都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「PARIS オートクチュール」 三菱一号館美術館
三菱一号館美術館
「PARIS オートクチュールー世界に一つだけの服」
3/4~5/22
三菱一号館美術館で開催中の「PARIS オートクチュールー世界に一つだけの服」を見てきました。
19世紀後半のパリで誕生したオートクチュール。直訳すれば高級服飾。一般には注文により複製されるオーダーメイド一点物の服を指すそうです。
つまり服はいずれも二つとないものばかり。だからこその「世界に一つだけの服」。そのオートクチュールがずらりと勢ぞろい。しかもドレスは19世紀のものだけではありません。20世紀以降、比較的近年の作品も交え、オートクチュールの史的展開を追いかけています。
オートクチュールの基礎を築いたのはイギリス人でした。名はシャルル=フレデリック・ウォルト。デザイナーです。上流階級や新興の中産階級を顧客とした彼は、スカートの背の膨らみで模様や生地を見せる「パッスルスタイル」を生み出します。
シャルルのドレス作品の隣におおよそ100年後、つまり1990年前後に作られたドレスが展示されていました。デザイナーの名はクリスチャン・ラクロワ。何でもウォルトに敬意を表すためにあえて懐古趣味的なドレスを手がけているのだそうです。1世紀を超えて交わるオートクチュール。ともにボリューム感もあり、またゴージャスでした。
ジャンヌ・ランバン「イヴニング・ドレス『美しい鳥』」 1928年 ほか
20世紀に入るとコルセットが解放。ドレスも一変します。かつての膨らみを強調したデザインではなく、直線的なラインを用いるようになりました。ジャンヌ・ランヴァンの「イブニング・ドレス 美しい鳥」も文字通り美しい。漆黒のドレス、鷲でしょうか。眼光も鋭い。肩のあたりから下へ向かって飛び立つ様子が表現されています。
ロベール・ピゲ「イヴニング・ドレス『女帝』」 1939年 ほか
ハイライトと言うことかもしれません。1930年代の展開です。妖しく、また艶やかなドレスがずらり。ドレスは長くなり、ウエストのラインは上がります。実に洗練されています。
マドレーヌ・ヴィオネ「イヴニング・ドレス」 1932年 ほか
絹をレザーのように見せているのは、生地の持つ贅沢さを強調するためだそうです。また素材にも新たな要素が加わりました。マドレーヌ・ヴィオネはウールに合成樹脂を織り混ぜてコートを制作しています。
エルザ・スキャパレリ「イヴニング・ケープ」 1938年
「アートへの接近」も一つのキーワードでした。エルザ・スキャパレリはシュルレアリスム作家のクリスチャン・ベラールのイラストを刺繍します。深紅のケープと金系による刺繍。コントラストも鮮やかです。メデューサのモチーフでしょうか。光輝く太陽のようにも見えました。
慎ましさもこの時代のドレスの特徴です。確かに色はどちらかといえば抑制的で、特段に華美な装飾などは見られません。中には修道服や祭服のイメージを取りこんだドレスも現れます。
1940年代に入ると戦争の色が濃くなります。オートクチュールの生産自体も減少。軍服のようなデザインのドレスを着ることもありました。しかし戦後は一転。半ば古典回帰でしょうか。再び丸みを帯びたドレスが登場します。クリスチャン・ディオールの「パルミール」は細かな草花の装飾も美しい。ラメ糸を用いたゆえかキラキラと光り輝いています。さも宝石をちりばめたかのようです。
1960年代になると高級既製服ことプレタポルテが台頭し、オートクチュールから撤退するブランドも現れました。ただ何もドレスの魅力が失われたわけではありません。展示において一番最近のドレスは2014年のもの。クリスチャン・ディオールの「イブニング・ドレス」です。肩から可愛らしい刺繍が垂れ下がります。デザインはラフ・シモンズ。彼は昨年、デビューコレクションの舞台裏を描いた映画、「ディオールと私」が公開されたことでも話題となりました。
ジャン・パトゥ「ジャケットとドレスのイヴニング・アンサンブル」 1939年 ほか
一点物ということか、デザイナーによってかなり個性が際立つのも特徴です。作品はいずれもパリはガリエラ宮モード美術館のコレクションによるもの。2013年にパリ市庁舎で開催された展覧会を日本向けにアレンジしています。
ジャン=ポール・ゴルチエ「イヴニング・ドレス『青い鳥』」 2006年
会場内、一室のみ撮影が可能です。(掲載写真は撮影可の作品。)ドレスを前にして記念撮影をしている方も姿も多く見受けられました。
会期2週目の日曜日の午後に出かけましたが、入場待ちの列が僅かながら出来ていました。館内には余裕がありましたが、何かと後半に集客が集中する一号館美術館のことです。ひょっとすると混雑してくるのかもしれません。
いわゆる焼け防止の観点でしょうか。館内の照明がかなり抑えられています。目が慣れるのに少々時間がかかりました。
5月22日まで開催されています。
「PARIS オートクチュールー世界に一つだけの服」 三菱一号館美術館(@ichigokan_PR)
会期:3月4日(金)~5月22日(日)
休館:月曜日。但し祝日と5月2日、16日は開館。
時間:10:00~18:00。
*祝日を除く金曜日と会期最終週の平日は20時まで。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:大人1700円、高校・大学生1000円、小・中学生無料。
*ペアチケットあり:チケットぴあのみで販売。一般ペア3000円。
*3月15日~31日は学生無料ウィークのため学生は無料。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
