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「モネ展」 東京都美術館

東京都美術館
「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」 
9/19-12/13



東京都美術館で開催中の「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」のプレスプレビューに参加してきました。

パリ16区にあるマルモッタン・モネ美術館。モネが最期まで手元に留めておいた、言わばプライベートコレクションを所蔵することでも知られています。

そのマルモッタン美術館のコレクションによるモネ展です。また印象派の名の由来となった「印象、日の出」が21年ぶりに東京にやって来ています。

さて先に「手元に残した」というモネのコレクション。一例として挙げられるのが家族の肖像です。そもそも自然や風景を描き続けたモネは人物画をさほど残していませんが、妻や子らの肖像だけは亡くなるまで自らが保管していました。


左:クロード・モネ「トゥルーヴィルの海辺にて」 1870年 油彩、カンヴァス

「トゥルーヴィルの海辺にて」はどうでしょうか。モネが7歳年下のカミーユと正式に結婚した年に描かれた一枚。ノルマンディーの有名な避暑地、トゥルーヴィルに出かけた際の光景です。前景の二人の女性。左がカミーユでしょう。筆遣いは大胆。背後の人物たちは絵具を散らしたようなタッチで表されています。白とグレー、あるいはブルーのストライプのドレスでしょうか。こちらに目を向けてはポーズを構えています。ドレスに光が反射していました。モデルとの距離は近い。まさしく家族のスナップショットを切り取ったかのような作品でもあります。

作家モーパッサンはモネを「狩人」と称したそうです。由来はモネが好んでいた旅行。モネはさながら風景を狩るかの如く、各地を渡り歩いては、風景をキャンバスに写していきました。


左:クロード・モネ「雪の効果、日没」 1875年 油彩、カンヴァス

かの傑作「かささぎ」の例を挙げるまでもなく、雪景もモネが得意とした主題でもあります。「雪の効果、日没」です。セーヌ川沿いのアルジャントゥイユの町並み。地面にはかなり雪が積もっています。後ろを見やれば建物は夕陽で染まっていました。工場でしょうか。煙がのぼっています。モネの描いた郊外の風景画では珍しいモチーフでもあるそうです。

「印象、日の出」は展示室の奥にただ1点、ほかの作品とはやや距離を置いて展示されていました。舞台は朝もやのル・アーヴル。モネが19歳まで過ごした港町です。おそらくは町の地形を手にとるように把握していたことでしょう。ノルマンディー地方の風景は後にも多く描きましたが、本作は同地での最初期の風景画でもあります。


クロード・モネ「印象、日の出」 1872年 油彩、カンヴァス *展示期間:9月19日~10月18日

暗がりの中、やや強めのライトに浮かび上がる「印象、日の出」。水面はうっすら青、あるいは緑がかっていますが、思いの外にグレーが強い。空を見上げれば朝焼けです。丸い太陽が低い位置にのぼり、水面へ向かって朱色の光を伸ばしています。小舟が浮かび、人の姿も垣間見えました。海は凪、立ち上がる煙も僅かに傾くのみ。風は殆ど吹いていないのでしょう。背景には港町の雑多な景色が広がります。縦の線が効果的です。マストやクレーンが立ち並んでいました。

それにしても意外なほどに濃い朱色の太陽。夕景かと見間違えてしまいますが、かつては実際に夕方を描いたのではないかという指摘があったそうです。

その議論は2014年、マルモッタン美術館の調査によって一定の結論が得られました。まずは当時の写真や地図から場所を特定、さらに気象などの記録を参照します。煙の描写から風は東向きであることが分かったそうです。決定的なのは水門です。なかなか判別出来ないかもしれませんが、画面中央には水門があり、開いています。その開門時間と太陽の位置を比較検討。モネのサインまでも分析したそうです。結果、作品は1872年11月13日、朝の7時半頃を描いたことが判明しました。(この経緯は会場内のパネルでも丁寧に紹介されています。)


左:クロード・モネ「白いクレマチス」 1887年 油彩、カンヴァス

モネの愛したジヴェルニーの庭。睡蓮のシリーズが10点近く出ていました。そもそも庭造りに精を出してたモネ、よく知られるように当地の野の花だけではなく、日本の桜を植えるなどして花の庭を築き上げました。


中央:クロード・モネ「睡蓮」 1916-19年 油彩、カンヴァス

上の写真の「睡蓮」の3点はいずれもオランジュリー美術館を飾るための大装飾画のための準備作です。後年のモネならではの自在なタッチ。水面に映り込む柳はさも水にそよぐ水草のようです。そこへ白や紅色の花がぽっかりと浮かびます。また特徴的な紫の色面です。靄のように画面を覆っています。さらに晩年の「睡蓮」も出ていました。もはや形が色に溶けては交じり合っていきます。幻影的と言っても良いのではないでしょうか。モネが白内障を患っていたことはよく知られていますが、どういう形であれ、彼だけがなし得た一つの到達点だと言えるのかもしれません。


