窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

経済はナショナリズムで動く

2008年10月30日 | レビュー(本・映画等)
  前作『国力論-経済ナショナリズムの系譜』の続編とも言うべき本です。経済思想史的側面が強かった前作に比べ、今回は世界経済がグローバリゼーションと呼ばれて久しいにもかかわらず各国の経済政策がよりナショナリスティックな度合いを強めていること、即ち各国がネイションを基礎においた経済・外交政策を展開している中でわが国がそれを見失い、市場に委ねれば何となく望ましい方向に向かうのではないかという幻想に埋没して俗に「失われた10年」と呼ばれる90年代、そしてこの21世紀最初の10年を経過しつつあることをより現実の事象に照らして述べています。

 経済活動の目的はあくまで国富、それは単純にお金だけでなく政治力、外交力、文化、国民の能力などを含んでいるのですが、の増大にあり、経済活動を市場に委ねるかあるいは政策による介入を必要とするのかはその目的に寄与するか否かで決定されるのであり、決して「市場か政府か」というような対立関係で捉えるべきものではありません。

 本書を通し一貫して述べられている主張は、それらもまた国力を構成する要素である企業経営において、また一個人においても適用可能だと思います。したがってこの本をビジネス書として、また自己啓発の書として読むこともできます。

 例えば90年代以降、企業は株主の所有であり株主価値最大化だけが企業活動の目的である、また80年代までの日本型資本主義は戦時体制を引きずった異質なものであり、アメリカ型(と信じられている)資本主義のみが普遍的なモデルであると言われてきました。しかし経済活動はネイションを形作る文化や歴史などから起こるものである以上、資本主義のモデル、ミクロなところでは企業のあり方も多様性をもつと考えるのが自然です。

 そうすると我々は多様な企業の中から自分の企業を企業たらしめている要素を把握し、それを企業力と呼ぶなら企業力の増大こそが企業活動の目的になります。企業のあらゆる経営戦略は企業力の増大に寄与する限り様々なパターンが考えられるのであり、例えば「年功序列から成果主義が世界経済の潮流」といったもので判断されるべきものではありません。

 より個人のレベルでいえば、それは自分のアイデンティティを見出す作業に似ています。例えば何かの資格を取ったから市場原理のように「見えざる手」によって自己実現が図られるのではなく、家族、友人、国家、歴史、死後の未来までも含めた様々な要素との相互関係によって自己は形作られているのだということを認識する必要があります。自己実現とはそれら要素との関係をよりよいものにするため自律的に行動してはじめてなされるものであり、人の行動はその営みに寄与するかどうかで是非が判断されるのであろうと思います。恐らく道徳や慣習はそのような営みの中から形成されてきたのではないでしょうか。

 話がだいぶそれてしまいましたが、本書を読んだ後、改めて前作『国力論-経済ナショナリズムの系譜』を読むと経済思想史に馴染みがなく前作がとっつきにくかった方でもより理解しやすくなるのではないかと思います。

経済はナショナリズムで動く
中野 剛志
PHP研究所

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NPO法人ごみじゃぱんヒアリング

2008年10月30日 | リサイクル(しごと)の話
 10月15日に香港より関西空港に降り、そのまま神戸へ向かいました。神戸に行ったら必ず立ち寄る店があります。以前ご紹介した炭火焼ステーキの店、三ノ宮北野坂の入口にある「カルネ」さんです。



 今回は前から気になっていたアワビのバター焼きを食べました。本当は香港の最終日から腹を下していて肉など食べられる状態ではなかったのですが、薬を飲んでカルネ訪問を強行しました。



 翌日、NPO法人ごみじゃぱんの代表で神戸大学教授の石川雅紀先生にお話を伺う機会があり、初めて神戸大学を訪問しました。見晴らしの良い高台にあり、おしゃれな雰囲気のキャンパスでした。



