都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」 森アーツセンターギャラリー 11/12
森アーツセンターギャラリー(港区六本木)
「レオナルド・ダ・ヴィンチ展 -直筆ノート『レスター手稿』日本初公開- 」
9/15~11/13
マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長が個人で所有する、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)の「レスター手稿」。その全18枚、計78頁を、日本で初めて公開するという貴重な展覧会です。会期末の土曜日、館内は想像以上の混雑ぶりでしたが、人混みをかきわけて、稀有な総合芸術家ダ・ヴィンチの、恐るべき探求力と発想力の結晶に触れてきました。
手稿は随分と良い状態にて残されています。ノートサイズの、決して大きいとは言えない手稿の両面には、鏡面文字と呼ばれる「逆さ文字」が、あまりにも精緻に、そして几帳面にビッシリと書かれています。当然ながら私は、それを読み取るのが不可能なので、手稿上に描かれた様々な素描に目がいくわけですが、それがこの展覧会の一番の見所でもあります。地球と月と太陽の位置関係を表したものや、川における流れの変化を示した図など、どれも文字のサイズと同じくらい小さく表されていますが、もちろんそれらは、デッサンとして見るべき価値のある図でもあります。簡潔明瞭に、時には試行錯誤の痕跡すら残しながら示されるダ・ヴィンチの思索。それは「天才の頭脳」とも称されるようですが、むしろ私には、飽くなき探究心と発想力に支えられた、精密で整然とした論理のパズルに見えました。ある一定の常識や情報にとらわれることなく、宇宙にまで広がるダ・ヴィンチの無限の思考。それが約500年の時を超えて、さらに価値を増す形で、小さな一枚一枚の手稿にハッキリと凝縮され残されている。これはまさに奇跡です。
今回の展覧会でも特に優れている点は、このようなダ・ヴィンチの貴重な思索を、半ばエンターテイメント的に演出して、会場を盛り上げる形にて展示していることです。確かに、この日の混雑を見ても、ダ・ヴィンチの思索とゆっくり対面することはなかなか叶いませんが、ただ単純に手稿をズラッと並べるのではなく、ダ・ヴィンチが考案した飛行機の模型や様々な実験器具を模型にて展示、または再現することで、さらに手稿のイメージを膨らませることが出来ます。一見地味にも見えてしまう手稿を、分かりやすく面白い形で提示すること。暗闇の中で手稿にジッと見入る子供たち。彼ら彼女らは、その後、会場の飛行機の模型へ目を転じた時、初めてダ・ヴィンチのイメージを具現化させるのではないでしょうか。森美術館ならでは巧みな雰囲気作りです。
今回は、西洋美術がご専門の池上英洋さん(ブログ「池上英洋の第弐研究室」)とその学生さんによる、ダ・ヴィンチの手稿に関するご解説を聞きながら、じっくりと時間をかけて鑑賞してきました。改めまして、貴重な時間をさいていただいてのお話、どうもありがとうございました。(この日の池上さんのレクチャーは、Takさんのブログに詳しく掲載されています。)
「レオナルド・ダ・ヴィンチ展 -直筆ノート『レスター手稿』日本初公開- 」
9/15~11/13
マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長が個人で所有する、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)の「レスター手稿」。その全18枚、計78頁を、日本で初めて公開するという貴重な展覧会です。会期末の土曜日、館内は想像以上の混雑ぶりでしたが、人混みをかきわけて、稀有な総合芸術家ダ・ヴィンチの、恐るべき探求力と発想力の結晶に触れてきました。