左:クロード・モネ「日本の橋」 1918-24年 油彩、カンヴァス

モネの最晩年の作品は15点ほどまとめて出ていました。「しだれ柳」に「日本の橋」、そして「バラの橋」。線は波打ってはのたうち回り、色は時に燃え上がるように輝いてもいます。表情は激しい。枯れません。もはや景色は混沌とし、あるいは錯綜しています。率直なところ、この頃のモネの作品は好き云々の判断は分かれるやも知れません。ただ今回のモネ展では一つのハイライトを成していました。


クロード・モネ「演劇界の小パンテオン」 1860年 鉛筆、グアッシュによるハイライト、茶色の紙

最初期、10代の頃に描いたカリカチュアや、モネ自身が収集した芸術品にも目を向けているのもポイントです。ドラクロワやブータンの水彩の小品、さらにはロダンの彫刻も出ていました。マルモッタンのコレクションを通してモネの生涯、ないしは同時代の芸術家たちへの視点を垣間見える展示とも言えそうです。


左:クロード・モネ「キスゲの花」 1914-17年 油彩、カンヴァス

最期に会場の情報です。会期早々、シルバーウィーク中も多くの人で賑わいました。一部、昼間の時間帯には最大で30~40分程度の入場待ちの列も発生したそうです。

館内の状況については公式サイトで随時更新、またツイッターアカウント(@monet2015_ntv)もこまめに発信しています。毎週金曜、及び10月18日までの土曜に設定されている夜間開館なども狙い目となりそうです。

[マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 巡回予定]
福岡市美術館: 2015年12月22日(火)~2016年2月21日(日)
京都市美術館: 2016年3月1日(火)~2016年5月8日(日)
新潟県立近代美術館:2016年6月4日(土)~2016年8月21日(日)

それにしてもモネの大規模な展示といえば、2007年に国立新美術館の開館を記念して行われた「大回顧展 モネ」を思い出します。

オルセーのコレクションを中心としたモネ100点で構成。さらに周辺の印象派画家を紹介するという大規模な展覧会でした。あのモネ展で出会った「日傘の女性」や「かささぎ」、それに「サン=ラザール駅」などの記憶は未だ忘れられません。


「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」展示風景

今回は全てマルモッタンのコレクション。モネ自体の作品は70点ほどです。先にも触れましたが、ほかにモネの収集した作家の小品などが加わります。

もちろん「印象、日の出」などの話題作もありますが、よりモネの画風の変化、ないし趣向の在り方などをシンプルに追った展示だという印象を受けました。


図版:クロード・モネ「ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅」 1877年 油彩、カンヴァス *展示期間:10月20日~12月13日

なお「印象、日の出」は10月18日までの期間限定の展示です。以降は「ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅」に入れ替わります。



12月13日まで開催されています。

「マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展」@monet2015_ntv) 東京都美術館@tobikan_jp
会期:9月19日(土) ~ 12月13日(日)
時間:9:30~17:30
 *入館は閉館の30分前まで。
 *毎週金曜日は21時まで開館。
 *9月19日(土)~10月18日(日)の金・土曜日、及び9月20日(日)~9月22日(火)、10月11日(日)は21時まで開館。
休館:月曜日。10月13日(火)、11月24日(火)。ただし9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)、11月2日(月)、11月23日(月・祝)は開館。
料金:一般1600(1400)円、大学生1300(1100)円、高校生800(600)円。65歳以上1000(800)円。中学生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *9/19(土)~9/30(水)は高校生無料観覧日(要学生証)
 *毎月第3水曜日は「シルバーデー」のため65歳以上は無料。
 *毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日のため、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住)は一般料金の半額。(要証明書)
住所:台東区上野公園8-36
交通:JR線上野駅公園口より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口より徒歩10分。京成線上野駅より徒歩10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。作品はいずれもマルモッタン・モネ美術館蔵。
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
クロード・モネ (dezire)
2015-11-24 12:21:25
こんにちは。
私もマルモッタン・モネ美術館所蔵品のモネ展を見てきましたので、興味を持って読ませていただき勉強になりました。
若き日のモネから、晩年の作品までモネの絵画の全体像が見られて良かったと思いました。
モネの代表作『印象 -日の出-』と『サン・ラザール駅』はモネにしか描けない魅力を満喫できました。晩年のモネは抽象表現主義絵画に共通するを身を持って体験できました。
私はブログで、モネの絵画の印象派的面と前衛的面について整理してみました。読んでいただけると嬉しいです。ご意見・ご感想などコメントをいただける感謝致します。
 
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