窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

競争型交渉と共創型交渉を体感する-第32回燮(やわらぎ)会

2017年06月19日 | 交渉アナリスト関係


  6月17日、日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会、第32回燮(やわらぎ)会を開催しました。



  今回のテーマは、「カードゲーム『ボーナンザ』で交渉を学ぶ」。「ボーナンザ」は1997年に発売され、数々の賞に輝いたドイツ生まれのカードゲームです。3年前、1級会員の掛川さんが主催するボーナンザの会に初めて参加させていただき、昨年は弊社の全社員研修でも採用しました。

  ボーナンザは、一言で言えば手持ちの札と山から引いた札をうまく使いながら、畑で豆を育て収穫し、コインに換金することで獲得コイン数を競うゲーム。ただ、様々な制約条件により、豆を育て収穫するためには必ず他のプレイヤーとの交渉が必要になります。このコミュニケーションが不可欠であるという点が、普通のカードゲームとは異なるボーナンザの特徴と言えるでしょう。



  初めにルールに習熟していただくため、手持ち札を公開しながらの練習ラウンドを行いました。ボーナンザは非常に特徴的なルールであるため、やりながら覚えるという方法がお勧め。プレイ時間は45分~60分ほどです。

  皆さんにゲームに慣れていただいた後、いよいよ本番ラウンド。弊社で行った全社員研修同様、第1ラウンドはチーム内で得点を競い、第2ラウンドはさらにチーム対抗の条件を加えました。そうすると、第2ラウンドは自然とチーム内で協力し合うようになります。つまり、第1ラウンドは競争型(分配型)交渉、第2ラウンドは共創型(統合型)交渉を疑似体験することになるわけです。



  ゲームに対する習熟という要素も考慮しなければならないものの、やはり今回も第2ラウンドの方がより多くのコインを獲得するという結果になりました。今回の場合、コインの総獲得枚数は第1ラウンドの70枚から第2ラウンドは94枚と34%も増加しました。



  上のグラフはコイン獲得枚数ごとの人数を第1ラウンド(青)と第2ラウンドで比較したものですが、グラフ自体が右に移動しているということは、各プレイヤーが概ねコインの獲得枚数を増やすことができたということです。つまり、協力行動の方が全体の富を増やすことができ、かつ個人の富も増やすことができるということです。



  さらに言えば、コインの分配格差も第1ラウンドが0.198、第2ラウンドが0.190と僅かですが協力行動の方が格差が縮小するという結果になりました。

  もちろん、第2ラウンドもチーム対抗で競争したわけですから、競争が人間の動機づけとなることは否定できません。また、現実には自分に不利益になると分かっていても、相手を引き摺り下ろすことを優先する認知バイアスが人間にはあることが分かっています。しかしながら、ボーナンザは競争社会に生きている我々が共創型交渉の大切さを理念としてばかりではなく、分かりやすい形で体感することができるという点で、非常に優れたゲームだと思います。さらに言えば、3人~5人がプレイヤーの目安のゲームで、一箱1,300円程度という安さも魅力です。これなら人数の多い企業研修などでも手軽に楽しむことができます。



  ゲーム終了後、参加者の皆さんに第1ラウンドと第2ラウンドとで戦略のあり方や自分の気持ちなどにどのような変化が生じたのかを話し合い、共有していただきました。以下、皆さんのご感想を紹介します。

・1回目は個人の利益のみを考えてプレイしたが、2回目はチーム全体の利益を考えてプレイを行った。
・1回目は自分の手元の資源にしか注目できなかったが、2回目は全体の資源の状況を把握するように努めた。
・2回目は他のプレイヤーの畑も自分の畑と考えながらプレイした。
・2回目は他のプレイヤーのメリットを考えることによって、自分のメリットにもなるゲームとなった(1回目は潰し合いになってしまう傾向にあった)。
・いつ換金するか、いつ畑を増やすか、そのタイミングが難しかった。
・全体利益と自己利益が両立するようなゲームにならないと、満足感が得にくい。
・個人のゲームとして行った方が面白い。
・畑を増やすメリットが今ひとつ分からなかった。
・手元にカードを残すのはもったいない。
・手持ちのカードを多くし、一気に譲渡する。
・人にあげることを前提に考える。
・自分の得ばかり考えると自滅する。
・皆ができるだけ違う豆を育てればよい。時には自分の畑を潰し、譲った方が効率が良い。
・手持ちのカードは人のものと考える。
・自分のカード、部分最適に囚われてしまう。
・人の畑に供給することを考える。
・情報をオープンにし、活発に交換する。


  最後の「情報をオープンにする」は、以前ご紹介したランプルゥ先生やダイヤモンド先生も交渉を行う上で強調されていた点です。

  結びに、弊社が昨年行った全社員研修での結果などもご紹介させていただきました。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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