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news commentary

出口のない銃社会

2015-12-06 00:09:55 | Weblog

最近のワシントン・ポスト紙の報道によると、サン・ベルナルディーノであった銃による大量殺戮事件は、この種の事件としては今年(2015年)355番目の発生だという。民間の銃被害調査団体が、銃撃した犯人を含む4人以上が射殺ないしは負傷した銃撃と定義しなおして計算すると、全米の銃による集団無差別殺戮は1日1回の割合で起きていることになる。(FBIの定義によると、大量銃撃事件とは一度の襲撃で4人以上が射殺された事件をいう)

銃の所持にきびしい規制をかけるしかないのだが、アメリカ合衆国ではそれが難しい。憲法修正第2条に「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であり、国民が武器を保有し携行する権利は、 侵してはならない」(A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.)とあるからだ。

この条文はアメリカの内戦・南北戦争より半世紀以上も前の18世紀末に書かれた。当時は銃をもった民兵が戦力になった時代である。世界最強の軍事力を持つ現在の米国に、いまさら民兵の必要はないであろう。全米ライフル協会(NRA)は米国最強の圧力団体で、憲法修正第2条を盾にして銃の流通を守ろうとしている。そういうわけで、米国で市民を丸腰にする政策は望み薄である。

NRAのロビー活動の効果あって、米国は世界で最も銃所有率が高い。人口の約9割が銃を持っている計算になる。

NRAは「銃は人を殺さず。人が人を殺す」をモットーに掲げている。アメリカの銃犯罪の氾濫は、銃があふれていることが原因ではなく、銃を使う人間に問題がある、というわけだ。そのような物騒な人間が徘徊している社会で生きていくためには、銃を持っていない人はすぐ銃を持ち、1丁だけの人は2丁に増やして備えを怠るな、というお説教になる。

統計によると、米国に次いで人口当たりの銃保有率が高い国はイエメンで、50パーセント強、3番目に高いのはスイスで、国民の5割弱が銃を保有している。

だが、スイスでは米国に比べて銃による犯罪がきわめて少ない。「銃は人を殺さず。人が人を殺す」という説にしたがえば、スイス人に比べて米国人は極めて人殺しに走りやすい性癖をもつという理屈になる。米国人がスイス人のようにならない限り、米国では銃犯罪が防げない、という理屈になる。

以上の話には仕掛けがある。スイスは国防のために国民皆兵の制度を敷いており、徴兵期間が終わった国民は予備役に回る。予備役には国家から銃が貸与される。銃は貸与されるが、弾薬は軍が集中管理している。銃を犯罪に使うには、それで人をぶん殴るしかないのだ。


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