「ドビュッシー展」(ブリヂストン美術館)記者発表会

生誕150年を迎えた音楽家、クロード・ドビュッシーの芸術を、美術の観点にスポットを当てて紹介します。「ドビュッシー 音楽と美術」展の記者発表会へ参加してきました。



私自身、クラシックが好きなこともあり、音楽と美術をクロスオーバーするような展覧会を望んだりしていましたが、それがいよいよ実現する時がやって来たのかもしれません。

それが今年の夏、東京・ブリヂストン美術館で行われる「ドビュッシー 音楽と美術」展です。


左:作者不詳「ショーソンとルロールのそばでピアノを弾くクロード・ドビュッシー」1893年 オルセー美術館
右:バシェ「クロード・ドビュッシーの肖像」1885年 オルセー美術館


言うまでもなくドビュッシーは、19世紀末から20世紀の初頭のフランスを代表する作曲家で、時に「印象派」とも称されますが、本来的には象徴主義の芸術家に位置しています。


左:ドニ「選ばれし乙女」1893年 モーリス・ドニ美術館
右:ドニ「ミューズたち」1893年 オルセー美術館


ドビュッシーの音楽には文学や美術の引用も多く、画家ではナビ派、とりわけドニらと交流を重ねてきました。

実際にドニはドビュッシー初期の代表作「選ばれし乙女たち」や、オペラ「ペレアスとメリザンド」の楽譜の表紙を描いています。


左:ドニ「ペレアスとメリザンド」1892年 モーリス・ドニ美術館
右:ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」1902年 個人蔵


また「乙女たち」ではロセッティの詩を引用していますが、それにおける世紀末の女性像に特徴的な「神に召される少女」は、ラファエロ前派の影響も色濃く反映されているそうです。

それにドビュッシーはこの時代の流行でもあったアール・ヌーヴォーやジャポニスムにも強い関心がありました。

一例としては傑作として名高い交響詩「海」です。楽譜表紙には北斎の「神奈川沖浪裏」が引用されています。また彼は日本の文鎮に「ペレアス」に登場するアルケルの名を与え、生涯愛用していました。


左:ルノワール「ピアノに向かうイヴォンヌとクリスティーヌ」1897年 オランジュリー美術館
右:ドニ「イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像」 1897年 オルセー美術館


さらにドビュッシーはサロンを通じ、同時代の美術、例えば前述のドガにシャヴァンヌ、カリエール、またヴュイヤールらにもシンパシーをいだきます。


左:メイヤー「ニジンスキー」(写真)1912-13年 オルセー美術館
右上:メイヤー「ヴェールをもち、右を向いた踊り子の半身」(写真)1914年 オルセー美術館
右下:「ビスティッチの画家 女を追いかけるサテュロス」(陶器)前430年頃 ルーヴル美術館


その他にもドビュッシーの古代神話への関心、またモネとの親和性、それにマラルメとの関連などがポイントとなりますが、ようは「連想ゲーム」(島田館長談)ならぬ、ドビュッシーにまつわる美術家たちの作品を集めたのが、このドビュッシー展というわけです。

【展覧会の構成】

第1章 ドビュッシーの生涯
第2章 「選ばれし乙女」
第3章 美術愛好家との交流
第4章 アールヌーヴォーとジャポニスム
第5章 古代への回帰
第6章 劇場作品1「ペレアスとメリザンド」
第7章 劇場作品2「聖セバスティアンの殉教」と「遊戯」
第8章 音楽と文学
第9章 自然 霊感の源泉:「夜想曲」、交響曲「海」、「忘れられた小歌」
第10章 新しい芸術へ


劇音楽については2章使って美術との関連を探るのも重要かもしれません。また最終章ではドビュッシーが後の世に与えたであろう美術についても触れています。


左:バクスト「聖セバスティアンの殉教の舞台装飾案」1910年 個人蔵
右:ドビュッシー「おもちゃ箱」フランス国立図書館


なお出品は絵画、工芸、資料などを含め、総計150点にも及びます。

また重要なのは本展がオルセーとオランジュリー美術館との共同企画ということです。実は現在、オランジュリーではこのドビュッシー展が開催中(2/22~6/11)ですが、会期一ヶ月で約9万名もの人々が観覧に訪れています。



日本での開催はブリヂストン美術館だけです。また作品もパリの両美術館より約40点ほどやってきます。その中にはオルセー美術館が2010年に新たに収蔵した作品なども含まれるそうです。期待が持てるのではないでしょうか。

【展覧会の見どころ】

・ドビュッシー生誕150年記念
・パリと東京の2会場のみでの開催
・オルセー美術館、オランジュリー美術館との共同開催
・ドビュッシーと美術愛好家
・ドビュッシーと日本美術
・ドビュッシー愛蔵の美術品も紹介


