「あなたに見せたい絵があります。」 ブリヂストン美術館

ブリヂストン美術館
「ブリヂストン美術館開館60周年記念 あなたに見せたい絵があります。」
3/31-6/24



ブリヂストン美術館で開催中の「あなたに見せたい絵があります。」のプレスプレビューに参加してきました。

来場者にそっと語りかけるようなタイトル、何とも優し気で温かみのある言葉ではないでしょうか。

ずばり本展は、ブリヂストン美術館が「見せたい絵」を、出来うる限りに展示した、極上の総コレクション展に他なりません。

展覧会の構成

1章 自画像
2章 肖像画
3章 ヌード
4章 モデル
5章 レジャー
6章 物語
7章 山
8章 川
9章 海
10章 静物
11章 現代美術


切り口は上記の通り、極めて簡潔な11のテーマに則っています。ブリヂストン美術館を所管する石橋財団所蔵の全2500点の作品から、まさに選りすぐりの109点が一同に紹介されていました。


右:エドゥアール・マネ「自画像」(1878-79年) ブリヂストン美術館
左:ポール・セザンヌ「帽子をかぶった自画像」(1890-94年頃) ブリヂストン美術館


さて見慣れたブリヂストン美術館のコレクションではありますが、それに加えて福岡の石橋美術館の作品が加わっている点も見逃してはなりません。


雪舟「四季山水図」(15世紀) 石橋財団石橋美術館

ブリヂストン美術館の作品が84点に対し、石橋美術館の作品は25点ほど登場しています。うち雪舟の「四季山水図」は東京で約6年ぶりの公開です。真筆では最も若い頃に描いたとされ、中国絵画の影響も色濃く残っている作品ですが、まさかブリヂストンでこうした日本絵画を見られるとは思いませんでした。


中央:ピエール=オーギュスト・ルノワール「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」(1876年) ブリヂストン美術館

さて総コレクション展とは言えども、単なる名品展ではないのも大きな特徴かもしれません。

創立者である石橋正二郎は当初、旧知の画家である坂本繁二郎のすすめによって、青木繁の作品を中心に、日本近代洋画のコレクションを形成していきました。

展示では石橋美術館の青木繁作品も数点出品されています。

それに展示作品同士の関連も重要です。


右:青木繁「わだつみのいろこの宮」(1907年) 石橋財団石橋美術館

青木は例えば「わだつみいろこの宮」にて、日本神話の主題を取り込みましたが、同じく古典に取材した藤島武二の「天平の面影」を並べることによって、その物語性を問う内容となっています。


左:安井曾太郎「水浴裸婦」(1914年) 石橋財団石橋美術館

また3章の「ヌード」ではルノワール「すわる水浴の女」と安井曾太郎の「水浴裸婦」があわせて展示されていますが、ここから渡仏時の安井が如何にルノワールから影響を受けていたのかを知ることが出来るのではないでしょうか。

それに5章の「レジャー」におけるブーダンの「トルーヴィル近郊の浜」とマネの「仮装舞踏会」の対比も意味があります。


左:ウジェーヌ・ブーダン「トルーヴィル近郊の浜」(1865年) ブリヂストン美術館

それはずばりレジャーの誕生です。まさに二点の描かれた19世紀末こそ、海辺と劇場という自然と都市の中でのレジャーが生み出された時期に他なりません。

さらにもう一例を挙げると9章の「海」におけるモネとクレーの比較です。


中央:クロード・モネ「黄昏、ヴェネツィア」(1908年頃) ブリヂストン美術館

モネの「黄昏」といえば朱色に染まるヴェネツィアの景色を描いた名作ですが、それが意外にもクレーの抽象的な「島」のイメージに重なります。


パウル・クレー「島」(1932年) ブリヂストン美術館

このように普段、一点一点、頭の中で別々に見てしまう作品を関連づけることで、思わぬ発見を引き出そうとするのが、展覧会の大きな趣旨でもありました。

ちなみに2011年度にブリヂストン美術館へ収蔵されたカイユボットと岡鹿之助の作品が初公開されています。


ギュスターヴ・カイユボット「ピアノを弾く若い男」(1876年) ブリヂストン美術館

とりわけカイユボットの「ピアノを弾く若い男」は魅惑的です。どちらかと言えば画家よりも印象派のスポンサーとして有名なカイユボットですが、ここでは逆光を巧みに取り込み、透明感にも溢れた室内風景を描き出すことに成功しています。これは見事でした。

なお今回は作品とともキャプションにも注目です。実は今回、小学校6年生でも分かりやすいような150字の解説が一点一点に付いています。幸いなことに同館は中学生以下無料です。これを機会にファミリーでの鑑賞というのも良いかもしれません。

約30ほどのタイトル候補の中からこの「あなたに見せたい絵があります。」が選ばれたそうです。洋の東西をあわせ、今、東京で最も近現代絵画を楽しめる展覧会ではないでしょうか。

6月24日まで開催されています。

*以下のエントリに次回の「ドビュッシー展」の記者発表会についてまとめてあります。



「ドビュッシー展」(ブリヂストン美術館)記者発表会(拙ブログ)

「ブリヂストン美術館開館60周年記念 あなたに見せたい絵があります。」 ブリヂストン美術館
会期:3月31日(土)~6月24日(日)
休館:4/15(日) 、4/23(月)、5/28(月)
時間:10:00~18:00 *毎週金曜日は20:00まで。
住所:中央区京橋1-10-1
交通:JR線東京駅八重洲中央口より徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口から徒歩5分。東京メトロ銀座線・東京メトロ東西線・都営浅草線日本橋駅B1出口から徒歩5分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
意外も雪舟 (いわた)
2012-04-22 13:13:38
が、見られ、サントリーのも楽しみになりました。
改めてブリジストン、石橋の所蔵作品が広範囲に充実してるなと感じられました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2012-04-22 19:28:58
@いわたさん

こんばんは。

>サントリーのも楽しみ

そちらにも雪舟が出ていましたね。早く行かなくては!

>広範囲に充実してるな

絵を見たくなると必ず西美の常設かここブリヂストンへ行くことにしています。
素晴らしいコレクションですよね。
 
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