窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

雑誌掲載のお知らせ

2011年05月27日 | リサイクル軍手の世界


 サインケイリビング新聞社の横浜情報マガジン、「ハマジン Vol.22」(6月号)34ページにプレゼントとして弊社の「特殊紡績手袋 よみがえり マリアージュ」が掲載されています。

 ハマジンは横浜市営地下鉄駅構内などで入手可能です。

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「TPP開国論のウソ」⑤-戦うごとに必ず殆うし(後)

2011年05月23日 | レビュー(本・映画等)
2.算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況や算なきに於いてをや(始計篇)

  「勝利する条件が整っていれば勝ち、整っていなければ敗れる。まして勝利する条件が全くなかったら問題にならない」。本書で詳細に述べられているとおり、TPPに参加することによるメリットは実現性に乏しく、デメリットの大きさは甚大です。「天を知り地を知れば、勝乃ち窮まらず」(地形篇)とありますが、TPPという自由化政策はデフレ期にデフレをさらに促進するという点で天の利に反し、アメリカを除くTPP参加国には日本が輸出を拡大できるような内需がなく、アメリカも雇用を確保するために輸出拡大の意思を明確にしているという点で地の利もありません。まして、前回みたように交渉の当事者がTPP参加による影響について「よく分かっていない」と発言する始末ですから、まさしく「況や算なきに於いてをや」というべきでしょう。

  「謀攻篇」に「若からざれば、則ちよくこれを避く。故に小敵の堅は、大敵の擒なり」とあります。勝算がなければ、戦いを避けなければならないのです。味方の兵力を無視して強大な敵に戦いを挑めば、敵の餌食になるばかりです。実際、韓国はTPPに参加しても勝算がないことを理解しているので個別FTAを選択することを既に表明しています。よくTPPを安全保障の問題と絡め「TPPに参加しないとアメリカに守ってもらえなくなる」という人がいますが、では、北朝鮮と国境を接し、輸出依存度がGDPの40%を占め、よりTPPに積極参加しなければならないはずの韓国が何故早々にTPPには参加しないと表明しているのでしょうか。韓国は98年のアジア通貨危機でIMFの管理下に置かれ、極端な自由化と緊縮財政を強制されました。その結果、韓国四大銀行の外国人持株比率は何と平均71.25%、三星電子54%、現代自動車49%、LG37%とほとんど外国資本に経済を牛耳られてしまいました。よく「日本の大手電機メーカー9社が束になってもサムスン1社の営業利益に及ばない」と羨む声が聞かれますが、その利益が誰の懐に入るのか明らかでしょう。

  韓国はこの苦い経験があるからこそより極端なTPPではなくFTAを選択しているのです。こうした事例がすぐ近くにありながら、日本は勝算もないのに「平成の開国」などと称して、自らそのような死地に飛び込もうとしているのです。また、メキシコは日本よりはるかに対米依存の高い国ですが、2003年のイラク戦争の際には国連安保理で認められていないという理由で派兵を拒否しました。

  その結果、メキシコや韓国が国際的に孤立、あるいはアメリカとの同盟関係が解消したというようなことがあったでしょうか。アメリカはそれが自国の利益だから同盟しているのであって、自国の利益にならなければTPPに参加して国を差し出したとしても守ってくれる保証などありません。「その来たらざるを恃むなく、吾の以って待つあるを恃むなり」(九変篇)、つまり、敵の来襲がないことに期待をかけるのではなく、敵に来襲を断念させるような、わが備えを頼みとするのであるということですが、国防の問題が心配なら、自主防衛を前提として、さらにそれを強化するための日米同盟を考えるのが筋ですし、その方が両国のためでもあります。

