983年生まれのペインターです。ともかく一点一点、画肌に迫力があります。ポイントは盛られた絵具です。これぞ「触知性」(解説シートより)と言うべきなのでしょうか。身近な都市風景なりポートレートが絵具の強い質感を伴って浮き上がっています。
草間彌生「ハーイ、コンニチワ!ヤヨイちゃん」、「ハーイ、コンニチワ!ポチ」 2004年 ミクストメディア *この作品のみ撮影可。
今週末、5月16日には名和晃平を迎えての対談イベントがあるそうです。
対談「名和晃平VS鈴木芳雄」
出演:名和晃平(作家)、鈴木芳雄(美術ジャーナリスト)
日時:5/16(土)14:00~15:00
会場:東京オペラシティビル7階第一会議室(定員80名/全席自由)
参加費:無料(展覧会の入場は別料金)要整理券
*当日11時よりアートギャラリー受付にて整理券を配布。定員に達し次第終了。
事前申し込み不要、無料のトークです。こちらも注目されるのではないでしょうか。
館内には余裕がありました。6月28日まで開催されています。
「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:4月18日(土)~6月28日(日)
休館:月曜日。但し5月4日は開館。
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。入場は閉館30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、大・高生800(600)円、中学生以下無料。
*( )内は15名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」
4/18-6/28
東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」を見てきました。
精神科医、高橋龍太郎による日本の現代美術コレクションこと高橋コレクション。前回、都内でまとめて公開されたのは2009年、上野の森美術館の「ネオテニー・ジャパン」展のことでした。
それ以来の展示です。作家は全52名、作品は約140点です。「1990年以降の日本のアートシーン」(チラシより)の一部を俯瞰し得る現代美術作品がずらりと並んでいます。
始まりは草間彌生でした。お馴染みの水玉、先に90年代以降と触れましたが、一番古いものでは1950年代です。キャリア初期の水彩も展示されています。
草間彌生「レペティション A, B」 1996年 フォトコラージュ、ペイント、紙
さながら草間ルームです。中央には立体の「鏡の部屋ー愛は永遠に(NO.3)」が置かれ、四方の壁には50年代の「Star(星)」や2000年以降の近作、ネット状に線が広がる「INFINITY-NET(TWZO)」などが掲げられています。全15点ほどです。高橋コレクションの中でも重要なポジションなのかもしれません。草間の今と昔の制作を見ることが出来ました。
展示は基本的に作家別です。空間を区切った小さな展示室が続きます。そこで作家を個展形式、あるいは相互に関係し合うように紹介しているのもポイントです。(リストと展示順は一致しません。)
菅木志雄「補われた素材」 1986年 木、パテ
草間の次の部屋では関根伸夫や菅木志雄、李禹煥、それに榎倉康二といったもの派の作品を紹介。李禹煥は近年の照応でした。白いキャンバス地にグレーのストロークが打ち付けられます。その反対側は金色です。金箔を用いた関根伸夫の「神話素」が展示されていました。
奈良美智「Candy Blue Night」 2001年 アクリル絵具、キャンバス
人気の奈良美智、村上隆はほぼ各一室での展開です。村上の銀に輝く屏風は「ルイ・ヴィトンのお花畑」です。先だっての熱海の光琳アート展(MOA)を終え、ここ初台へ改めてやって来ました。小さなギャラリーでの個展を見ているような気にもさせられます。
会田誠「ジューサーミキサー」 2001年 アクリル絵具、キャンバス
ちなみにMOAといえば会田誠です。同じく光琳アート展に出ていた戦争画RETURNSの2点、「美しい旗」と「紐育空爆之図」も展示されています。前者が宗達の風神雷神、或いは光琳の紅白梅図だとしたら、後者は鈴木其一の朝顔図屏風を連想させるのではないでしょうか。大作「ジューサーミキサー」も久しぶりに見ました。グロテスクながらも、どこか美しくもあります。細部の描き込みもリアルです。思わずミキサーに引込まれてしまいます。
2009年のオペラシティでの個展の記憶が蘇りました。鴻池朋子です。作品は1点、横幅2メートルを超える「第4章 帰還ーシリウスの曳航」です。堂々たる姿、大変な迫力です。神々しくさえあります。
迫力といえば西尾康之の「Crash セイラ・マス」も忘れられません。ホワイトキューブの中央に鎮座するのは特大の立体彫刻作品、何と長さは6メートルです。目をひん剥き、物凄い剣幕でこちら側を見据える女性。サイボーグなのでしょうか。全身は隆々たる筋肉で覆われ、腹は開き、内臓も露出しているように見えます。
この「セイラ・マス」、ちょうど顔の部分が展示室の入口に向くように置かれていました。部屋に入ったらあの巨人がいきなり目に飛び込んで来るわけです。右手は振り上がってパンチ、何かをぶん殴ろうとしています。目を合わすとさも噛みちぎられそうなほどのスケールです。思わず後ずさりしてしまいました。
ついこの前、谷中のSCAIの個展に出た塩保朋子の「cosmic perspective」が早くも高橋コレクションに収められていました。そして前で燦然と輝くのは名和晃平のピクセルシリーズから「Lion」です。またこのセクションではやや照明を落として宮永愛子の「はるかの眠る舟」も展示。そう言えば須田悦広の「雑草」もいつものようにひっそりとありました。少し探して歩く必要があるかもしれません。
松井えり菜「食物連鎖 Star Wars!」 2008年 油彩、キャンバス、オルゴール
ラストの長い通路では2人の写真家、荒木経惟と森山大道の作品が向かい合うように展示されています。さらに奥には青山悟に町田久美、安藤正子やChim↑Pomと続いています。改めて見ても幅広いコレクション。2009年の上野の森の展示と重なる点も少なくありませんが、まずは一定数を楽しむことが出来ました。
なお一つ上の階、常設展に続いて若手アーティストを紹介する「project N」も見逃せません。
「project N 60 富田直樹」@東京オペラシティアートギャラリー
作家は富田直樹。1983年生まれのペインターです。ともかく一点一点、画肌に迫力があります。ポイントは盛られた絵具です。これぞ「触知性」(解説シートより)と言うべきなのでしょうか。身近な都市風景なりポートレートが絵具の強い質感を伴って浮き上がっています。
草間彌生「ハーイ、コンニチワ!ヤヨイちゃん」、「ハーイ、コンニチワ!ポチ」 2004年 ミクストメディア *この作品のみ撮影可。
今週末、5月16日には名和晃平を迎えての対談イベントがあるそうです。
対談「名和晃平VS鈴木芳雄」
出演:名和晃平(作家)、鈴木芳雄(美術ジャーナリスト)
日時:5/16(土)14:00~15:00
会場:東京オペラシティビル7階第一会議室(定員80名/全席自由)
参加費:無料(展覧会の入場は別料金)要整理券
*当日11時よりアートギャラリー受付にて整理券を配布。定員に達し次第終了。
事前申し込み不要、無料のトークです。こちらも注目されるのではないでしょうか。
館内には余裕がありました。6月28日まで開催されています。
「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:4月18日(土)~6月28日(日)
休館:月曜日。但し5月4日は開館。
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。入場は閉館30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、大・高生800(600)円、中学生以下無料。
*( )内は15名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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