ちなみにパリでは日本からの出品がありません。つまり現在のオランジュリーの展示をよりパワーアップさせたのが、ブリヂストン美術館の「ドビュッシー展」なのかもしれません。

さて関連の情報です。お馴染み「土曜講座」の他、今回は音楽家の展覧会ということで、美術館ホールでのミニコンサートも予定されています。

土曜講座「ドビュッシー 音楽と美術」

 7月14日(土)グザヴィエ・レイ(オルセー美術館学芸員)
 「ドビュッシーの音楽の絵画的な響き」(仮題)
 7月21日(土)ジャン=ミシェル・ネクトゥー(フランス国立科学研究所学芸員)
 「象徴主義のただ中で:ドビュッシー、音楽、絵画、詩」(仮題)
 7月28日(土)新畑泰秀(石橋財団ブリヂストン美術館学芸課長)
 「ドビュッシー、印象派と象徴派のあいだで」
 8月4日(土)賀川恭子(石橋財団ブリヂストン美術館学芸員)
 「ドビュッシーと美術愛好家」

レクチャー&コンサート

 8月12日(日)/26日(日)鈴木大介(ギター)
 「ドビュッシーと近代フランス音楽を奏でる」
 9月2日(日)/9日(日)カルテット演奏
 「ドビュッシー弦楽四重奏曲ト短調op.10」

*各回とも14時から。聴講料400円。(会場:ブリヂストン美術館ホール、定員:先着順130名、聴講券はブリヂストン美術館窓口にて事前に発売。)

また展覧会にあわせ、大手町の日経ホールでは、コンサート「ドビュッシー、作品とその魅力」が開催されます。



「ドビュッシー、作品とその魅力」
ピアノ:フランソワ・シャプラン
講師:ジャン=ミシェル・ネクトゥー
日時:7月16日(月・祝) 14:00 ~16:20
会場:日経ホール(東京都千代田区大手町1-3-7 日経ビル3F)
チケット:全席指定3000円(4月10日より発売)

メモリアルイヤーということで、コンサートの演目にのることも多いドビュッシーですが、レクチャーとあわせたスタイルは異色ではないでしょうか。こちらにも注目が集まりそうです。

最後に展覧会の概要です。

ブリヂストン美術館開館60周年記念 オルセー美術館、オランジュリー美術館共同企画
「ドビュッシー、音楽と美術―印象派と象徴派のあいだで」
会期:2012年7月14日(土)~10月14日(日)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日(ただし7/16 、9/17、10/8は開館)
主催:オルセー美術館、オランジュリー美術館、石橋財団ブリヂストン美術館、日本経済新聞社
会場:石橋財団ブリヂストン美術館(東京都中央区京橋1-10-1)
料金:一般1500円(1300円)、65歳以上シニア1300円(1100円)、大・高生1000円(800円)、早割ペア券2000円 *カッコ内は前売及び15名以上団体料金。
交通 :JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。

お得な早割ペア券が2000円で発売中です。狙い目です。


左:クロス「黄金の島」1891年 オルセー美術館
右:マネ「浜辺にて」1873年 オルセー美術館


オランジュリー会場では睡蓮の間でコンサートが開催された他、館内にて音楽をスポットとして流す試みも行われているそうです。ブリヂストン美術館では検討段階とのことですが、音声ガイド以外でも何らかの音楽的演出があるやもしれません。


展覧会の構成について解説するブリヂストン美術館の島田館長

展覧会公式サイトが4月4日にオープンしました。出品作他、各章毎の解説も掲載されています。是非ともご覧ください。

「ドビュッシー、音楽と美術―印象派と象徴派のあいだで」公式サイト

これまであまりなかった音楽と美術を行き来する本格的な展覧会、クラシックファンの立場としても大いに期待したいと思います。

ドビュッシー展はブリヂストン美術館で7月14日に開幕します。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
はじめまして (いわた)
2012-04-13 20:52:38
インカ展のチケット当選者です(笑)

私、たまたま期間中にパリに仕事で居りまして、週末にオランジェリーへ行って観てきました。
浮世絵もあり、また、印象派の作品も色々と。
ブリジストンで再会楽しみです!
 
 
 
Unknown (はろるど)
2012-04-17 22:14:17
@いわたさん

こんばんは。わざわざコメント下さりどうもありがとうございます。

>期間中にパリに仕事で居りまして、週末にオランジェリーへ行って観てきました。

素晴らしいですね!
東京はブリヂストン美術館のコレクションを交えての「強化版」になるそうです。
楽しみですね!
 
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