  「TPP開国論のウソ」①の冒頭で「TPP先送り」の記事をリンクしました。それによると、TPP交渉参加の結論を出す時期を「総合的に検討する」としていますが、一方で与謝野馨経済財政担当相が「11月までには日本の態度を決めないといけない」と述べています。11月とは即ち、オバマ大統領の故郷であるハワイで開催されるAPECを指しています。ここで議長国アメリカがTPPを政治成果にしようとしていることは明白なのに、それまで結論を先延ばしした挙句、参加しないなどということが言えるとは思えません。まして、昨年11月のAPEC(横浜)で管首相が「平成の開国」などと事実に反する宣言をしています。日本は既に先進国で最も関税の低い国の一つですから、それ以上の「開国」をするといえば、事実上TPP参加の宣言とみなされるのが常識です。しかも、東日本大震災の4日後にアメリカのフローマン次席大統領補佐官が「最終的な期限は設けないが、APECまでに進展だけさせろ」と言ったそうですが(2011年3月15日付日経電子版に掲載されていたそうですが、削除されているようです)、上の与謝野馨経済財政担当相の発言はこれを受けてのことと思います。

  もし、「11月までにTPP交渉への参加を決めるだけであり、ルール作りは交渉の過程で決めるのだからそんなに騒ぐことではない」というのであれば、楽観に過ぎるというものです。何しろ、横浜でのAPECでTPP参加表明を行った後に「その影響については分からない」と発言するほどの不明さです。その上、2011年1月に前原前外相は「TPP参加は日米同盟強化の一環」と発言しています。仮にそれが本当なら、TPP交渉に参加してその不利に気づいたとしても「安全保障の一環」と位置づけてしまった以上、不都合だからという理由で離脱などできるはずがありません。完全に矛盾しているのです。「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む」(軍形篇)とあるように、勝利を収めるのはあらかじめ勝利する態勢を整えてから戦う者であり、戦いを始めてからあわてて勝利をつかもうとする者は必ず敗北するのです。

  唇亡びて歯寒し(「春秋左氏伝」)、農協など特定の誰かをスケープゴートにしていても、彼らを叩いた後、その災難は諸手を挙げて賛成している人たちのところにも降りかかるのだということを知らなければなりません。結論を先送りしている余裕などなく、今すぐにも不参加を表明しなければならないと思います。

  最後に、『孫子』からこの一文を挙げさせていただきたいと思います。

「亡国は以って復た存すべからず、死者は以って復た生くべからず」(火攻篇)

(国は亡んでしまえばそれでおしまいであり、人は死んでしまえば二度と生き返らない)

「TPP開国論」のウソ 平成の黒船は泥舟だった
クリエーター情報なし
飛鳥新社


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「TPP開国論のウソ」④-戦うごとに必ず殆うし(中)

2011年05月22日 | レビュー(本・映画等)
  「TPP開国論のウソ」①で『孫子』を少し引用しました。2500年も前に編まれた『孫子』が長い歴史の試練に耐え、今日でも広く読み継がれているのは、それが単に軍事に関わる戦略戦術論ではなく、極めて政治的で柔軟性に富み、また戦争の根底に流れる人間の本質にまで踏み込んでいるため、応用範囲の広い内容であるからだと思います。ナポレオンが『孫子』を愛読し、ドイツ皇帝ヴィルヘルム二世が第一次世界大戦に敗れた後で『孫子』に接し、「これをあと20年早く知っていたら…」と嘆いたという話は有名です。

  5回に分けた感想の最後2回は、本書に登場したTPP参加を巡る議論の問題点を『孫子』十三篇から整理してみたいと思います。

1.兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず(始計篇)

  「戦争は国家の重大事であって、国民の生死、国家の存亡がかかっている。ゆえに細心の検討を加えてかからなければならない」。『孫子』の著者である孫武は、2500年も前に戦争とは政治手段の一つであり、国の存亡に関わる極めて重大事であることを認識していました。ゆえに最初に「始計篇」として、戦争の方法を説く以前に、戦争が及ぼす重大性を認識することを説いたのです。外交交渉も国益を巡る国家間の争いですから、その影響について慎重に検討しなければならないという点では同じです。