  ごみじゃぱんは2005年にごみゼロパートナーシップ会議がまとめた「簡易包装普及のためのシステム検討委員会平成15年度報告書」において立てられた「ごみ問題を知り、インセンティブが与えられれば、生活者はごみが少ない商品選択を行うという仮説を実証するためのNPO法人として設立したそうです。活動は石川ゼミの学生が中心となり消費者、事業者、教育研究機関及び行政と連携して、簡易包装の普及、ごみの分別とリサイクルの向上、新たなリユースチャンネルの開発及びごみを少なくするための商品の製造・販売等に関わる社会実験を実施しています(一部ごみじゃぱんHPより引用)。



  たとえばこれは大学構内のカフェテリアで見つけたのですが、「REVALUE」といって化粧品などの棚落ち品を従来はメーカーが廃棄していたのですが、それを大学生協で安く販売するという取り組みです。

  石川先生は学者というよりビジネスマンではないかと思わせる雰囲気の方で、饒舌、ご多忙の中作っていただいた2時間が本当にあっという間に過ぎてしまいました。「意識を変え、購買行動を変え、容器包装のごみを減らす」という確固たる中心軸を据えた上で様々な活動に取り組んでおられる(詳細はごみじゃぱんのHPをご覧ください)お話は再生資源業を営む我々にも大いに参考になりました。



  というわけで先生の研究室を出たときにはこのとおり外は真っ暗になっていました。キャンパスからは神戸の夜景がきれいに見渡せます。このまま新神戸に戻り、次の出張先である大阪へと向かいました。

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玄武山(仏祖廟・元山寺)

2008年10月28日 | 史跡めぐり


  10月13日、たまたま通りかかった広東省陸豊の碣石鎮にある玄武山という寺院に立ち寄りました。南宋時代の1127年に造られ、現在残るのは16世紀の終わりごろに増築されたものです。広東東部で広く信仰されている北極真武元天上帝を祀っていますが、釈迦、観世音、弥勒なども祀っており道教に仏教が渾然一体となって彼らを守るという中国南方の人々の宗教観を象徴したような寺院です。アヘン戦争で有名な林則徐の書など重要文化財も多く保存されています。



  中国の重要文化財に指定されており、旧正月などは大変賑わうそうです。



  境内の一番奥には石塔があり、三層目まで登ることができます。



  塔の上からは碣石の町並みや碣石湾が一望できます。

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香港-南蓮園池

2008年10月28日 | 海外での出来事


  10月12日、上海から香港に移動しました。香港も今までトランジットで空港に降りたことがあるだけで実質初めてになります。香港では仕事と夕食の間に時間ができたので、「南蓮園池」というかなり大きい公園に行ってきました。



  南蓮園池は10年ほど前、香港返還の直後に開園した公園です。写真は撮れませんでしたが、現代の陶芸家による陶磁器の展示や中国の木造建築技術の変遷を紹介した展示室などなかなか見所があります。地味なところでは至るところに植えてある木々もかなり立派なものがあります。



  園内のあちこちにある建物は唐代の建築様式を模して作ったということで、上の写真のように最初はそれらしい雰囲気なのですが、次第に雲行きが怪しくなってきます。



  この萱葺きの建物は本当に中国様式なのでしょうか?



  ↑金閣寺?



  このお寺に至ってはまるで平等院鳳凰堂そのもの。香港人から「日本式の建築ですか?」と聞かれたほどです。阿弥陀様が外から拝めるよう円形の穴が開いているところまでそっくり。

平等院鳳凰堂→ http://www.byodoin.or.jp/

 勿論日本の建築に唐の影響がないはずはありませんが、平等院鳳凰堂は国風文化の最盛期に建てられたもので遣唐使廃止から150年、唐の滅亡からも140年以上経過しています。藤原氏が140年前に滅亡し、しかもその10年前に多額の費用と危険を冒してまで遣使するには及ばないと遣唐使をやめてしまっているほど衰微した唐に憧れ、その建築様式を以って極楽浄土を模した鳳凰堂を建立したとは僕にはちょっと考えられません。現代で言えばちょうど140年前に滅亡した徳川幕府の建築(例えば江戸城か何か)をまねてユートピアを作ろうというのと同じになるからです。

