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news commentary

ゴーン・ドロン

2019-12-31 21:48:54 | 社会

日産・ルノーのすったもんだのあげくに特別背任などの容疑で逮捕され、現在は保釈中で移動制限を受けているカルロス・ゴーン被告が日本を脱出してレバノンに入国した、という報道があり、続いてご本人の日本脱出声明もでた。

グローバルな商売をしている国際企業の経営専門家の多くは、企業から甘い汁を吸い取り法外な収入を得ている――それを正当な報酬だと考え、決して不道徳なハゲタカ行為だとは思っていない――人々である。アメリカ企業ではとくにその傾向が強烈である。

ごく最近も社内恋愛問題などでクビになった米マクドナルドのCEOが70億円ほどの退職金をもらうことになるだろうという報道があった。このCEOの現職のころの年収は20億円で、ヒラの従業員の平均年収の2000倍ほどだったという。1人の人間が2000人分の労働を担えるわけがないので、マルクスの労働価値説によれば、CEOの年収は剰余労働が生み出した価値の搾取である。

ゴーン被告の日本脱出は、火つけ盗賊が島ぬけしたとか、ナポレオンがエルバ島から脱出したとか、その手の深刻なニュースではない。強欲経営専門家が日本の裁判を嫌って逃げ出しただけの話だ。話題性はあるが、一般人にとって深刻な社会問題とは言えない。深刻なのは面子をつぶされた裁判所・弁護団・法務省だろう。

ゴーン被告はプライベート・ジェット機でレバノン入りしたそうだから、いかにもklepto-business 界のエリートらしい脱出劇だった。日本へプライベート・ジェット機で到着、入国手続き後に逮捕されたゴーン被告は、おそらく今回、日本の空港で出国手続きした後、プライべート・ジェット機に乗り込み、日本におさらばしたと想像される。

日本の検察当局も、ゴーン被告の弁護団もゴーン被告の逃亡につては知らなかったという態度である。ゴーン氏のあのアクの強い面相は一度見たら忘れようもない。あれだけ日本のテレビに登場した顔だから、出入国管理を担当する現場の審査官でゴーン被告を判別できない者はいないだろう。

彼はみごとにドロンを決め込んだ。ミステリー小説顔負けのトリックが使われたのか? それとも、関係者一同みんなで知らぬ顔の半兵衛を決め込み、オリンピック開催前に厄介払いをしたのか?

これからのなぞ解き報道が楽しみだ。

(2020.1.1  花崎泰雄)

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