  「軍争篇」に「故に諸侯の謀を知らざる者は、予め交わること能わず」(諸外国の動向を察知していなければ、外交交渉を成功させることはできない)とあります。当たり前のことなのですが、交渉に当たっては、相手の戦略意図を察知しなければなりません。しかし、TPP賛成論からは、TPPによってアメリカが何を狙っているのかについての考察がまず出てきません。いくら自国の損得を計算したとしても、相手の意図が読めなければ交渉のしようがありません。本書がかなりの紙幅を割き、何故TPPという話が持ち上がったのかの背景について説明しているのはこのためなのです。

  また、その損得勘定がどうも腑に落ちません。経済産業省がTPPに参加しなかった場合の自動車・電機電子・機械産業におけるマイナスの影響を試算しているのですが、『TPP亡国論』で指摘されている通り、その算出根拠が不明瞭かつ恣意的です。逆に参加した場合のマイナス影響については農林水産省の農産物における試算があるのですが、既に述べましたようにTPPが関係するのは輸出製造業と農産物だけではありません。それよりはるかに影響が大きいと思われる金融・投資・政府調達・労働にどんな利益がもたらされるのか、説得力のある説明がありません。

  あまつさえ、国を代表する総理大臣が2011年1月の施政方針演説において、川田龍平議員の質問に対し、「(前略)仮にわが国がTPPに協定に参加した場合に予想される影響については、(中略)どの分野にどのような影響があるのか具体的にお示しすることは困難である」と答えています。また、川内博史議員によれば、TPP担当である平野副大臣が党の部会において「自分たちでさえTPPのことが、よく分からない」と発言したといわれています。有名な、「彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆うし」(謀攻篇)を引くまでもない有様です。

  一方、アメリカの方はといいますと、本書の中で東谷氏が実に興味深い指摘をしています。1987年に対日貿易戦略基礎理論編集委員会が日本の外交交渉における行動を分析ました。一部本書における引用と異なりますが、そこではこう述べられています。

「日本人は外形、外装を重んじるから、最初に理想的な目標事項を示せば、たとえ実行不可能が十分予想される場合でも、頑張ってやるというであろう。彼等は、喜んで自主規制とか目標協力をするであろう。(中略)われわれは、外圧を日本にも利益をもたらすと信じておこなうべきで、日本人にも外圧が予想どおりのものであったと信じさせることが賢明である。」

  情けなくなるくらい図星で、実際90年代以降の日本の外交交渉はほとんどこの通りとなりました。しかもこの論文は『公式日本人論』として邦訳までされているというおまけつきです。

公式日本人論―『菊と刀』貿易戦争篇
クリエーター情報なし
弘文堂


<つづく>

「TPP開国論」のウソ 平成の黒船は泥舟だった
クリエーター情報なし
飛鳥新社


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「TPP開国論のウソ」③-戦うごとに必ず殆うし(前)

2011年05月21日 | レビュー(本・映画等)
  しかも、現在の日本にはこのデフレから脱却するための明確な対策があるのです。本書においてそれを三橋氏が述べているので挙げてみますと、

財務当局と金融当局が一時的に協力して、
①日銀は国債を買取り
②財政当局は財政出動して
③さらに減税を行う

というものです。もう少し具体的に言いますと、日本は世界最大の対外債権国であり、国債は100%円建てで95%国内の金融機関などが持っています。しかも長期金利が世界最低水準なので資金調達がしやすく、長年のデフレで貯蓄過剰状態にあります。そこでこの余っている資金を活用するために国債を発行し資金調達するわけですが、この際に金利が上昇するリスクを抑えるため政府と日銀が協調し日銀による国債の買取り(つまり買いオペ)を同時に行います。政府はその資金で公共事業を行い、需要と雇用を拡大します。そして民間企業に対しては国内投資を促すため、例えば投資減税を行うなどして内需拡大を促進するというものです。

  本書で述べられているように日本のGDPは6割が個人消費ですから、経済を成長させるには内需拡大が最も効果的なのです。内需が拡大してくれば、製造業も国内への依存度を高め雇用が生まれます。国内であれば円高に苦しむこともありませんし、相対的に貨幣価値が下がるので中期的には円安になる可能性すらあります。しかも日本には震災復興は言うまでもなく、高度成長期に作られ耐用年数の過ぎたインフラの再整備、成長分野へのインフラ整備など公共事業を行うべき材料がいくらでもあるといいます。