 いずれにしても作り物の公園なので真面目に考えてもあまり意味はありません。それよりこのように大きな公園は、とかくごちゃごちゃした香港としては異質な空間とも言えます。喧騒を離れ、公園内に流れている七弦琴の音色に耳を傾けながら、ご愛敬の建物群と錦鯉を楽しむのもいい思い出になりました。

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上海リニア

2008年10月28日 | 海外での出来事


 せっかく上海に来たのだからと浦東空港までリニアモーターカーで行くことにしました。中国語では磁懸浮車と呼ばれていて、読んで字の如く世界初の商用浮上式リニアモーターカーだそうです。



 前の2両が一等車でしたが、我々のほか誰も乗っていませんでした。駅が市街地から遠く離れている上、現地の感覚では割高だそうで乗客は外国人ばかりです。



  空港までの所要時間はわずか8分。430kmくらい出すと聞いていたのですが、この時は最高時速301kmどまりでした。車体の形状から予想はしていましたが、案の定結構揺れます。日本人だったらN700系のように省エネ、静粛性、乗り心地など細かいところに徹底的にこだわるのでしょうが、ここではとにかく世界に自慢できるものがあれば可、といった感じです。

  日本におけるリニアモーターカーの実用化は2025年頃だそうで、かつてこの分野で世界の先端を行っていたにもかかわらず、ドイツやフランスにずいぶん遅れをとったものです。僕が子供の頃には既に試験線で時速500kmを記録していたのですから、作る以上はあっと驚くようなのを期待しています。

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中国のワイン

2008年10月27日 | ワイン・日本酒・ビール
 中国に来たら是非試してみたいと思っていたものがほかにもあります。それは中国のワインです。中国のワインというと日本ではまだあまり馴染みがありませんが、実は中国は生産量、作付面積とも世界第6位(2006年時点)という世界有数のワイン産出国、生産量はオーストラリアを凌ぐのです。



 中国に滞在している間飲んだのは「長城 1998年」(カベルネソーヴィニョン、メルロ)と「王朝 1998年」の2本。いずれもそれほど高くなかったような気がします。



 長城は最初少し物足りないのですが、しばらくおいて空気を含ませると次第に落ち着いてきてコクがでてきます。渋みが少なく飲みやすいのですが、個性に欠けます。ただこの時は日本のものとは比べ物にならないほど辛い四川料理に合わせたので、それでも十分美味しく飲めました。一方、王朝はさらに個性に乏しくテーブルワインに毛が生えた位の印象でした。

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上海蟹(大閘蟹)

2008年10月27日 | 食べ歩きデータベース


 蘇州から上海に戻り夕食にありついたのは21時頃でした。シーズンは始まったばかりとのことでしたが、せっかく上海に来たので上海蟹を食べに行きました。現地では「大閘蟹」と呼ばれているようです。「九月の雌、十月の雄」といって今は雌が美味しいというので腹を見て雌だけを選んで食べました。

 子供の頃読んだ中島嶺雄の本に「上海蟹は本来味噌だけを生姜醤油で食べる」と書いてあったような記憶があるので、敢えて味噌だけにしました。本当はこのサイズの蟹は肉を食べるのが面倒なだけですが。

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リサイクルデザインフォーラム2008

2008年10月26日 | リサイクル(しごと)の話


 横浜資源リサイクル事業協同組合主催の「リサイクルデザインフォーラム2008」が本日横浜大桟橋埠頭で開催されました。フォーラムは今年で9回目を数えますが、おかげさまで年々ご来場者数が増え今年は約6,300人もの皆さんにご来場いただきました。



 同じく今年で9回目を数える、横浜市内の小学生による「環境絵日記」も今年は応募数が9,000枚を超え、会場にはその内の540枚が展示されました。今年のテーマは従来のリサイクルから「地球温暖化」と小学生には少々難しいのかと思いましたが、蓋を開けてみると秀作ぞろいで多くの来場者の眼をひきつけていました。

