「フランシス・ベーコン展」 記者発表会

東京国立近代美術館で開催予定のフランシス・ベーコン展の記者発表会へ行ってきました。


「フランシス・ベーコン展」記者発表会(11/22。東京国立近代美術館。)

アイルランド生まれの芸術家、フランシス・ベーコン(1909-1992)。欧米ではピカソと並び、20世紀を代表する画家と称されるものの、日本では決して知名度が高いとは言えません。

それもそのはず、国内にあるベーコンの絵画は全部で5点のみ。しかも大規模な回顧展はベーコンの生前、1983年に開催されて以来、一度も行われたことがありません。


フランシス・ベーコン(1909-1992)

そうしたベーコンの受容に変革をもたらすであろう展覧会。いよいよ30年ぶりに来春、東京国立近代美術館(豊田市美術館へ巡回。)で開催されます。

「フランシス・ベーコン展」@東京国立近代美術館(2013/3/8~5/26)

しかも没後としてはアジアで初めて。イギリス、ドイツ、アメリカ、オーストラリアなどの美術館、またはあまり出品されることのない個人のコレクション、あわせて約35点強が一堂に会することになりました。

さて一言に回顧展とはいえども、単純に時系列で画業を追うわけではないのも重要なポイントです。キーワードは「身体」。ベーコンの作品において極めて重要な身体性に着目しています。

[展覧会の構成]
1.移りゆく身体
2.捧げられた身体
3.物語らない身体
4.エピローグ:ベーコンに基づく身体


というわけで以下、担当の保坂健二朗学芸員の解説に沿って、展覧会の内容を簡単にまとめてみます。


ベーコンのアトリエ

まずは冒頭から。1940年代、第二次大戦の悲惨な状況下において、人間の存在をはかなく、また一定の場所に留まらない『移りゆく身体』と捉えたベーコンは、この時代に言わば亡霊とも受け取れる作品を発表します。


ベーコンの「ピカソ的な身体表現」

その移ろいは極めて多様、一例を挙げればモチーフにおける『人間と動物』、また『リアルとフィクション』、それに『彼岸と此岸』という点ではないでしょうか。


「人物による習作」1949年 ヴィクトリア・ナショナル・ギャラリー

具体的には「人物による習作」(1949)。キャンバス上に開くカーテンはまさに彼岸と此岸の間、それを身体が行き来する様が描かれています。


「肖像のための習作」1949年 シカゴ現代美術館 

また檻のような構造体を同じく亡霊のような身体が消えゆく「肖像のための習作」(1949)でも同様です。


右:「叫ぶ教皇の頭部のための習作」1952年 イエール・ブリティッシュ・アート・センター
左:エイゼンシュテイン監督「戦艦ポチョムキン」から


ちなみにこうした「叫び」ともとれるように大きく口をあけた人物。例えばエイゼンシュテインの映画、「戦艦ポチョムキン」で銃を向けられて叫ぶ女性の姿を引用しているとか。


ベーコンのスタジオから発見されたスクラップ『物質化の現象』より

このようにベーコンは制作において写真や映像をかなり参照しています。本展ではそうしたスクラップ資料もあわせて紹介されるそうです。


「ファン・ゴッホの肖像のための習作6」1957年 アーツ・カウンシル

ちなみに展示の一つハイライトであるのが「スフィンクス」のシリーズ。ベーコンは50年代後半にはゴッホのイメージを取り込み、色を次第に回復させていきますが、人間と神、また男性と女性の間にある「スフィンクス」を重要なモチーフとしました。


右:「スフィンクス ミュリエル・ベルチャーの肖像」1979年 東京国立近代美術館 他

本展ではその「スフィンクス」を一挙4点公開。同時に4点が並ぶのは世界で初めてだそうです。


トリプティックという形式のイメージソース

さてベーコン画を語る上で重要なキーワードを挙げましょう。それが『トリプティック』、つまりは一般的にキリスト教の教会飾りに用いられることの多い三連祭壇画です。


「ジョージ・ダイアの三習作」1969年 ルイジアナ近代美術館

ベーコンは雑誌の連続するワンシーンなどをモチーフへ取り込み、こうした三幅対の絵画をいくつか描きました。

その最も重要な作品と言えるのが、ニューヨーク近代美術館の「三幅対」(1991)に他なりません。


「三幅対」1991年 ニューヨーク近代美術館

実はこの作品、同館がコレクションする際に他のベーコンの絵画を売却したとも言われているとか。もちろんこのベーコンの描いた最晩年、最後の『トリプティック』も来日します。


インテリア・デザイナーとしてのベーコン

ところでベーコンについて興味深いエピソードを一つ。それは彼が画家になる前、家具デザイナーを志していたということです。

それらはコルビュジエの影響が強かったとされていますが、ベーコン画における室内空間の描写にも反映した可能性があるとの指摘もなされています。


写真(マイブリッジ)とベーコン

またマイブリッジと呼ばれる連続写真から人体の運動を分析、抽出して絵画に起こしたことも。晩年は構造が複雑、ねじれた空間も複数登場し、人物同士の関係も曖昧になっていきました。

最後にベーコンの作品の特徴付ける保坂学芸員の言葉をご紹介。

「人物像と、神経組織に対して、より暴力的に、そして痛烈に、もたらす試み。」

人間を痛みを持って知ろうとする試み。それは見る側の感性、また神経をも強く刺激します。別の言い方をすれば極めて主体的に実存へ向き合った画家とも言えるのかもしれません。


ペーター・ヴェルツ

なお展覧会ではエピローグとしてベーコンにインスピレーションを受けて制作されたダンスの映像もあわせて紹介。ベーコン画の身体性と前衛的ダンスの関係を探る試みも注目されそうです。

初めにも触れたように海外では非常に高い評価を受けています。とりわけ作品の評価額は高騰、オークションでは数千万ドルで作品が落札されたこともありました。また2008年には回顧展がテート、プラド、メトロポリタンを巡回。それぞれ約25万名もの観客を集めました。


「三つの人物像と肖像」1975年 テート・ギャラリー

剥き出しの人間、言わばベールを全て取っ払った身体を見つめたベーコン。時に目を背けたくなるほどに奇怪、そして肉感的でなおかつ、恐怖を覚えるほどの残酷な感情を見て取れないでしょうか。

しかしながら今こそそれから目を背けることは出来ないはず。図版でも一度見たら忘れられない強烈なイメージです。実際の絵画と向き合った時に受ける衝撃は如何なるものか。それを半ば楽しみにしながら、来春の開幕を心待ちにしたいと思います。

フランシス・ベーコン展は2013年3月8日に東京国立近代美術館ではじまります。

*東京展終了後、豊田市美術館(2013/6/8~9/1)へと巡回。展示は同一内容。



「フランシス・ベーコン展」 東京国立近代美術館
会期:2013年3月8日(金)~5月26日(日)
時間:10:00~17:00(金曜日は20:00まで) *入館は閉館30分前まで
休館:月曜日(但し、3月25日、4月1日、4月8日、4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)は休館。
主催:東京国立近代美術館、日本経済新聞社
会場:東京国立近代美術館
後援:ブリティッシュ・カウンシル、アイルランド大使館ほか
料金:一般1500(1300)円、大学生1100(900)円、高校生700(500)円。中学生以下無料
 *( )は前売券。2013年1月8日から3月7日まで販売予定。

*関連リンク(3/7のプレビューに参加してきました)
「フランシス・ベーコン展」@東京国立近代美術館
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