「PARIS オートクチュールー世界に一つだけの服」
3/4~5/22
三菱一号館美術館で開催中の「PARIS オートクチュールー世界に一つだけの服」を見てきました。
19世紀後半のパリで誕生したオートクチュール。直訳すれば高級服飾。一般には注文により複製されるオーダーメイド一点物の服を指すそうです。
つまり服はいずれも二つとないものばかり。だからこその「世界に一つだけの服」。そのオートクチュールがずらりと勢ぞろい。しかもドレスは19世紀のものだけではありません。20世紀以降、比較的近年の作品も交え、オートクチュールの史的展開を追いかけています。
オートクチュールの基礎を築いたのはイギリス人でした。名はシャルル=フレデリック・ウォルト。デザイナーです。上流階級や新興の中産階級を顧客とした彼は、スカートの背の膨らみで模様や生地を見せる「パッスルスタイル」を生み出します。
シャルルのドレス作品の隣におおよそ100年後、つまり1990年前後に作られたドレスが展示されていました。デザイナーの名はクリスチャン・ラクロワ。何でもウォルトに敬意を表すためにあえて懐古趣味的なドレスを手がけているのだそうです。1世紀を超えて交わるオートクチュール。ともにボリューム感もあり、またゴージャスでした。
ジャンヌ・ランバン「イヴニング・ドレス『美しい鳥』」 1928年 ほか
20世紀に入るとコルセットが解放。ドレスも一変します。かつての膨らみを強調したデザインではなく、直線的なラインを用いるようになりました。ジャンヌ・ランヴァンの「イブニング・ドレス 美しい鳥」も文字通り美しい。漆黒のドレス、鷲でしょうか。眼光も鋭い。肩のあたりから下へ向かって飛び立つ様子が表現されています。
ロベール・ピゲ「イヴニング・ドレス『女帝』」 1939年 ほか
ハイライトと言うことかもしれません。1930年代の展開です。妖しく、また艶やかなドレスがずらり。ドレスは長くなり、ウエストのラインは上がります。実に洗練されています。
マドレーヌ・ヴィオネ「イヴニング・ドレス」 1932年 ほか
絹をレザーのように見せているのは、生地の持つ贅沢さを強調するためだそうです。また素材にも新たな要素が加わりました。マドレーヌ・ヴィオネはウールに合成樹脂を織り混ぜてコートを制作しています。
エルザ・スキャパレリ「イヴニング・ケープ」 1938年
「アートへの接近」も一つのキーワードでした。エルザ・スキャパレリはシュルレアリスム作家のクリスチャン・ベラールのイラストを刺繍します。深紅のケープと金系による刺繍。コントラストも鮮やかです。メデューサのモチーフでしょうか。光輝く太陽のようにも見えました。
慎ましさもこの時代のドレスの特徴です。確かに色はどちらかといえば抑制的で、特段に華美な装飾などは見られません。中には修道服や祭服のイメージを取りこんだドレスも現れます。
1940年代に入ると戦争の色が濃くなります。オートクチュールの生産自体も減少。軍服のようなデザインのドレスを着ることもありました。しかし戦後は一転。半ば古典回帰でしょうか。再び丸みを帯びたドレスが登場します。クリスチャン・ディオールの「パルミール」は細かな草花の装飾も美しい。ラメ糸を用いたゆえかキラキラと光り輝いています。さも宝石をちりばめたかのようです。
1960年代になると高級既製服ことプレタポルテが台頭し、オートクチュールから撤退するブランドも現れました。ただ何もドレスの魅力が失われたわけではありません。展示において一番最近のドレスは2014年のもの。クリスチャン・ディオールの「イブニング・ドレス」です。肩から可愛らしい刺繍が垂れ下がります。デザインはラフ・シモンズ。彼は昨年、デビューコレクションの舞台裏を描いた映画、「ディオールと私」が公開されたことでも話題となりました。
ジャン・パトゥ「ジャケットとドレスのイヴニング・アンサンブル」 1939年 ほか
一点物ということか、デザイナーによってかなり個性が際立つのも特徴です。作品はいずれもパリはガリエラ宮モード美術館のコレクションによるもの。2013年にパリ市庁舎で開催された展覧会を日本向けにアレンジしています。
ジャン=ポール・ゴルチエ「イヴニング・ドレス『青い鳥』」 2006年
会場内、一室のみ撮影が可能です。(掲載写真は撮影可の作品。)ドレスを前にして記念撮影をしている方も姿も多く見受けられました。
会期2週目の日曜日の午後に出かけましたが、入場待ちの列が僅かながら出来ていました。館内には余裕がありましたが、何かと後半に集客が集中する一号館美術館のことです。ひょっとすると混雑してくるのかもしれません。
いわゆる焼け防止の観点でしょうか。館内の照明がかなり抑えられています。目が慣れるのに少々時間がかかりました。
5月22日まで開催されています。
「PARIS オートクチュールー世界に一つだけの服」 三菱一号館美術館(@ichigokan_PR)
会期:3月4日(金)~5月22日(日)
休館:月曜日。但し祝日と5月2日、16日は開館。
時間:10:00~18:00。
*祝日を除く金曜日と会期最終週の平日は20時まで。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:大人1700円、高校・大学生1000円、小・中学生無料。
*ペアチケットあり:チケットぴあのみで販売。一般ペア3000円。
*3月15日~31日は学生無料ウィークのため学生は無料。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
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