自衛隊よお前もか――イージス艦「あたご」の漁船衝突事故に思う
問題は何も沖縄の米軍だけではない。これも平和ボケといっていいのか、現実にはありえないような、漫画にしても嘘っぽいような事故が海上自衛隊の最新鋭イージス艦で起きた。場所は房総沖、多くの漁船が行き交う海域でのマグロはえ縄漁船清徳丸との衝突事故である。
しかもイージス艦から石破防衛大臣に連絡が入ったのはその90分後であったという。「連絡は後でいい」と石破防衛相や福田首相は軍人?に侮られ、文民統制ということを軽く見られていたのか、「報・連・相」の基本がまるで出来ていない。まさか「気が動転していて連絡が遅くなった」とは言うまい。救助に一生懸命でもやるべきことはあるはずだ。彼らは日本国を守るというトップ集団であるはずなのだ。
これでさえあり得ない行動なのに、渡辺喜美行政改革担当相は「万が一これが自爆テロの船ならどうするのか」と発言した。これがまだ行方不明親子を捜索中に行う大臣の発言かと耳を疑う。いやはや何ともTPOを弁えた名台詞であることか。まことに良く出来た大臣である。
なぜ事故は起きたか。「衝突事故の1~2分前に気付いた」というのはどうも嘘らしい。実は事故の12分前に視認されていたのだという。なのに何故事故は起きたか?どうも清徳丸に正面から乗り上げる形で衝突した疑いが強い。
それは偏にイージス艦の士気の緩み?驕り?によるもののようだ。あの海域に来てもイージス艦は手動ではなく自動操縦であったという。あり得ない操縦である。本来ならイージス艦の側が航路を避ける義務があった。ところが、イージス艦は自分から避けようとしなかったばかりか、漁船が避けて通るのが当たり前と思っていた節がある。
「オレたちは国を守る最新鋭のイージス艦だ、おらおらーイージス艦がお通りだ、どけどけー」とでもいうような意識がそこにはなかったか。官尊民卑の臭いがプンプンとする。イージス艦の彼らは漁船など一般の民間人を見下してはいなかったか。そんな連中が国を守っていると嘯いている。
後で分かったことだが、漁船・清徳丸で行方不明の息子・哲大氏はホームレスの足長おじさんだったようである。 ************************************************************************* 髪を短く刈り上げた1人の青年が運んだ魚は、東京・上野公園のホームレスに届いていた。「魚のお兄さん」。そう呼ばれていた青年こそが、イージス艦衝突事故で漁船「清徳丸」の吉清治夫さん(58)とともに行方不明となった長男の哲大さん(23)だった。 ************************************************************************* と報道は伝える。4年ほど前に、ホームレスに炊き出しなどの支援を行っている団体「赤銀杏会(あかぎんなんかい)」(東京都荒川区)に連絡が入り、それ以来年に数回、大量の魚を差し入れていたという。今時なかなかいない青年だと感謝されていたという。
幕僚長の中に「マスコミにしゃべるな」と漁民関係者に口封じを依頼した者がいたようだが、そういうことを含めて自衛隊の抜本的意識改革が必要だろう。
ただ冥福を祈る。そして一日も早い発見を待ち望む。この事件を無駄にしてはいけない。戦後60年、日本の社会は今こそ変わらねばならない。今まで良しとされてきたいろいろなことを、果たしてそれで良かったのか検証してみることが必要である。
「米軍」のアメリカも今オバマ氏によって大きく変わろうとしている。「自衛隊よ、お前もか」その日本の従来の意識では国は維持できないだろう。今回の事件もその転換の節目になってくれればと思う。