  これほどまでに明快な日本再生のシナリオですが、三橋氏によるとこの政策提案は何と2003年に当時のFRB理事、バーナンキから出てきたものなのだそうです。2003年といえば、日本国民が「痛みを伴う構造改革」、「郵政民営化こそ改革の本丸」といったキャッチフレーズに熱狂し、デフレ政策に邁進していた頃のことです。アメリカはその頃、不動産バブルでしたからまだ余裕のある提言だったのかもしれませんが、同じアメリカからでも今度のTPPより180度マシだと思います。

  しかし、このシナリオはまだ実現していません。むしろ現実は真逆の方向に進もうとしているようです。TPPが本当に危ういと思うのは、現在明らかになっているだけで農産物や工業製品のみならず、政府調達、電気通信、金融、投資、労働といった幅広い分野において参加国間の貿易自由化を目指しているという点です。デフレにより資産価値が下がっている時にこのような枠組みに参加すれば、企業買収等を通じて食糧、情報インフラ、金融、労働といった国の存亡に関わる重要な分野において外国資本の支配が進む可能性が大いにあります。本書では実際にそのようになった海外の事例を東谷氏が紹介しています。そうすると、仮に政府が上のような政策を行おうとしても、金融機関を支配する海外投資家がNOといえば、できないということになります。投資家は投資収益の最大化が目的ですから、日本国民の生活を守るために得られるはずの利益を放棄するということは考えられません。その時になって道徳論を持ち出して騒いでも遅いのです。

  さらに東谷氏が指摘しているように、過度に自由化を進めた経済協定は、仮に政府が国民生活を守るために何らかの規制や施策を行おうとした場合、それが貿易相手国にとって不利益であれば相手国は国際協定を盾に圧力をかけてくる可能性があります。これをConstitutionalization(経済協議の憲法化)というそうですが、経済自由主義を教条的に信奉している国にそれを内政干渉という理由で拒否する政治力があるとは到底思えません。すなわち、この問題は国家主権が制限されかねないという危険すら孕んでいるのです。たとえ国民が塗炭の苦しみを味わっていたとしても国家になす術がなくなったとき、一体誰が守るというのでしょうか。

<つづく>

「TPP開国論」のウソ 平成の黒船は泥舟だった
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「TPP開国論のウソ」②-泣いて馬謖を切る(後)

2011年05月20日 | レビュー(本・映画等)
  さて、「街亭の戦い」における馬謖の判断は、経済自由主義に対する「絶対的価値観の持ち主」たちの主張とよく似ています。その具体的な例は本書の中に多数掲載されていますのでそちらをお読みいただきたいのですが、概ねその絶対的価値とは次のように要約されると思います。

・グローバルな競争で鍛えられることにより、企業の生産性は上がり競争力が強化される
・市場メカニズムにより効率的な資源配分がなされ、経済厚生は増大する
・ゆえに市場の機能を阻害する要因は撤廃しなければならない

  とにかく、市場に委ねさえすれば「見えざる手」により自然と望ましい方向に調整される、と考えている節があります。確かに経済の自由化により企業の生産性が上がり効率よく財を供給できるようになるかもしれません。しかし、本書で再三指摘されているように、それが望ましいのは需要に対して供給が不足している、いわゆるインフレ経済である場合なのです。逆に供給に対して需要が不足している状態が続くことをデフレ経済といいますが、このような状況下で供給を増やせばますます需給ギャップは大きくなり、デフレは深刻化します。いうまでもなく、日本はもう20年近くデフレに苦しんでいます。このようなときに供給を増やすような政策を採ってはならないのです。にもかかわらず、自分たちの置かれている環境がどうであれ経済自由化が絶対的に正しいと考えるのは、まさに「街亭の戦い」における馬謖と同じです。

