「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」 森美術館

森美術館
「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」
2020/7/31~2021/1/3



日本を代表する6名の現代美術家の活動を紹介する展覧会が、森美術館にて開催されています。

それが「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」で、草間彌生、李禹煥(リ・ウファン)、宮島達男、村上隆、奈良美智、杉本博司らの作品がそれぞれ個展の形で公開されていました。


村上隆「Ko2ちゃん(プロジェクト Ko2)」 1997年

冒頭はスーパーフラットのシリーズでも世界的に注目を集める村上隆の展示で、比較的早い段階の「ヒロポン」や「マイ・ロンサム・カウボーイ」とともに、今年制作された「チェリーブロッサム フジヤマ JAPAN」や「ポップアップフラワー」などが合わせて並んでいました。


村上隆 展示風景

このように「STARS展」では、各作家が「国際的に認められるようになった時期」(解説より)と最新作とが並置されるのが特徴で、新旧の対比や融合も見どころとなっていました。


李禹煥「対話」 2019年、「対話」 2020年

強烈なエネルギーが迸るような村上の展示とは一転し、白とグレーの小石を敷き詰め、瞑想を誘うような静謐な空間を築き上げたのが、いわゆるもの派の作家として知られた李禹煥でした。


李禹煥「関係項」 1969/2020年

ここではまるで太古の化石のような石の「関係項」を起点に、ステンレスの棒と石を組み合わせた「関係項ー不協和音」、さらには近年の絵画シリーズの「対話」が互いに響き合うように展示されていて、全てが1つのインスタレーションを築いているかのようでした。


李禹煥 展示風景

石の感触を足裏で確かめながら作品の合間を縫って歩いていると、屋内のホワイトキューブであるにも関わらず、いつしか自然の中に設えられた祈りの場にいるような錯覚に囚われました。端的に絵画と彫刻だけでなく、空間全てが李の作品と言って良いのかもしれません。


草間彌生 展示風景

続く草間彌生では、1960年頃の初期作品より1990年台のベネチア・ビエンナーレに出品した「天上よりの啓示」から、最新の絵画である「わが永遠の魂」などが展示されていて、網目や突起などの造形から抽象と具象を行き来しつつ、現在の「生命の讃歌」(解説より)へと至った作風の変遷を辿ることができました。


草間彌生「芽生え」 1992年

1992年の「芽生え」は黒い地のキャンバスに緑色の線が網目模様のように広がった作品で、抽象的ながらも自然の緑の息吹を表しているように見えました。ひたすら反復しして増殖しつつも、震えるような線の揺らぎも興味深いところかもしれません。


奈良美智 展示風景

子どもをモチーフとした肖像画などで人気の奈良美智は、絵画やドローイングだけでなく、家の形をした大型のインスタレーションなどを展示していました。「STARS」展の中で最も密度の濃い内容だったかもしれません。


奈良美智 展示風景

またCDや書籍、こけしに人形などの玩具といった自らのコレクションまでも公開していて、奈良の多様なカルチャーへの関心の在り処とともに、作品のインスピレーションの源泉を伺い知ることができました。


杉本博司「時間の庭のひとりごと」 2020年 (30分2秒)

この他、宮島達男によるLEDを用いたプール状の大型インスタレーション「時の海―東北」プロジェクト(2020 東京)」や、杉本博司が江の浦測候所を舞台に初めて映画作品として制作した「時間の庭のひとりごと」も見どころといえるかもしれません。


杉本博司 展示風景

さて今回の「STARS展」で私が最も見応えがある感じたのは、アーティストの活動歴や海外で開催された日本の現代美術展の歴史を辿ったアーカイブ展示でした。

いずれも展覧会のカタログや写真、批評などを細かに紹介していて、テキストや資料などが想像以上に充実していました。(アーカイブ展示のみ撮影不可)ひょっとすると全ての展示の中でアーカイブを一番時間をかけて見ていたかもしれません。


サムソン・ヤン(楊嘉輝)「音を消した状態#22:音を消したチャイコフスキー交響曲第5番」 2018年 (45分)

「STARS展」に続くMAMコレクションのサムソン・ヤン(楊嘉輝)の映像、「音を消した状態#22:音を消したチャイコフスキー交響曲第5番」も面白い作品ではなかったでしょうか。タイトルのごとくオーケストラが一心不乱にチャイコフスキーの第5交響曲を演奏していましたが、楽器に消音するように仕掛けられていて、一切の楽音が鳴り響きませんでした。ただひたすらにメンバーの息遣いや楽器の擦れるような音のみが聞こえていて、微かにリズムや音楽の骨格が浮き上がるかのようでした。

新型コロナウイルス感染症に伴う情報です。窓口で予約不要の当日券を購入することが可能ですが、「3密」回避の観点より、日時指定制のチケットをオンラインで発売しています。


オンラインチケットには特別料金が設定されていて、一般2000円が1200円に割引されるなど大変にお得です。事前にオンラインからチケットを予約されることをおすすめします。



年明けまでの会期も残り少なくなってきました。2021年1月3日まで開催されています。

「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」 森美術館@mori_art_museum
会期:2020年7月31日(金)~2021年1月3日(日) *会期変更。
休館:会期中無休。
時間:10:00~22:00
 *火曜日は17時で閉館。
 *9月22日(火・祝)、11月3日(火・祝)、12月29日(火)は22時まで開館。
 *12月5日(土)、6日(日)、12日(土)、13日(日)、19日(土)、20日(日)、26日(土)~1月3日(日)は9時から開館。
  *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般2000円、学生(高校・大学生)1300円、子供(4歳~中校生)700円、65歳以上1700円。
 *オンラインチケット(日時指定チケット)の特別割引料金あり。一般1200円、学生900円、子供700円、65歳以上1100円。
住所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅より地下コンコースにて直結。都営大江戸線六本木駅より徒歩10分。都営地下鉄大江戸線麻布十番駅より徒歩10分。
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