「第13回 shiseido art egg 今村文展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第13回 shiseido art egg 今村文展」
2019/7/5~7/28



資生堂ギャラリーで開催中の「第13回 shiseido art egg 今村文展」を見てきました。

新進アーティストを公募によって紹介する資生堂アートエッグも、第13回を数えるに至りました。

今年度の応募総数は269件あり、選考を経て、今村文、小林清乃、遠藤薫の3名の作家が入選を果たしました。そして入選者の個展が、7月から9月にかけて順に行われます。

その第1弾が、1982年生まれの今村文で、「見えない庭」と題し、「ドローイングによる花や虫に囲まれた世界」(公式サイトより)構成するとしています。それでは一体、どのような展示なのでしょうか。



地下に広がる薄暗がりの展示室に置かれていたのは、開け放たれたクローゼットと、ランプの灯すチェスト、それに木の板で作られた部屋でした。中に立ち入ることこそ叶わないものの、明かりを頼りに部屋をドアから覗き込むと、白いシーツに包まれた一台のベット、それに小さな椅子が並んでいました。そして何よりも目を引くのが、ベットや椅子はおろか、天井から床面へと侵食するかのように広がる植物で、赤や黄色の花を咲かせていました。



また先のクローゼットも同様に、草花が広がっていて、チェストの引き出しにも花や葉の断片が無数に入れられていました。いずれも実際の草花ではなく、作家が水彩で描いて切り抜いた紙片でした。草花は時に絡み合い、半ば過剰なまでに茂っていて、本来的に室内である寝室が、まるで屋外、まさに庭のようでした。



「自我のない彼らはとても純粋な心だけの状態なのではないでしょうか。私にとって、花や虫は心を感受して光る白熱灯のようなものです。その光だけで満たしたいと思うのです。」 今村文(解説シートより)



草花とともに重要なモチーフがもう1つありました。それが写真では良く分からないかもしれませんが、無数の毛虫や蛾などの虫でした。いずれも草花と同様に紙で作られていて、例えば寝室では、ベットの上はおろか、壁から床に至るまでたくさんの毛虫が群れをなしていました。かなり精緻に作られていてリアリティもあるため、虫が苦手な方は思わず仰け反ってしまうかもしれません。



今村は、庭を作る際に寝室を築いたのは、「眠っている間の不在」について考えたからと述べています。そして目を覚ますと、「私を忘れていたと気づき」(解説シートより)、そこに本当に存在していたのかと自問するのだそうです。



ともすると寝室に広がる庭は、人が眠っている間にだけ現れる光景なのかもしれません。無数の草花や虫に囲まれた寝室の庭を見やりながら、どこか非現実の空間へと誘われていくような錯覚に陥りました。


今村文「ぼたん羽虫華鬘」 2018年

「花ふたち、茂み」や「ぼたん羽虫華鬘」などと題した、紙に水彩の平面のコラージュにも惹かれました。草花や虫の繊細で澄んだ生命感が滲み出ているように見えないでしょうか。



資生堂アートエッグの本年度のスケジュールは以下の通りです。

【第13回 shiseido art egg 展示スケジュール】
今村文展: 2019年7月5日(金)~7月28日(日)
小林清乃展:2019年8月2日(金)~8月25日(日)
遠藤薫展: 2019年8月30日(金)~9月22日(日)

全ての展示の終了後、有山達也(グラフィックデザイナー)、住吉智恵(アートプロデューサー)、小野耕石(美術家)の専門家3氏の審査を得て、大賞の「shiseido art egg賞」が選ばれます。


7月28日まで開催されています。おすすめします。*写真は全て「見えない庭」会場風景。撮影も可能です。

「第13回 shiseido art egg 今村文展」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:2019年7月5日(金)~7月28日(日)
休廊:月曜日。*祝日が月曜にあたる場合も休館
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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