  デフレとは継続的な供給過剰のことですので、物価が下がります。物価が継続的に下落する局面では、資産価値が目減りしていくので、投資を控えようとします。投資を控えると需要が縮小するので、さらに物価が下落するという悪循環が続きます。日本はバブル崩壊からまだ立ち直りきれていない1997年に橋本政権が緊縮財政(政府支出の削減)と消費税増税(個人消費落ち込み)を同時に行って需要を縮小させ、先進国では戦後初となるデフレに突入しました。なお追い討ちをかけるように2001年からはいわゆる小泉構造改革と呼ばれる緊縮財政と自由化政策が採られ、デフレが深刻化、当然、賃金は下がり、失業率も増加しました。



  実際にIMF、総務省、警察庁などの統計を元に1980年を100とした場合の各指数の推移を見て見ますと、まさに1997年から98年を境にデフレに転じ始め、失業率が急増しています。失業率は2003年から2007年にかけて低下していますが、これは先のバブルによってアメリカの消費需要が旺盛で、それに伴い輸出が増加したことと対応しています。ところがその間、平均賃金の方は低下しているのです。本書で述べられているように、グローバル化によって「底辺への競争」が起こったためです。

  さらに、1997年を境に自殺者が急増し、以降今日に至るまで年間自殺者数が3万人を超えています。イラク戦争後の2006年に暴力やテロによるイラク人の死者は1万6千人、イラク戦争開始後、2006年までに死亡した米兵の数は3千人です。ところが日本では戦争もしていないのに、国民が毎年3万人以上も自殺しているのです。



  平成22年の場合、自殺者のうち原因・動機が特定されたのは74.4%。その内訳として、経済・生活問題と勤務問題を動機にしたものが30%を占めています。しかし、動機不明が25.6%、家庭問題やこの10年で職場のメンタルヘルスなどが問題となったことを考えれば、健康問題もこの長期の不況と全く無関係ではないと思います。

  先に見たように、20年近くに渡るデフレは政策ミスによって起こったものです。繰り返しになりますが、経済政策の舵取りを誤ったことによる人災は大震災に勝るとも劣らないのです。それにもかかわらず、まして東日本大震災によって大きな打撃を受けたばかりというこの時に、デフレをさらに促進するばかりか、国家主権を脅かしかねない金融、投資、政府調達、労働等の自由化までもが盛り込まれているTPPに「乗り遅れるな!」と進んで飛び込もうとしているのです。

  パレート最適な社会がどんなユートピアなのか知りませんが、少なくとも理論的に望ましいが、実態として失業者や自殺者を増やす社会より、理論的に多少非効率かもしれないけれども、賃金が上がり、失業率が下がり、自殺者の少ない社会の方を僕は選択したいと思います。

<つづく>

「TPP開国論」のウソ 平成の黒船は泥舟だった
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「TPP開国論のウソ」①-泣いて馬謖を切る(前)

2011年05月19日 | レビュー(本・映画等)
「TPP開国論」のウソ 平成の黒船は泥舟だった
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飛鳥新社


  本書を読み終えた2011年5月17日、「TPP先送り、成長戦略は見直し=政府が政策推進指針」という記事が掲載されました。これを読んで、「政府はTPP参加を断念した」と思われた方、あるいは「TPP参加の是非は確かに議論すべき課題であるかもしれないが、東日本大震災という未曾有の国難に直面している時に、関わっている場合ではない」とお考えの方には、ぜひ本書をご一読されることをお勧めします。

  なぜなら、本書はTPPという貿易協定の枠組みがいかに日本の国民生活にとって危険なものであるかを論拠を明らかにしながら丁寧に指摘しているのみならず、TPP参加を巡る論議の中に現れている、政府の意思決定過程や言論界の粗末さ、危うさを徹底的に洗い出しているからです。これを読まれれば、大震災に勝るとも劣らぬ人災がすぐそこまで迫ってきていることがお分かりになることでしょう。その点においては、前回ご紹介した『TPP亡国論』と同じなのですが、今回は共同執筆者に三橋貴明氏と東谷暁氏が加わり、さらに内容の濃いものとなっています。

