「琳派芸術2」 出光美術館

出光美術館
「琳派芸術2」
10/27-12/16



出光美術館で開催中の「琳派芸術2」へ行って来ました。

昨年春、抱一の生誕250年を記念して行なわれた「琳派芸術」展。

琳派好きの私も早々に出かけましたが、第二部の会期途中に東日本大震災が発生。その後の様々な影響により打ち切りとなってしまいました。

以来、約一年半、ここに復活。その名も「琳派芸術2」と題した展覧会が始まっています。

とは言え、内容に変更があるのもポイントかと。前回展の第二部、つまりは同じく江戸琳派に焦点を当てながらも、例えば草花図に注目するなど、構成を刷新。また他館からの借入れ作品を新たに加え、抱一周辺、前後までを視野に入れた展示となっていました。

まず冒頭は抱一の「風神雷神図屏風」から。言うまでもなく宗達から光琳、そして抱一へと受け継がれた、琳派変奏の代名詞としても知られる作品です。


酒井抱一「風神雷神図屏風」(左隻) 江戸時代 出光美術館

出光ではかつてこの三作を一同に並べ、比較するという意欲的な展示を行ったこともありましたが、今回は抱一作のみの出品です。

どうしてもオリジナルの宗達作と比べると分が悪くなるのかもしれませんが、これ一つで捉えれば実にコミカルで軽妙。それこそ神々を地に降ろし、親しみやすい姿へと置き換えています。

また変奏としては抱一の「八ツ橋図屏風」も同様です。


酒井抱一「八ツ橋屏風」(右隻) 江戸時代 出光美術館

こちらは根津美術館の「KORIN展」で元になる光琳のメトロポリタン本がやってきたことでも話題となりましたが、抱一は花群を半ば整理、緑青のたらしこみもたっぷりと用い、全体として温和な表情をとる作品へと転化させています。

しかしながら抱一の個性が発揮されているのは、やはり明確な元作を持たない、ようはオリジナルのモチーフでしょう。

青みがかった銀色の中で、可憐に、そして儚げに咲く紅白梅。「紅白梅図屏風」こそ、本展の抱一の屏風絵のハイライトに他なりません。


酒井抱一「紅白梅図屏風」(左隻) 江戸時代 出光美術館

ちなみにこの作品、屏風を折りたたむ際、紅梅の顔料の写る部分が通常と逆になることから、何かの裏絵ではないかという指摘もあるとか。

また一見、左右で同じように描かれているように思える梅も、紅梅は枝ぶりが強く、一方での白梅は流麗でかつシャープ。メリハリが付いている点も見逃せません。

また展示は前後しますが、光琳も得意とした燕子花を取り込んだ、文字通り「燕子花図屏風」も、抱一ならではの作品です。


酒井抱一「燕子花図屏風」 1801年 出光美術館

霞の漂う空間で円を描くように群れるカキツバタ、そののびる一枚の葉の上には静かに羽を休める蜻蛉、そして隠されるように潜む白い花。比較的、早い段階の作品ですが、琳派的なデザイン感覚云々ではなく、抱一一流の深い情緒性を味わうことが出来ました。

さて本展でははじめにも触れたように、草花図を通して、琳派の先駆けを紹介しているのも特徴です。そもそも伊年印の例を挙げるまでもなく、琳派の絵師は「草花図」のモチーフを好んで取り上げました。

ここで面白いのが、喜多川相悦の「四季草花図貼付屏風」(前期展示)と、伝光琳の「秋草図屏風」です。


喜多川相悦「四季草花図貼付屏風」 江戸時代 出光美術館

相悦作はそれまでの宗達工房作に見られるような草花を単体で大きくクローズアップすることなく、繊細なタッチで四季の草花を均等に描いています。


伝尾形光琳「秋草図屏風」 江戸時代 サントリー美術館(前期展示)

これに倣ったのが光琳です。葉を金泥で表すのはいかにも光琳風といった趣きがありますが、全体としては相悦作のような落ち着きある草花図を描いています。

また抱一以前で重要なのは、立林何げいと俵屋宗理、共に18世紀半ばから後半にかけて江戸で活躍した絵師です。


俵屋宗理「朝顔図」(部分) 江戸時代 細見美術館(前期展示)

中でも一押しは宗理の「朝顔図」(前期展示)、江戸初期に園芸種として人気を博した植物です。濃紺の朝顔からのびる細い蔓、そして葉の柔らかな質感、確かに抱一画を連想させる面がないでしょうか。

またこうした瀟洒な作風とあわせ、新奇で機知に富む題材を取り込んだのも江戸琳派。そこは何と言っても其一の独擅場です。


鈴木其一 「蔬菜群虫図」 江戸時代 出光美術館

「蔬菜群虫図」(後期展示)の例を挙げるまでもありませんが、今回はこうした其一画もいくつか展示されています。


鈴木其一「暁桜・夜桜図」(右幅) 江戸時代 黒川古文化研究所(前期展示)

また其一では一点、「暁桜・夜桜図」(前期展示)も是非挙げておきたいところです。この朝日を浴びて静かに咲く桜の花、古径や御舟といった近代日本画に通じるものがないでしょうか。


鈴木其一「暁桜・夜桜図」(左幅) 江戸時代 黒川古文化研究所(前期展示)

また闇夜にも注目。月光に照らされた桜は何とも趣き深く、全てシルエットとして描かれています。

銀を得意とした抱一画にも頻出する月夜の世界。夜の表現は江戸琳派の好んだ画題でもありますが、一見地味ながらも、そこには其一の豊かな才能が現れていました。

「もっと知りたい酒井抱一/玉蟲敏子/東京美術」

会期中、一度展示替え、巻き替えがあります。

「琳派芸術2」展出品リスト(PDF) 前期:10/27~11/18 後期:11/20~12/16

前期は残すところあと僅か、まだの方はお急ぎ下さい。

12月16日まで開催されています。

「琳派芸術2」 出光美術館
会期:10月27日(土)~ 12月16日(日)
休館:月曜日
時間:10:00~17:00 毎週金曜日は19時まで開館。
料金:一般1000(800)円、高・大生700(500)円、中学生以下無料(但し保護者の同伴が必要。)
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階
交通:東京メトロ日比谷線・千代田線、都営三田線日比谷駅、東京メトロ有楽町線有楽町駅、帝劇方面出口より徒歩5分。JR線有楽町駅国際フォーラム口より徒歩5分。
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