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「魔性の女」 弥生美術館

弥生美術館
「魔性の女 挿絵(イラストレーション)」
4/4-6/30



弥生美術館で開催中の「魔性の女 挿絵(イラストレーション)」展へ行ってきました。

明治末から昭和初期にかけて、日本の文学を賑わせた「魔性の女」。泉鏡花、谷崎潤一郎、江戸川乱歩らによるヒロインたちは、時にその官能を持って男性を支配、そして破滅へと向かわせていった。

本展ではそのような文学における「魔性の女」をイラストレーションで紹介。妖しくもまた魅惑的な女たちを、挿絵、下絵原画、さらには映画ポスターなどで見ることが出来ます。

まずは橘小夢から。鳥羽上皇の寵愛を受けた女性が実は保元の乱を起こした狐であったという「玉藻の前」。さらには谷崎の「刺青」などが続きます。

「魔性の女」で面白いのは、水と絡めた表現が多いこと。そもそもセイレーンや人魚しかり、西洋における魔性的表現も水にまつわるものが多いとか。日本も例外ではありません。


「人魚の嘆き」 谷崎潤一郎/作(大正8年)水島爾保布/装画

かの有名なオフェーリアも溺死。それに感化された清方の作品なども目を引きます。さらに水に絡めれば「日本のワイルド」(キャプションより)とも称される谷崎潤一郎の「人魚の嘆き」シリーズも見どころの一つ。それに水辺の女性を多く描いた名越国三郎の名も。

ちなみに明治期の小説では運命に翻弄されるヒロインが多かったものの、大正に入ってから運命へ逆らって己の目的を遂げる女性が増えたとか。嫉妬や復讐などの主題もこの時代ならではのもの。「魔性」は社会や時代の要請した一つの産物でもあります。

もちろん有名どころだけでなく、知られざる作家も紹介。中でも月岡夕美は性別すら分かっていない挿絵画家。おそらく芳年へのオマージュとして付けられたペンネーム。曲線美を多用した「少女画報」の挿絵が紹介されています。

またアールヌーボー的な作家としては内藤良治も。こちらは「婦人画報」での挿絵。細かで装飾的な線描が印象に残ります。


「鬼火」 横溝正史/作(大正8年)竹中英太郎/挿絵原画

他には小村雪岱に江戸川乱歩も登場。乱歩のミステリーでは「最も美しい女性が実は犯人だった。」という流れも少なくなかったそうです。

充実しているのは高畠華宵です。当時、浅草で流行った大衆演劇のカルメンやサロメを見て、数多くのスケッチを残したとか。また「ラインの黄金」の挿絵も魅力的。かのワーグナーの乙女たちの動機が頭の中で流れます。

手狭なスペースではありますが、出品は全400点ほど。解説パネルも極めて充実。見応えはもちろん、読み応えもある展示でした。

「魔性の女挿絵集ー大正~昭和初期の文学に登場した妖艶な悪女たち/河出書房新社」

なお本展にあわせて刊行された画集「魔性の女 挿絵集」(河出書房新社)が、展示内容に準拠しています。こちらは書店でも発売中。是非手にとってご覧下さい。

弥生美術館、実は初めて行きましたが、お茶の水駅の聖橋から出る都営バス(学バス)が便利でした。終点の東大構内から弥生門を出るともう目の前。もちろん千代田線の根津駅からも歩けます。

6月30日までの開催です。

「魔性の女 挿絵(イラストレーション)ー大正~昭和初期の文学に登場した妖艶な悪女たち」 弥生美術館
会期:4月4日(木)~6月30日(日)  
休館:月曜日。但し4/16(火)~5/6(月)は無休。
時間:10:00~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般900円、大・高校生800円、中学・小学生400円。割引クーポン
 *20名以上の団体は100円引
 *竹久夢二美術館と共通料金
住所:文京区弥生2-4-3
交通:東京メトロ千代田線根津駅1番出口より徒歩7分。お茶の水駅より都バス学07番「東大構内」行きに乗車、終点東大構内下車徒歩2分。
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