  さて、『自由貿易の罠 覚醒する保護主義』でも述べたことですが、あらゆる分野において関税をはじめとする貿易障壁を撤廃するという過激なTPPという枠組みを是とする人たちの根底には、やはり「経済自由主義」(市場原理主義)に対する無批判な信仰があります。そもそもTPPの根拠が経済自由主義ですから当然なのです。問題はこう主張する人たちの多くが、いかに現実の経済が理論とはかけ離れた結果を生んでいようと、理論が正しく、現実の経済の方が理論を忠実に守らないから失敗するのだと考えているという点です。そこで、「改革をしなければならない」となるわけです。

  こうした人たちを三橋氏は「絶対的価値観の持ち主」と呼んでいますが、このような考えに接すると、僕はいつも小説『三国演義』の「街亭の戦い」を思い出します。「泣いて馬謖を切る」の故事で有名な、蜀の参謀馬謖の話です。

  蜀軍の拠点として極めて重要な街亭の守備を命ぜられた馬謖は、出陣に際し、蜀の丞相である諸葛亮から再三「街亭の死守」と「高地に陣取ってはならない」という注意を受けていたにもかかわらず、高地に陣取ってしまいます。しかし、攻め寄せてきた魏軍に山を包囲され、水源を絶たれた上、火攻めに会い壊滅的な敗北を喫してしまうのです。これにより蜀軍は遠征を断念し、撤退せざるを得ないほどの打撃を蒙りました。馬謖はその責任を問われ処刑、これが有名な「泣いて馬謖を切る」の故事です。

  確かに、最も優れた兵法書といわれる『孫子』には、「およそ軍は高きを好みて下きを悪む」(行軍篇)と書かれているのです。しかし、『孫子』は同時に「地に争わざる所あり」(「水や食糧の確保できないような」占領してはいけない土地というものがある)とも述べています。馬謖は「勢とは利に因りて権を制するなり」(始計篇)、すなわち原則はあくまで原則であり、用兵は状況を総合的に判断して臨機応変になされなければならないという、兵法の基本を見落としていたのです。

  さらに馬謖は、副将である王平から「高地に陣取り、もし敵に水源を絶たれたらどうするのか」と問われています。これに対して馬謖は、「そうなれば兵は生き残るために必死になって戦うにちがいない」と答えました。これはこの時代より遡ること400年、漢の名将韓信による「背水の陣」を念頭においての発言であろうと思われます。しかし、オリジナルである韓信の「背水の陣」は、決して窮地を脱するための起死回生の策としてこのような行動に出たのではなく、実は不利な状況と見せかけて敵を城からおびき出し、その隙に別働隊が城を占領する陽動作戦を成功させるために準備された、周到な作戦だったのです。これについても『孫子』には「これを亡地に投じて然る後に存し、これを死地に陥れて然る後に生く」(九地篇)とあるのですが、馬謖が韓信と決定的に異なっていたのは、韓信が周到な準備の上で兵を奮起させるため窮地に追い込んだのに対し、馬謖は窮地に追い込めば兵は必死になって戦うだろうと因果を倒錯していたという点にあります。

<つづく>

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第8回YMSを開催しました

2011年05月18日 | YMS情報
 去る5月11日に開催した第8回YMSですが、僕が都合により出席できなかったため、今回は公式HPからのリンクでご紹介させていただきます。

http://yms.hama1.jp/e908657.html

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日本プロ野球2011 横浜vs巨人5回戦

2011年05月12日 | スポーツ観戦記


  5月11日、10年振りぐらいになると思いますが、東京ドームへ野球観戦に行ってきました。

  意外なことに、当ブログの「スポーツ観戦記」に野球は初登場となります。他のスポーツであれば仮に贔屓のチームが負けてもブログに書くのですが、33年も観続けている野球だけはどうも負けると書く気になれなかったためです。

  実は昨シーズンも5試合球場に足を運んだのですが、3年連続、過去10年で7回最下位という成績が示すとおり、横浜ベイスターズは全敗。負けるだけならまだしも、その内容も到底ブログに書けるようなものではありませんでした。

