7月14日、中央大学駿河台記念館にて
第4回ネゴシエーション研究フォーラムに参加してきました。全体は二部構成でしたが、その内の第一部は
伊勢田幸永先生による「どんな場面でもコミュニケーションがうまくいく『しぐさ』の技術」でした。
コミュニケーションにおける「しぐさ」の重要性についてですが、ある研究によると、脳がインプットする情報の83%は五感のうちの視覚からと言われています。いうまでもなく「しぐさ」は視覚情報ですから、普段何気なく行っている自分のしぐさに着目し、改善するとは、コミュニケーションを改善する上で非常に重要ということになります。
しかし、しぐさは無意識と繋がっているだけに、それを変えるのはなかなか容易なことではありません。そこで今回の講義では、一般的な対面交渉の場面を想定し、簡単な工夫で大きな効果が期待できるしぐさについてお話いただきました。
よく、「人の印象は80%第一印象で決まり、その第一印象は最初の15秒で決まる」と言われますが、その極めて重要な第一印象を決定づける視覚情報に、挨拶・表情・態度・身だしなみなどがあります。まず挨拶。挨拶は聴覚情報でもありますが、行為そのものは視覚情報といえます。挨拶を先にした方が会話の主導権を握るといわれています。
次に表情。まず、できれば髪を上げて額を出すのが望ましいといわれています。特に日本人の場合、髪が黒いので、前髪を下ろしていると顔全体が暗い印象を与えてしまうようです。額が出ているとそこに光が入り、顔が明るく見えます。気功の観点からみると、印堂(眉間のツボ。気の出入り口の一つ)が出ていることが相手に発するエネルギーに影響を及ぼすのかもしれません。
コミュニケーションにおいては、相手の目線をいかに自分の顔に向けさせるかが大切になります。とりわけ口に注意を向けさせることが大切で、相手が口に注目している時の説得力は2倍、3倍にも増すといわれています。そこで相手の目線を自分の顔や口に向けさせるためのしぐさですが、「動くものに反応する」という動物の本能を利用します。例えば、手振りで目線を顔に誘導する、顔の辺りで持っているペンをゆっくりと振る(メトロノームのリズムが良いそうです)などです。特に後者の場合、体も同じリズムで揺らすようにすると、心身の緊張がほぐれるばかりでなく、口調も同じように穏やかなリズムに自然となります。こうすることにより、会話にも説得力が増すということが期待できます。
ところで、表情について簡単なワークをしてみます。4つの楕円の中に、それぞれ「笑顔」・「怒った顔」・「泣いた顔」・「無表情」を書いてみてください。大抵の人は、それらの表情を目と口で表現されたのではないでしょうか?このことが示すとおり、相手に感情や情緒を伝える上で、目と口が極めて重要な役割を担っていることが分かります。
コミュニケーションにおいて笑顔が重要であるのは言うまでもないと思います。ところが、良く「目が笑っていない」というように、人は意識的に口角を上げることはできても、目の表情を変えるのは難しく、これにはある程度の期間にわたって訓練が必要になります。そこで、笑顔を補うしぐさとして、赤ちゃんの顔を覗き込んであやすように、手を顔の位置で振ります。こうすることで、楽しそう・明るく見えるといった印象を補うことができます。尤も対面交渉の場面ではあまり使われることはないでしょうが、日常のコミュニケーションでは結構役に立つかと思います。
第三に、会話を弾ませるためのしぐさとして、掌を上に向けるというものがあります。実際にやってみたのですが、不思議なことに初対面の相手とすぐ打ち解けることができ、しかも会話がむしろ弾んでしまったほどで、その効果に驚きました。これも仏像や瞑想の時、必ず掌を前ないし上に向けていることから、相手に発するエネルギーに影響を及ぼしているのかもしれません。これには心身をリラックスさせるという働きもあります。もし片手に資料を持っていて、両手を使うことが難しい場合は、できれば左手を使います。左手は右脳と直結しているためです。
第四に、手振り。手振りはとにかく自分の思っている通りにあわせます。例えば、相手から話を引き出したい時は、手招きをするように相手の話を自分に引き寄せるようにします。逆にこちらから伝えたい時は、その通り相手に何かを与えるように、手を内から外に振ります。話をまとめたい時は、その通り両手を合わせ、注目してもらいたい時は、子供が「この指とまれ」で自然にやるように、顔の位置で人差し指を立てます。手や腕のしぐさは、快・不快・自信など、感情をはっきりと伝える重要な役割を担っています。しかも偽りの多い顔のしぐさと違い、腕はその人が何を考え、何を感じ、何をしようとしているかをより正確に伝えてくれるため、自分の感情に合った手振りを適切に補うことは、相手との信頼関係を築く上で大変重要なことと言えます。
まだまだ細かいことは沢山ありましたが、今回の講義内容がより詳しく書かれた本が8月1日に発売予定とのことです。
繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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