読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

ある竜馬についての話

2008-07-10 09:30:19 | 歴史
「命も要らず、名も要らず、官位も金も要らぬ人は、始末にこまるものなり。この始末にこまる人ならでは、艱難を共にして国家の大業を成し得られぬものなり。」とは「南洲遺訓」にある西郷隆盛の有名な言葉だそうである。これは西郷が竜馬の事を言ったものなのか、この事を示唆する逸話が有る。大政奉還のおり竜馬は新政府役員の候補名簿を作成した。ところが竜馬はその名簿のなかに自分の名前を入れなかった。それに気付いた西郷は「こりゃー、どぎゃーしもうしたもんかいの。」と竜馬に尋ねたと言う。竜馬は「あしゃー、出ませんぜ。」「世界の海援隊でもやりますか。」と答えたと言う。この話は司馬遼太郎も書いているが、賀来耕三氏は「我に策あり」小説坂本龍馬のなかで「残念ながら、このセリフは史実ではない。大政奉還後、新政府の要員リストを二人が検討し合った、時間的な余裕はまったくといっていいほどなかった。」と書いている。「二人には別々のアリバイが存在した。」と言うのである。そうすると司馬遼太郎のあの竜馬と西郷のセリフはどんな資料に拠ったのだろう。