goo blog サービス終了のお知らせ 

「Paris、パリ、巴里─日本人が描く 1900~1945」 ブリヂストン美術館

ブリヂストン美術館
「Paris、パリ、巴里─日本人が描く 1900~1945」
3/23-6/9



ブリヂストン美術館で開催中の「Paris、パリ、巴里─日本人が描く 1900~1945」へ行ってきました。

19世紀末から20世紀初頭にかけてパリへ渡った数多くの日本人画家たち。藤田の例を挙げるまでもなく、西洋と日本のはざ間で様々な画題に取り組み、また新たな表現を獲得していった。

と、何となしにこの時代の日本人画家の動向を見聞きしつつも、一体全体、彼らの中でどのような交流があり、また外国でどうした制作を行っていたのかまでは、必ずしも良く知られているわけではありません。


岡鹿之助「セーヌ河畔」1927年 石橋財団ブリヂストン美術館

そこで日本人の洋画コレクションでも定評のあるブリヂストン美術館。20世紀前半に渡仏した日本人画家の活動の軌跡を、良質な作品でかつコンパクトにまとめています。

第1章 パリ万博から第一次世界大戦まで 1900-1914
第2章 黄金の1920年代と両大戦間期 1918-1945


さて始まりは黒田清輝。1896年に東京美術学校の教壇に立ってからは、その卒業生たちを自らも留学したパリへと送るようになります。

日本人が多数パリを訪れたのは1900年。ちょうど第五回のパリ万国博の時です。日本政府は日本の伝統文化とともに、明治以来の西洋文化の摂取の成果を西欧で示すべく、美術界の主要人物をパリへ送り込みます。

この時に渡仏したのが黒田をはじめ、浅井忠、岡田三郎助、和田英作ら。展示でも冒頭に彼らの作品が登場します。


浅井忠「静物」1902年 石橋財団ブリヂストン美術館

そして面白いのが浅井忠と和田英作の関係。パリでも親しかった二人は同じ女性をモデルとした肖像画を作成。その二点が出品されているのです。

二点の名は同じく「読書」。タイトルの如く女性が本を手にして座りながら読む姿が描かれていますが、そこには両者の個性が明らかに。浅井は正面から女性を捉え、パステルとも見間違うような軽妙な筆致に対し、和田は左斜めから女性を。しかも重厚でうねるようなタッチで描いているのです。 *浅井忠の「読書」は5/3まで展示。


安井曾太郎「水浴裸婦」1914年 石橋財団石橋美術館

またセザンヌに私淑した安井曾太郎と、晩年のルノワールに指導を受けた梅原龍三郎も裸婦対決も見どころ。梅原の「脱衣婦」はまさにルノワール風ですが、同じく安井の「水浴裸婦」は手前の裸婦こそルノワールを思わせながらも、背景の山にはセザンヌ的な幾何学的平面が。同じモチーフから、二人がどのように西洋絵画を摂取していたのかが分かる仕掛けとなっています。

さて一次大戦に突入するとフランスは戦場。藤田のような例外を除き、日本人画家の殆どは帰国。再び渡仏したのは終戦後、1920年代になってからのこと。また多くの画家がパリを訪れるようになりました。


小出楢重「パリ、ソンムラールの宿にて」1922年 三重県立美術館

ここで興味深いのは、渡仏した日本人画家が何も西洋礼賛一辺倒ではないこと。例えば小出楢重は「フランスには油絵はたくさんあるが、芸術はない。」という言葉を残しています。

また気になったのは辻永。岡田三郎助に師事し、1920年から2年間、パリに留学した画家です。

展示では「春」と「フォントネ=オ=ローズの春」の2点が出ていましたが、これが殊更に魅力的。リズミカルなタッチと透明感のある明るい色遣い。特に鮮やかなブルーが目を引きます。


佐伯祐三「レストラン(オテル・デュ・マルシェ)」1927年 大阪市立近代美術館準備室

そして圧巻は佐伯祐三です。出品は5点。中でもモンパルナスのカフェを捉えた「レストラン(オテル・デュ・マルシェ)」は充実の一枚。黄土色、土色を基調とした濃厚なタッチに、それこそ異国を思わせる佐伯得意の文字が壁面に舞う様子。パリの喧騒に石造りの街の重みが伝わってきます。


坂本繁二郎「帽子を持てる女」1923年 石橋財団石橋美術館

また藤田嗣治と坂本繁二郎がともに5点ずつ出ているのもポイント。ちなみに坂本はパリへ渡って色彩を獲得したとか。珍しい人物画の代表作「帽子を持てる女」も展示されています。

出品作は全40点。もちろんその後に怒涛のコレクション展が続くとはいえ、決して規模で見せる展示ではありません。

しかしながらこの充実した作品群。また簡潔ながらも丁寧なキャプションも理解を深めます。

石橋美術館はおろか、東京国立博物館、三重県立美術館、そして大阪市近代美術館建設準備室など他館の作品を一部取り込んでの展覧会。テーマも明確。期待以上に見応えがありました。

6月9日まで開催されています。

「Paris、パリ、巴里─日本人が描く 1900~1945」 ブリヂストン美術館
会期:3月23日(土)~6月9日(日)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日。但し4月21日(日)は臨時休館。
料金:一般800(600)円、65歳以上600(500)円、大学・高校生500(400)円、中学生以下無料。
 *( )内は15名以上の団体割引。
住所:中央区京橋1-10-1
交通:JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 「幸之助と伝... 「牧野邦夫ー... »
 
コメント(10/1 コメント投稿終了予定)
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。