教育落書き帳

教育とは何か…子どもの視点を尊重し、親、伴走者、市民の立場から語ります。子どもを語ることは未来への信頼と希望を語ること。

《蚤の調教》から《不登校》の問題を考える(1/2)--ノミはいかにして調教されるか

2013年04月18日 | 不登校
《蚤の調教》から《不登校》の問題を達を考える

▼《蚤のサーカス》という言葉を、最近になって立て続けに聞いた。一つはドイツの「ノミのサーカス団」で「芸を見せていたノミたち」が今年の厳しい寒さで一匹残らず死んでしまったという4月3日のAP通信の記事。もう一つはこの《ノミの調教》に関連した教育の話(たぶん)。ノミのサーカス団の監督は朝、可愛いノミたち300匹がずべて輸送用の箱の中で死んでいたのを発見してショックを受けたという。幸い近くの大学の昆虫専門家から50匹のノミを調達することが出来て予定の公演に穴を開けずに済んだというのだが…。「今でもノミの調教師なんているんだなあ」と妙に感心してその記事を読んだ。ただ、その事件が起きたのは4月1日というのがちょいと気になる。

▼《ノミの調教》の話を初めて聞いたのはいつだったか?もう数十年前、私がまだ20代の頃である。記憶すべき重要なことはずいぶん忘却の彼方にあるのに、その時読んだくだらない文章の記憶が今でも残っている。人間の記憶って不思議だ。しかし、実際の《ノミ・シラミ》とはどんなものか。恵まれた時代を生きる今の人達にはあまり馴染みがないかもしれない。残念ながら(?)実は私もほとんどその体験はない。しかし、周りには確実にそういう子ども達がいたようだ。だから、うっすら残っている記憶の引き出しを開けて見るような感じだ。とにかく《蚤虱 馬の尿(ばり)する 枕もと》と「奥の細道」で芭蕉が読んだあの《のみ・しらみ》である。

▼そのノミは1~2ミリの小さな体ながら30~100センチほども跳び上がるらしい。画像を見ると、翅はないが後ろ足がとても発達している。野生の動物やペットに寄生するための生得的な能力であるらしい。ノミの調教師はこの類まれな能力=本能を巧みに利用する。まずノミたちを透明なガラスの容器に入れて仕込む。普段はおとなしくてもいざという時に発動するのが本能。ドンとテーブルを叩くとノミはびっくりして跳びはねる。はねるとノミはしたたかに頭や体を天井のガラスにぶち当てる。《イタタタタ…何だこれは!》そう思うはず。それを幾度ともなく調教師は繰り返す。その度にノミは何度も何度もガラスにぶち当たる。そうしているうちに、飛び跳ねるのが彼等の本能であるはずなのに、それを疑い出す。《跳ぶのは何かの間違いではないか?跳ぶのはいけないことなのではないか?》そうして、ノミは本来の本能の発動を制御し、わずかしか跳ばないことが本当なんだ、という風に調教されていく。そして、遂にはノミたちは絶対に高く跳ぶことをやめてしまう。そうなったら、もう透明なガラスの上蓋を取り外しても大丈夫である。ノミたちは二度と高く跳ぶことをしないのだから。

▼この話を書こうと思ったのは、facebookで「ノミは1ミリたらずの体で、1メートルジャンプが可能。しかし、一度10センチのコップをかぶせられるとその後はずーっと10センチしか飛べなくなる。あなたに見えないコップをかぶせているのは誰ですか?」という記事に接したからである。調べてみると、結構いろいろな方がこのノミの調教の話を取り上げている。本来はいろいろな能力を持っているはずなのだが、生まれや環境、ものの捉え方、仕向けられ方などによって、「自分はそんな能力はない」「自分にできるはずがない」と思い込んでしまう。そういう洗脳の仕掛けがいたるところに働いていることへの警告なのかもしれない。

▼一般に教育には《洗脳》と《覚醒》の働きがあると言われる。その秩序に従うことを望む場合には、意識的か無意識的かは別にして、《洗脳》的な教育を行うことが多い。それがペットや芸を仕込む動物などの場合には《調教》という言い方になる。困ったことにこれが対象を《可愛がる》という美名の下になされることがある。たとえば、北海道であったことだが、旅行者が《善意》で野生の熊のためにために食べ物を置いて帰った。それを食べた熊は人間のところへ行けば労せず食べ物が手に入ると思い、山を降り民家に出没するようになった。結果、その熊は射殺されてしまった。《可愛がる》行為がその熊を殺すことになった例である。

▼私たちは教育の持つこういう側面を絶えず考えなくてはいけない。学校というところは知らず知らず結果的にそういう子ども達を作り出してしまっていることがある。どこかに《ボタンの掛け違い》があるのだ。現在の福島での原発事故後の動きを見ても、子ども達を思う《善意》が結果として子ども達の命を削ることに与してしまったかのように見える。《不登校》の子ども達の場合もまた、そういうことの結果であることが多い。学校の先生が意図して不登校を引き起こす教育を行っているとは考えにくい。しかし、結果として12万人に及ぶ不登校の小中学生が全国の公立の小中学校から出ることになる。

(2に続く)

******************************************************

「いきいきニコラ」のサイト
http://www.os.rim.or.jp/~nicolas/
「フリースクール・ぱいでぃあ」のサイト
http://freeschool-paidia.com/
「ぱいでぃあ通信」(不登校・フリースクール応援マガジン)(ブログ)
http://paidia.blog106.fc2.com/******************************************************

↓良ければクリック






最新の画像もっと見る

コメントを投稿