手稿は随分と良い状態にて残されています。ノートサイズの、決して大きいとは言えない手稿の両面には、鏡面文字と呼ばれる「逆さ文字」が、あまりにも精緻に、そして几帳面にビッシリと書かれています。当然ながら私は、それを読み取るのが不可能なので、手稿上に描かれた様々な素描に目がいくわけですが、それがこの展覧会の一番の見所でもあります。地球と月と太陽の位置関係を表したものや、川における流れの変化を示した図など、どれも文字のサイズと同じくらい小さく表されていますが、もちろんそれらは、デッサンとして見るべき価値のある図でもあります。簡潔明瞭に、時には試行錯誤の痕跡すら残しながら示されるダ・ヴィンチの思索。それは「天才の頭脳」とも称されるようですが、むしろ私には、飽くなき探究心と発想力に支えられた、精密で整然とした論理のパズルに見えました。ある一定の常識や情報にとらわれることなく、宇宙にまで広がるダ・ヴィンチの無限の思考。それが約500年の時を超えて、さらに価値を増す形で、小さな一枚一枚の手稿にハッキリと凝縮され残されている。これはまさに奇跡です。
今回の展覧会でも特に優れている点は、このようなダ・ヴィンチの貴重な思索を、半ばエンターテイメント的に演出して、会場を盛り上げる形にて展示していることです。確かに、この日の混雑を見ても、ダ・ヴィンチの思索とゆっくり対面することはなかなか叶いませんが、ただ単純に手稿をズラッと並べるのではなく、ダ・ヴィンチが考案した飛行機の模型や様々な実験器具を模型にて展示、または再現することで、さらに手稿のイメージを膨らませることが出来ます。一見地味にも見えてしまう手稿を、分かりやすく面白い形で提示すること。暗闇の中で手稿にジッと見入る子供たち。彼ら彼女らは、その後、会場の飛行機の模型へ目を転じた時、初めてダ・ヴィンチのイメージを具現化させるのではないでしょうか。森美術館ならでは巧みな雰囲気作りです。
今回は、西洋美術がご専門の池上英洋さん(ブログ「池上英洋の第弐研究室」)とその学生さんによる、ダ・ヴィンチの手稿に関するご解説を聞きながら、じっくりと時間をかけて鑑賞してきました。改めまして、貴重な時間をさいていただいてのお話、どうもありがとうございました。(この日の池上さんのレクチャーは、Takさんのブログに詳しく掲載されています。)
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )
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今日は鑑賞会にご参加くださって、ありがとうございました。また、素晴らしいレポートを早速書かれてすごいですね!!
お二人がいるからちょっと気を抜いたレポになってしまいましたが、TBとリンクをさせて頂きます。
また、鑑賞会でお会いしましょうね!!
今後もどうぞよろしく。
初めて知りました・・・
恐るべし。
展望台効果!?
ちょっとアート鑑賞じゃなくなってるかもしれない内容ですが(^ ^;
それにしても、はろるどさん達が観に行かれたときは大変な混雑だったのこと、レスター手稿の部屋は暗すぎて足元とか危なくなかったですか??
私の行った時は後戻りも自由な位の人の入りでしたから、入場してすぐにこの部屋に向かいましたが(→超短気)明るさの差に、ちょっとこけそうになりました(笑)
こんばんは。
>お二人がいるからちょっと気を抜いたレポ
何をおっしゃいます!
ダ・ヴィンチ展関連ブログで、
Juliaさんのブログを上回る充実したものはないでしょう!
またよろしくおねがいします!
@ikeさん
わざわざありがとうございます。
お越し下さり光栄です。
>混んでて最後は寒かったですが
私は大丈夫でしたが、先生やお子様がお風邪をひかなければと思います。
暖かい場所が見つかれば良かったのですが、申し訳ありません。
@Takさん
そうなんです。
森、まだスゴいです。人気です。強力なデートスポットです。
そろそろ森よりも高いビルを、東京のどこかにでも建てていただいて、
みなさんそちらから景色をご覧いただければなどと思いますが、
不謹慎ですよね。失礼しました…。
@gemさん
こんばんは。
いつもありがとうございます。
最終日間際ということで混んでいたのでしょうか。
ただ、手稿の部屋は何故か展示会場の中で最も空いていました。
むしろ模造品などのあるお部屋がもの凄かったです。
>明るさの差に、ちょっとこけそうになりました
真っ暗でしたよね!
それがまたスゴいお宝を見ているという雰囲気を盛り上げて…。
目が疲れましたが…。