「鵜飼美紀+辻和美 -光のかけら- 」 群馬県立館林美術館 2/12

群馬県立館林美術館(館林市日向町2003)
「特別展示 鵜飼美紀+辻和美 -光のかけら- 」
2005/12/10-2006/4/2

群馬県立館林美術館にて開催中の、鵜飼美紀と辻和美の二人展です。展示作品は計3点(鵜飼2点、辻1点。)と少ないのですが、広々としたエントランスの中庭部分と第1展示室を贅沢に使って、美しいインスタレーションが実現されています。

まず初めに出迎えてくれたのは、エントランスすぐ横の中庭部分で展示されていた、鵜飼美紀の「無題」(2005)です。直径約10センチほどの、水の入れられたガラスの器。(器の中にはもう一つ、ガラス製の小さな蓋が逆さになって入っています。)それが約10メートル四方はあろうかと思われる石床上に、何と563個も置かれています。また、この中庭部分は屋根がないために直接外へ面していますが、この日吹き荒れた強い北風(まさに空っ風です。)が器の中の水をワサワサと揺らす様子を見ると、あたかもそれらが寒さに震えているかのようにも見えてきます。ブルブルと北風に震えて耐える器たち。しかし上から差し込む陽の光は、春を予感させる温かい明かりでした。一面に水晶をまいたような、キラキラと輝くガラスたちは、間もなくやってくる春への希望、または生命の息吹(ちょうど生き物が水から誕生したように。)のようにも感じられます。ガラスという、冷たく透明感のある素材を用いながらも、どこか心温まる作品です。

もう2点は、広々とした第1展示室に仲良く展示されています。展示室の右手方向へ、ちょうど奥に向かうにつれて密集するかのように置かれているのが、1044個の鵜飼のガラスの器です。そして左手方向にあるのが、まさに涙のような形をして天井から吊るされている、辻の551個もの「ガラスの涙」(もちろんガラス製。こぶし大ほどの大きさです。)でした。計1561個ものガラスのインスタレーション。この展示室では、左手の「ガラスの涙」の中に立って、鵜飼のガラスの器を眺めるのがおすすめです。ちょうど涙がポタポタと雨のように滴り、それを鵜飼の器が優しく受け止めているように見える。何と心憎い演出でしょう。辻は、これらの「涙」を「いつからだろう泣かなくなったのは?」と問いかけながら制作したそうですが、彼女の流した涙は、しっかりと鵜飼の器によって受け止められていました。(器の中の水は、辻の涙かもしれません。)涙を一人で流すことほど辛いことはない。しかしまた、流した涙を受け止めてくれる人がいることほど幸せなこともない。この「ガラスの涙」は、展覧会終了後、一個約5000円にて販売されるとのことですが、辻は涙を鑑賞者に分け与えることで、それを受け止める者との、まさに涙による繋がりを求めたのかもしれません。陽の光によって桃色にも変化する温かい「ガラスの涙」は、あくまでも人間の心の襞に触れるためのものでした。切なくも、たまらなく「癒される」美しさです。

この特集展示の後は、常設展示(「1950年代の美術」、「宮脇愛子」、「近現代の彫刻」などの特集展示。)を鑑賞しましたが、そちらはなかなかボリュームもあって、特に勅使河原蒼風と戸谷成雄、さらにはポンポンの彫刻が見応え満点でした。常設展示を含め、4月2日までの開催です。

*拙ブログにおける群馬県立館林美術館の紹介はこちらへ。
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
 (えみ丸)
2006-02-19 09:17:23
光や風によりその時々で違うって、ボーっと観ていたくなりますね

こういう自然の光を感じるものが芸術として展示されることに、

長いこと硬い彫刻を見慣れた目には不思議を感じます



常設展が私が行った時とは変わっているようだし、また行きたくなりました

 
 
 
もう一週間 (Tak)
2006-02-19 22:35:37
こんばんは。

ご一緒に観に行ってから

もう一週間が経ってしまいましたね。

早いな~



二つともこちらにTBさせてもらいました。

例の強力磁石作品も・・・
 
 
 
Unknown (はろるど)
2006-02-21 00:45:29
@えみ丸さん



こんばんは。TBとコメントをありがとうございます。



>光や風によりその時々で違うって、ボーっと観ていたくなりますね



そうですよね。

晴れている日はどうなのか、風が吹き荒れている日はどうなのか。

それぞれに表情を変えます。



>常設展が私が行った時とは変わっている



常設がとてもボリュームたっぷりで驚きました。

大変に見応えがありますよね。

やや彫刻に特化した展示も良かったです。

俗なお話で恐縮ですが、あの常設とこの企画で200円はとてもお安いです。





@Takさん



こんばんは。



そうですね、もう一週間たちました。

本当にありがとうございました。



強力磁石は思いがけない仕掛けで驚きましたよね。

早く言ってよ…、という感じでして…。
 
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