「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展」 国立新美術館

国立新美術館
「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果」
2019/1/23~3/3



国立新美術館で開催中の「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展」を見てきました。

文化庁の「新進芸術家海外研修制度」に参加した美術家を紹介するDOMANI展も、今年度で21回目を迎えました。

今回の出展作家は、主に昭和50年代に生まれた9名で、あわせて文化庁が作品を所有し、フィレンツェでも滞在経験のある日本画家、三瀬夏之介がゲストとして加わっていました。


和田的 展示風景

はじめは千葉県出身で、主に白磁を制作する和田的でした。「太陽」や「白器|記憶」など題した作品が、黒い台のケースに収められていて、いずれも乳白色に染まっていました。


和田的「白器|記録」 2017年 松森美術 ほか

一部には細かな装飾があるものの、全体としては抽象性を帯びていて、中には高層ビルなどの建築を連想させる作品もありました。


蓮沼昌宏 展示風景

続くのは、2016年からフランクフルトで研修した蓮沼昌宏で、映画の先祖とも呼ばれる動画装置、キノーラを用いた作品を展示していました。いずれもイラストの描かれた400枚から500枚の紙片が連なっていて、手で回すことにより、さながらパラパラ絵本のように物語が進む仕掛けとなっていました。


蓮沼昌宏「男木島」 2016年

ともかくアナログな味わいが魅力的で、海や緑、それに生き物らの登場した「直島」や「男木島」など、牧歌的な風景が展開する作品が特に面白いかもしれません。


村山悟郎「自己組織化する絵画(樹状多層構造)」 2017年
 
まるで展示室へ絵画が増殖するかのようでした。1983年に生まれ、2015年よりウィーンに滞在した村山悟郎は、麻紐とカンバスを織り、さらに下地やドローイングを施した「織物絵画」と呼ばれる作品を出展していました。


村山悟郎「自己組織化する絵画(樹状多層構造)」 2017年 部分

麻紐には棒針も付いていて、絵具やカンバス地などが、複雑に組み合っていました。一部は、人の顔や大きな鳥が翼を広げたような姿をしていて、いくつかの具体的なイメージも浮かび上がって来ました。

近年、ドキュメンタリーの手法で映像を手がける志村信裕は、羊から文化、経済、文化を巡るドキュメンタリー映像、「Nostalgia, Amnesia」を公開していました。


志村信裕「Nostalgia, Amnesia」 2019年

バスク地方の山岳地帯や南西フランスの小村、それに千葉県成田市の三里塚の地を巡りながら、それぞれに羊と関わる人々にインタビューを行っては、羊毛の価値や生産、それに食肉としてのあり方、さらには羊や戦争の関係などを明らかにしていました。


志村信裕「Nostalgia, Amnesia」 2019年

三里塚と牧場、さらに成田闘争の歴史や、そもそも日本でいつ羊が飼われたのかなど、テーマは多岐に及んでいて、全40分の映像も、気がつけば最初から最後まで見入っていました。なお本作は、2016年にパリで研修した作家による、研修後の初の本格的な新作でもあるそうです。


白木麻子 展示風景

2015年にベルリンで研修した白木麻子は、椅子や机と思しきものや、ガラスを取り込んだインスタレーションを展開していました。それらは一見すると家具のようであるものの、例えば底の抜けた椅子など、必ずしも本来的な用途を満たしていませんでした。


白木麻子「Liquid path - Buoyancy and dynamic」 2017年

いずれも複雑に組み合わされていて、まるで建築の断片を配したかのようでした。また宗教的な儀礼の場のような気配も感じられるかもしれません。


加藤翼 展示風景

メキシコシティやジャカルタで、ゲリラ的なパフォーマンスを行った加藤翼は、アーカイブを映像などで紹介していました。


加藤翼「Pass Between Magnetic Tea Party」 2015年

「Pass Between Magnetic Tea Party」は、メキシコシティの公道の路地でティーパーティをパフォーマンスで、人々が道の真ん中にテーブルを置いて道路を封鎖しつつも、車が来たら退かしては、パーティーをする光景を捉えていました。公と私の境界、ないし共同体のあり方に再考を促すようなテーマを有していましたが、端的に人々の行き来する楽しそうな姿が印象に残りました。


三瀬夏之介 展示風景

ラストを飾るのは、ゲスト作家の三瀬夏之介で、10年間の隔たりをもって描かれた2つの「日本の絵」を出展していました。とも国立新美術館のホワイトキューブを覆うほどに巨大な作品で、大変な迫力を見せていました。


今年度は、研修を終えてから期間の短い作家が選ばれているそうです。「平成の終わりに」と題したテーマはアバウトかもしれませんが、社会の様々な課題に目を向けた作品も多く、見ごたえは十分でした。なお志村信裕をはじめ、川久保ジョイなど、映像を中心とした展示も少なくありません。時間に余裕をもってお出かけ下さい。



全ての作品の撮影も可能です。3月3日まで開催されています。

「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果」@DOMANI_ten) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2019年1月23日(水)~3月3日(日)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大学生500(300)円、高校生以下無料。 
 *2月24日(日)は天皇陛下御在位30年を記念して無料。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (pinewood)
2019-03-01 19:53:12
志村映像作品の様に今回映像インスタレーション等充実していました。羊を廻る40分のインタビューのドキュメントには見入って仕舞いました。
 
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