「高崎市美術館彫刻展 彫刻をめぐる空間」 高崎哲学堂

高崎哲学堂群馬県高崎市八島町110-27
「高崎市美術館彫刻展 彫刻をめぐる空間」(第2期)
8/12-9/21



ビルの立ち並ぶ高崎駅至近に突如広がるのは、アントニン・レーモンドによる静けさに満ちた和の空間でした。市美術館が休館中(増築工事)のため、隣接の哲学堂で開催されている彫刻の展覧会です。館蔵品による「彫刻をめぐる空間」へ行ってきました。





まずはレーモンド設計による哲学堂、つまりはかつて高崎の実業家であった井上房一郎の旧宅そのものが重要な鑑賞のポイントです。正面よりぐるっと回り込んで開けてくる直線上の庇と、連続する端正な長方形の窓、また玄関より左右に広がる居住スペースと細くのびた廊下、さらには宙を這う剛胆な屋根組みと、総じて機能的でありながら、決して無機質になりすぎない居心地の良さを感じました。また敷地に鬱蒼と生い茂る緑も、どこか隠れ家的な趣きを醸し出しています。まるで山荘です。蚊取り線香の煙に情緒を感じたのは久しぶりでした。



彫刻の展観は計10点ほどと多くはありませんが、まさにこの旧宅の古くからの住人であるかのように建物へ溶け込む様は、一つのインスタレーションとして楽しむ上でも十分に見応えがあります。暖炉のある居間にバサバサと舞い降りた下田治の「コウモリ」、そして井上の夫人用の和室で束の間の昼寝を楽しむ吉田光正の「休息」など、空間の力も借りての見事な演出が仕掛けられていました。また居間の窓際に並ぶ椅子の上におかれた帽子は、主人、房一郎の愛用の品だそうです。彼の息づかいが聞こえてくるかのようでした。

  

  

哲学堂は現在、市民財団運営の文化スペースとして、今展観の他、サークル活動などの様々な催しの会場として用いられています。ただ保存するだけでなく、それを今も効果的に利用し続ける点に、高崎市民の知恵を感じました。



今月21日までの開催です。なお入場は無料です。
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