都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「観音の里の祈りとくらし展2」 東京藝術大学大学美術館
東京藝術大学大学美術館
「観音の里の祈りとくらし展2ーびわ湖・長浜のホトケたち」
7/5~8/7
東京藝術大学大学美術館で開催中の「観音の里の祈りとくらし展2ーびわ湖・長浜のホトケたち」のブロガー内覧会に参加してきました。
滋賀県北東部、琵琶湖の北岸に面する長浜市。古くは奈良、平安時代の仏像が点在することから、「観音の里」として呼ばれることも知られています。
その長浜の仏像がかつて一度、東京へまとめてやって来たことがありました。場所は同じく芸大美術館。2014年の春です。「観音の里の祈りとくらし展1」でのことでした。
当時は全18躯。いずれも東京初出展でした。1ヶ月弱の会期の間に約2万名もの人が来場。その大いなる反響は長浜でも話題となったそうです。
スケールアップしての第2弾です。仏像の数は前回の2倍以上の約40躯。しかも観音像に限りません。ほか同じく長浜に由来する薬師如来像、阿弥陀如来像、大日如来像をはじめ、書跡や古文書なども展示されています。
「聖観音立像」 重要文化財 平安時代(9世紀) 長浜市弓削町 来現寺
会場中央、一際目立つ仏像がありました。来現寺の「聖観音立像」です。作は平安時代。堂々たる姿です。やや左足で重心をとり、長い右手を前に垂らしています。表情は幾分険しく、威厳に満ちているようにも見えます。腰回りの肉付きは良い。かつては村の西方の寺院に安置されていたものの、火災でお堂が焼失。しかしながら村人が本像だけを池に沈めて難を逃れたとも伝えられています。
「観音菩薩立像」 重要文化財 鎌倉時代(建保4年・1216年) 長浜市余呉町菅並 洞寿院
東京初出展はもとより、そもそも寺外初公開の仏像も少なくありません。洞寿院の「観音菩薩立像」です。ヒノキの一木造り。素地仕上げゆえのことでしょうか。どこか木に独特な温もりも感じられます。表面はやや滑らか。衣紋も簡素です。そもそも本像はいわゆる秘仏。33年に一度しか公開されません。それが今年です。よって展覧会に出陳されることにもなりました。
「阿弥陀如来立像」 長浜市指定文化財 平安時代(12世紀) 長浜市加田町 阿弥陀寺
長浜の仏像は地元の人々の手によって守られています。というのも幾つかの寺院を除けば、専務住職のいないいわゆる兼務寺ばかり。よって日頃の管理や参拝の対応は村や自治会が行っているのです。時に収蔵庫の鍵は当番で持ち回りされます。中には観音堂の維持が困難になったため、自治会館に直接収蔵されている南郷町の「聖観音立像」の例もあるそうです。
今回の展覧会を行うのに際しては、まず像を管理する自治会から個々に同意を得ることから始まりました。そもそも仏像は市内の各地に点在。一度に拝観できる機会は地元ですらありません。
「千手千足観音立像」 江戸時代(17〜18世紀) 長浜市高月町西野 正妙寺
やや変わった姿をした観音様もお出ましです。正妙寺の「千手千足観音立像」はどうでしょうか。作は江戸時代。千手観音こそ例は少なくありませんが、千足とは極めて珍しい。両脚は直立です。脇足が左右に19本、扇状に突き出しています。顔は憤怒。ただどこか高らかに笑っているようにも思えました。まさしく異様な出で立ちではありますが、古くは鎌倉時代の天台宗の図像集にも例が見られるそうです。
「馬頭観音立像」 滋賀県指定有形文化財 鎌倉時代(13世紀) 長浜市西浅井町庄 徳円寺
徳円寺の「馬頭観音立像」も個性的です。顔は憤怒、三面に向く仏像です。髪は逆立っていて、頭部には馬がのっています。腕は四方に伸びて、正面では手を合わせています。興味深いのは足です。足裏を正面に見せています。踵で立っているのでしょうか。
「伝千手観音立像」 重要文化財 平安時代(9世紀) 長浜市木之本町黒田 観音寺
ハイライトは観音寺の「伝千手観音立像」でした。像高は2メートル。出展中最大の仏像です。作は平安時代初期。腕は太くて力強い。逞しい上半身の反面、下半身はやや細身です。丸く垂れた衣文線が広がっています。観音寺のある黒田は軍師官兵衛で知られる黒田家所縁の地。やはり無住寺のため、世話方と呼ばれる地元の人が維持管理を行っています。世話方には定員、そして任期まであるそうです。展覧会初出展の仏像でもあります。
かつて観音を守り続けた中世の村落共同体に関する資料も展示されています。解説パネルの記載も細かい。仏像と長浜の歴史や人々の関わりを知ることが出来ました。
「阿弥陀如来立像」 長浜市指定文化財 鎌倉時代(13世紀) 長浜市野瀬町 大吉寺
展示は一部を除いて露出でした。360度の方向から鑑賞可能な仏像も少なくありません。
黒田観音寺(写真パネル)
1ヶ月間の限定展示です。巡回はありません。
「びわ湖・長浜のホトケたち2/長浜市・東京藝術大学大学美術館」
8月7日まで開催されています。おすすめします。
「観音の里の祈りとくらし展2ーびわ湖・長浜のホトケたち」(@nagahama_kannon) 東京藝術大学大学美術館
会期:7月5日(火)~8月7日(日)
休館:月曜日。但し7月18日は開館。7月19日は休館。
時間:10:00~17:00
*毎週金曜日は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、高校・大学生700(600)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*本展のチケットで当日に限り、同時開催「平櫛田中コレクション展」を観覧可。
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。
