KANOとは嘉義農林野球部のユニフォームに描かれた校名「嘉農」のロゴである。去年の5月に台湾旅行をした際に、DVDショップに立ち寄って、何となく手に取り買ってきた映画DVDだった。3時間近い大作だったが、飽きさせることなく最後までワクワクしながら観終えた。
監督の近藤兵太郎を演じた、永瀬正敏の渋い演技がいい味を出している。
高校野球は、正直言ってあまり好きではなかったが、この話が単なる作り話ではなく、実際に85年前に起きた実話だと知って、関心が倍増した。
それまで公式戦では勝ったことがなかった嘉義農林学校野球部に近藤監督がやってきたところから話は始まる。そのスパルタ式指導で選手たちには、甲子園への夢が次第に芽生えていき、見事台湾代表となるのだった。
そして、甲子園でも予想に反して勝ち進み、見事準優勝することになったのだった。
映画には、台湾人に最も有名な日本人「八田與一」も登場する。彼が完成させた烏山頭(うさんとう)ダムへは6月に行き、八田與一の墓参りも済ませてきたばかりだった。
今回の旅行の目的の一つは、KANO故事館を訪れることだった。嘉義市内にできた「ひのきビレッジ」の一角に映画に登場する近藤監督の自宅を再現した「KANO故事館」があるとネットで下調べしておいた。
檜意森活村 Hinoki Village (ひのきビレッジ)
昔は材木の集積場として有名だった地域にできた、テーマパークで、様々な催しで賑わっていた。その中の一角に「KANO故事館」らしき家があった。
派手な看板はない
玄関に何か書かれていたが、よく意味が分からなかったので、とりあえず中に入ってみた。玄関に脱いであった靴の数から見ると、ざっと20人ほどが中にいるようだった。
玄関に置かれた風呂桶
玄関の壁際に置かれた古びたタンスの上に、無造作に風呂桶が置かれていた。
映画を観た人ならすぐに気付くだろう。冒頭、近藤監督が登場する場面で、人とぶつかった近藤監督が持っていた風呂桶を地面に落とし、桶が壊れてしまうシーンがあった。その場面を髣髴とさせる風呂桶である。
居間にはちゃぶ台があり、壁には昭和天皇皇后のご真影が飾られていた。居間の写真を撮っていたら、若くて背の高い女性が近づいてきて、「あのう、ここはレストランです。」と、たどたどしい日本語で話しかけてきた。
「ええっ?そうなんですか?!」と驚く私に、メニューを差し出して、「このラーメンがオイシイです。」と勧めるのだった。丁度昼時だったし、なかなかきれいなお嬢さんだったので、「じゃあ、それを一つお願いします。あのちゃぶ台で食べるんですね?」と私。
居間にいた人たちは、よく見ると食事を終えた人たちだった。奥の部屋にも食事中の家族連れが何組かいた。
豚骨ラーメン
やがて日式ラーメンが運ばれてきた。冷たいウーロン茶とチーズケーキが添えられていた。大きなオクラが一本丸ごと入っている豚骨ラーメンはなかなかおいしかった。
それよりも増しておいしかったのは、デザートのチーズケーキであった。このチーズケーキは本格派で、これまで食べたチーズケーキの中で最もおいしいものであったと思う。
食後、許可を得て奥の部屋を見て廻った。そこには映画の中でもあった、近藤監督が正座して筆でしたためた書がいくつか飾られていた。
一球入魂
甲子園
同じようにラーメンをすすっていたお客さんたちも、みんなKANOのファンらしく、私が次々にシャッターを切るのをニコニコしながら見ていた。
KANOのユニフォーム
映画のラストシーンは秀逸であった。
甲子園では優勝を逃した野球部員たちが台湾に帰る船上にいた。そこで、選手の声が、「帰ったら大勢で出迎えてくれっるのか・・・、がっかりした人たちを見るのか、どっちでしょうね?」と問いかける。
すると、近藤監督の声がこう答えるのだった。
「きっと、見渡す限り風邪にたなびく黄金の稲穂が迎えてくれるさ。」
ラストシーンの一言にも、八田與一の水利事業の栄光を掛けていたのが印象に残った。
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