 リサイクルデザインフォーラムでは毎年子供にもリサイクルを分かりやすく伝えるよう工夫を凝らしたイベントが数多く実施されます。僕もスタッフとして参加していたので一部になりますが、ここで今年開催されたイベントをご紹介したいと思います。



 こちらは横浜の小学生・中学生によるアルミ缶プロジェクトの表彰式です。学校で空き缶を回収して車椅子と交換するというものです。



 「希望の葉っぱ」。子供たちが未来への希望を葉っぱの形をした紙に書いて貼っていきます。「希望」について考える、子供も大人もなかなかないことではないかと思います。



 横浜市金沢区と都筑区で幼児から中学生までの理科実験教室を展開している「アインシュタインラボ」の北原先生による科学実験ショー。液体窒素などを用いて物質が温度によってどのように変化するのかを分かりやすく実験していただきました。



 小学生による「こども環境会議」。毎年開催しているので2度目、3度目の参加になる児童さんも。「環境絵日記」も秀作だけあって子供らしいアイデアに溢れていました。今年は北原先生による「自分が体から出しているCO2、見たことある?」という趣旨で吐いた息を凍らせたりする実験も加わり、異色の会議となりました。



 会場ではリサイクル商品のティッシュ、紙紐、トイレットペーパーなども販売していました。これらの商品は横浜資源リサイクル事業協同組合で常時販売しています。



 毎年人気のある「3R買い物ツアー」。3R、つまり発生抑制>再利用>再資源化という資源活用の優先順位について一通りの説明を受けた後、子供たちがいかに環境に負荷をかけない買い物をするか、買い物ごっこをする催しです。もちろん終わりにはどうしたらより環境負荷の低い購買行動ができるか分かりやすく説明してもらえます。



 横浜資源リサイクル事業協同組合のキャラクターである「りくみちゃん」や「へらぞう君」をデザインしたエコバッグ作りです。



 年配者の指導による昔懐かしい「ブンブン工作教室」です。僕も子供の頃よく牛乳瓶の蓋で作ったのを思い出しました。



 こちらはファイバーリサイクルネットワークによる布の切れ端を使った「金魚づくり教室」。余った布で下のようなかわいい金魚の飾りができます。子供が自分で作った金魚と一緒に写真を撮ってもらっている嬉しそうな姿が印象に残りました。



 ネットワークの方によると今年は去年を上回る120個分の材料を用意したにもかかわらずあっという間になくなってしまったとの事です。



 自転車発電体験ができるコーナーです。もし自転車漕いで発電しないとテレビが見られないという世の中になったらメタボ問題も解決ですね。



 明治学院大学の学生さんによる「分別ツアー」です。このほか横浜市立大学の学生さんによる「ぬりえコーナー」も人気を博しました。



 16:00に無事閉幕。撤収作業に入ったときにはもう暗くなっていました。会場のテーブルや掲示板として使われた大量のダンボール、これらもきちんとリサイクルされます。それが私たちの仕事ですから。

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蘇州-盤門公園

2008年10月26日 | 史跡めぐり


 剣池を訪れ、確か蘇州には闔閭が伍子胥(「死者に鞭打つ」の故事で有名)に命じて作らせた水門八門の一部が残っているらしいということをふと思い出しました。そこで虎丘をあとに上海に戻る予定であったところ無理をお願いし古城遺跡公園に案内してもらいました。



 盤門公園の入口はまず開元寺です。開元寺の創建は三国時代に遡り当初は通玄寺と呼ばれました。



入るとすぐに高さ43m、八角七層の瑞光塔という木造の塔があります。この塔は北宋代のものです。目当ての盤門は左側の一番奥にありました。



 蘇州の築城は紀元前508年のことですが、現在残る城郭の一部は元代のものです。しかしそれでも冒頭の写真のような陸門や上の水門が組み合わされ、敵の侵入を防ぐ工夫が随所に見られます。