  一昨年以前はもう覚えていませんが、このブログで野球を取り上げるのが初めてということは、恐らく2008年以降、球場で観戦して勝った試合はなかったのだろうと思います。



  さて、今シーズンもすでに3連敗2度、5連敗1度を数え、最大借金7でひとり取り残されていたベイスターズでしたが、ここ数試合は調子を上げこの日まで4連勝中。昨年は3連勝すらなかったと思いますので、ファンとしては奇跡のような1週間ではなかったかと思います。先発投手がとりあえず試合を作れるようになってきたこと、個人的には捕手を細山田選手に固定したことが大きいと考えています。それでも連日連投で中継ぎ投手陣の負担は相当重くなっており、厳しい台所事情であることに変わりはありません。

  この日も先発は中継ぎから先発に回って0勝2敗のハミルトン投手。一方の巨人は大物新人の澤村投手。普通に考えて苦戦を強いられるであろうと予想していました。



  ところが、試合は2回表に先頭打者の村田選手がライトスタンドに豪快なホームランを放ち、横浜が先制。3回表も横浜にバント失敗というミスがありながら、2アウト2塁より渡辺選手の内野ゴロをセカンドの脇谷選手が悪送球して2点目。巨人は三振振り逃げに牽制悪送球から自滅した前日の試合を髣髴とさせるまずいプレーでした。



  横浜先発のハミルトン投手は思いのほか制球が良く、ストライクの先行するピッチングで4回まで巨人打線を1安打に抑えていましたが、5回に突如崩れて連打を浴び、2点を失って降板しました。中継ぎからの転向なので、この内容であれば上出来だったと思います。



  この少し嫌なムードを直後の6回表、あまり調子の良くないハーパー選手が外野手が全く動けないくらいの豪快な2ランで払拭します。振り出しに戻った直後の2点だけに試合の流れを決定づけるホームランだったと言えます。



  そして最終回はこの所調子を上げてきている抑えの山口投手。彼にはぜひ自信をつけ飛躍のシーズンにして欲しいと思います。



  巨人も田中選手の二塁打から二死三塁とし、一打同点の好機を作りましたが、最後の坂本選手がショートゴロに倒れ試合終了。この日の坂本選手は全くタイミングが合っていませんでした。4vs3、これで横浜は驚きの5連勝となりました。

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ARINCOの春限定シーズンロール「春」

2011年05月10日 | 食べ歩きデータベース


  桜木町駅を出てすぐのコレットマーレーに入っている、ARINCO(アリンコ)というロールケーキ屋さんの春限定ロールケーキです。

  先日そのあまりの美味しさに衝撃を受け、また食べてしまいました!



  いちごクリームをしっとりとした純白のスポンジで包んだロールケーキなのですが、クリームの中に小豆と牛皮という和のテイストが入っています。クリームあんみつのような、クリームと小豆の相性の良さもさることながら、ロールケーキと牛皮の組み合わせが絶妙の食感を演出しています。それでいて全体として主張しすぎたところがなく、さりげない甘み、見た目も薄い桜色で本当に春らしい逸品だと思います。

  春限定との事なので、ひょっとしたら今月で終わってしまうかもしれません。


ARINCO Colette-Mare みなとみらい店

横浜市中区桜木町1-1-7
Colette-Mare みなとみらいB1



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検定ごっこ-安全衛生検定

2011年05月09日 | ナカノ株式会社検定
  ナカノ株式会社は繊維リサイクルを本業として創業しましたが、一方で40年以上にわたり製造業の現場で使用する安全保護具、産業副資材をお届けし続けてきたサプライヤーでもあります。

  ナカノ株式会社検定第3弾は、中核事業でありながらホームページ等でもあまり触れられる機会の少ない、サプライヤーとしての側面に焦点を当ててみました。



  少し難しいかもしれませんが、当社のまた違った一面を感じていただけるのではないかと思います。ぜひ挑戦してみてください。

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