安倍首相が今年5月に伊勢志摩で予定されているサミットの準備のために、米国などのノーベル賞受賞経済学者らから世界経済に関する意見を拝聴している。
経済学者から消費税10パーセントへの引き上げを再先送りした方がいいという意見を引き出すのが目的のようにもみえる。
「消費税引き上げ再先送り」を使って衆参同日選挙をやろうというにおいも強まっている。
ふり返れば、2014年11月18日の記者会見で、安倍首相は2015年10月に予定していた消費税の10パーセントへの引き上げを18か月先送りし、2017年4月からにすると言明した。その是非を国民に問う、と称して総選挙を行った。
11月18日の記者会見で、安倍首相は次のように言った。
「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18ヵ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」
この時の首相の言葉を信じれば、経済学者との会合が消費税引き上げ再先送りのエクスキューズづくりという見方は成り立たないし、再び消費税増税再先送りを国民に問うための衆院解散という二番煎じの茶番もあり得ない。
「再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします」「景気判断条項を付すことなく確実に実施します」という言葉は、いまでも首相官邸のサイトに残っている。
したがって、もし経済情勢を理由に消費税引き上げ再先送りをしなければならないという判断に首相が立ち至ったとしても、2014年11月18日の約束を破るわけにはいかない。その約束で票を集め、その票のおかげで首相を務めている政治家の国民に対する約束は重い。
消費税増税再先送りは、首相が自らの経済運営の拙さを認めることである。政治の常識からすれば、その先にある首相の仕事は、首相をやめる事だけである。
(2016.3.23 花崎泰雄)