 こうして城門を眺めていると伍子胥が伯嚭の讒言を受け呉王夫差に自害を命じられた際、「吾が目を抉って、東門に懸けよ。以て越兵の呉を滅ぼすを観ん」と言った故事が頭に浮かんできます。



なお盤門の傍にはこの伍子胥を祀った伍相祠という祠があります。



 また盤門の楼閣からは水路にかかる呉門橋がよく見えます。この橋は宋代に作られましたが現存するのは清代の1872年のことです。虎丘の雲岩寺塔とならびこの呉門橋は蘇州のシンボルといえるのではないでしょうか。

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蘇州-虎丘

2008年10月26日 | 史跡めぐり


 10月9日は蘇州に行ったので、上海に戻りがてら「臥薪嘗胆」の故事で知られる呉王夫差が父の闔閭(『孫子』を著した孫武が使えた主君であり春秋五覇の一人として有名です)を葬った虎丘に立ち寄りました。葬儀の3日後、墓の上に白い虎が現れたことから虎丘と呼ばれるようになった、あるいはこの陵墓の丘全体が虎の姿をしているからともいわれています。恐らく皆さんもご存知の蘇州を代表する名所のひとつです。ちょうど国慶節の連休が終わったばかりであったためか閑散としており、ゆっくり見て回るには幸運だったのではないかと思います。



 上の写真は試剣石と呼ばれるものです。見ての通り石が真っ二つに割れているところから、呉王闔閭が鋳造させた雌雄の宝剣干将・莫耶の試し切りをした石という言い伝えがあります。同様に甘露寺にも三国志で有名な孫権と劉備が覇業の願をかけて剣で断ち切ったと伝えられる試剣石があります。

 話を戻しますと、春秋時代末期、当時の中華文明の中心から遠く南に外れた呉が勢力を拡大した背景にはこの地における鋳鉄技術の発展がありました。というわけで今や名剣の代名詞となっている干将・莫耶以外にもこの時代には様々な名剣にまつわる言い伝えがあります。



 呉王闔閭の墓とされる剣池の入口に彫られた「虎丘剣池」の文字です。唐を代表する書家、顔真卿の作という説がありますが、本当かどうかは分かりません。そう言ってしまうと先ほどの試剣石を含め剣池が闔閭の墓かどうかも確たる証拠はないのですが。



 剣池、一説には闔閭を埋葬する際に魚腸剣をはじめとする3,000本の剣を副葬したから、またある説にはこの池そのものが剣の形をしているからそう呼ばれるようになったとも言われています。

 魚腸剣というのは闔閭が先王であり従兄弟でもある呉王僚を王の好きな魚料理に忍ばせた剣で暗殺したことから魚腸と呼ばれるようになった名剣で、いわば闔閭を王位に就け呉に覇を唱えさせた所縁の品といえるでしょう。



 剣池は50年代、70年代に池の水が抜かれました。その結果池の底から人造物と思われる石の構造物が現れ、ここが闔閭の墓であるという言い伝えが事実であることが確認されるかと思われたのですが、上の写真に見て取れるように剣池は大変複雑な石の構造物から成り立っており、発掘するとそれら自体が崩落してしまうのではないかとの恐れから時の周恩来首相の判断により発掘調査は行なわれなかったのだそうです。そもそも文献が伝える闔閭の墓は「銅槨三重、水銀を傾けて池と為し、黄金珍玉を鳧雁と為る」とされ、万が一これが事実であるとすれば発掘すること自体の危険も考えられたのかもしれません。いずれにしてもここが闔閭の墓ではないかという歴史のロマンは残されたまま現在に至っています。



 蘇州といえば必ず写真などで目にするのがこの「蘇州の斜塔」と呼ばれる雲岩寺塔ではないでしょうか。雲岩寺塔は北宋代の961年に建てられた高さ47.5m、蘇州に現存する最古の塔です。写真の通り傾いているのですが既に補強工事が施され倒壊の恐れはないそうです。

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