注)写真はブロガー内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「観音の里の祈りとくらし展2ーびわ湖・長浜のホトケたち」
7/5~8/7
東京藝術大学大学美術館で開催中の「観音の里の祈りとくらし展2ーびわ湖・長浜のホトケたち」のブロガー内覧会に参加してきました。
滋賀県北東部、琵琶湖の北岸に面する長浜市。古くは奈良、平安時代の仏像が点在することから、「観音の里」として呼ばれることも知られています。
その長浜の仏像がかつて一度、東京へまとめてやって来たことがありました。場所は同じく芸大美術館。2014年の春です。「観音の里の祈りとくらし展1」でのことでした。
当時は全18躯。いずれも東京初出展でした。1ヶ月弱の会期の間に約2万名もの人が来場。その大いなる反響は長浜でも話題となったそうです。
スケールアップしての第2弾です。仏像の数は前回の2倍以上の約40躯。しかも観音像に限りません。ほか同じく長浜に由来する薬師如来像、阿弥陀如来像、大日如来像をはじめ、書跡や古文書なども展示されています。
「聖観音立像」 重要文化財 平安時代(9世紀) 長浜市弓削町 来現寺
会場中央、一際目立つ仏像がありました。来現寺の「聖観音立像」です。作は平安時代。堂々たる姿です。やや左足で重心をとり、長い右手を前に垂らしています。表情は幾分険しく、威厳に満ちているようにも見えます。腰回りの肉付きは良い。かつては村の西方の寺院に安置されていたものの、火災でお堂が焼失。しかしながら村人が本像だけを池に沈めて難を逃れたとも伝えられています。
「観音菩薩立像」 重要文化財 鎌倉時代(建保4年・1216年) 長浜市余呉町菅並 洞寿院
東京初出展はもとより、そもそも寺外初公開の仏像も少なくありません。洞寿院の「観音菩薩立像」です。ヒノキの一木造り。素地仕上げゆえのことでしょうか。どこか木に独特な温もりも感じられます。表面はやや滑らか。衣紋も簡素です。そもそも本像はいわゆる秘仏。33年に一度しか公開されません。それが今年です。よって展覧会に出陳されることにもなりました。
「阿弥陀如来立像」 長浜市指定文化財 平安時代(12世紀) 長浜市加田町 阿弥陀寺
長浜の仏像は地元の人々の手によって守られています。というのも幾つかの寺院を除けば、専務住職のいないいわゆる兼務寺ばかり。よって日頃の管理や参拝の対応は村や自治会が行っているのです。時に収蔵庫の鍵は当番で持ち回りされます。中には観音堂の維持が困難になったため、自治会館に直接収蔵されている南郷町の「聖観音立像」の例もあるそうです。
今回の展覧会を行うのに際しては、まず像を管理する自治会から個々に同意を得ることから始まりました。そもそも仏像は市内の各地に点在。一度に拝観できる機会は地元ですらありません。
「千手千足観音立像」 江戸時代(17〜18世紀) 長浜市高月町西野 正妙寺
やや変わった姿をした観音様もお出ましです。正妙寺の「千手千足観音立像」はどうでしょうか。作は江戸時代。千手観音こそ例は少なくありませんが、千足とは極めて珍しい。両脚は直立です。脇足が左右に19本、扇状に突き出しています。顔は憤怒。ただどこか高らかに笑っているようにも思えました。まさしく異様な出で立ちではありますが、古くは鎌倉時代の天台宗の図像集にも例が見られるそうです。
「馬頭観音立像」 滋賀県指定有形文化財 鎌倉時代(13世紀) 長浜市西浅井町庄 徳円寺
徳円寺の「馬頭観音立像」も個性的です。顔は憤怒、三面に向く仏像です。髪は逆立っていて、頭部には馬がのっています。腕は四方に伸びて、正面では手を合わせています。興味深いのは足です。足裏を正面に見せています。踵で立っているのでしょうか。
「伝千手観音立像」 重要文化財 平安時代(9世紀) 長浜市木之本町黒田 観音寺
ハイライトは観音寺の「伝千手観音立像」でした。像高は2メートル。出展中最大の仏像です。作は平安時代初期。腕は太くて力強い。逞しい上半身の反面、下半身はやや細身です。丸く垂れた衣文線が広がっています。観音寺のある黒田は軍師官兵衛で知られる黒田家所縁の地。やはり無住寺のため、世話方と呼ばれる地元の人が維持管理を行っています。世話方には定員、そして任期まであるそうです。展覧会初出展の仏像でもあります。
かつて観音を守り続けた中世の村落共同体に関する資料も展示されています。解説パネルの記載も細かい。仏像と長浜の歴史や人々の関わりを知ることが出来ました。
「阿弥陀如来立像」 長浜市指定文化財 鎌倉時代(13世紀) 長浜市野瀬町 大吉寺
展示は一部を除いて露出でした。360度の方向から鑑賞可能な仏像も少なくありません。
黒田観音寺(写真パネル)
1ヶ月間の限定展示です。巡回はありません。
「びわ湖・長浜のホトケたち2/長浜市・東京藝術大学大学美術館」
8月7日まで開催されています。おすすめします。
「観音の里の祈りとくらし展2ーびわ湖・長浜のホトケたち」(@nagahama_kannon) 東京藝術大学大学美術館
会期:7月5日(火)~8月7日(日)
休館:月曜日。但し7月18日は開館。7月19日は休館。
時間:10:00~17:00
*毎週金曜日は20時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、高校・大学生700(600)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*本展のチケットで当日に限り、同時開催「平櫛田中コレクション展」を観覧可。
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。
注)写真はブロガー内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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