読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

フクシマは日本のロボット産業の追い風になるか

2013-02-23 10:35:29 | 科学
wsj日本版から
ウォール・ストリート・ジャーナルの開催したカンファレンス「イノベーションの未来」では20日、パネリストらがイノベータ―になるのに必要な能力や世界的に見た中国の役割、創造力の育成、経済減速時に生じる機会について討議した。以下はその抜粋。
福島原発事故は日本のロボット産業にとって追い風となるか?

福島第1原発の事故後に活躍した米国製ロボット(2011年4月17日)
ただ、競争は厳しくなるかもしれない。グリシン氏によると、急激なコスト減や製造の外注化によって、ロボット会社を立ち上げることはかつてないほど容易になったという。5年前には考えられなかったことだが、現在では、技術者5人程度と20~30万ドルの資金があれば会社立ち上げが可能だ。ロシアで最も成功した若手起業家の1人とされるグリシン氏は、自然災害でロボット産業への関心に火がついたことは過去にもあるという。1986年のチェルノブイリ原発事故後にロシアでロボット産業が発展しように、日本でもこの分野でのイノベーションが増えるかもしれない。

同氏は起業家志望に対して、ロボットの機能がどんなに素晴らしくても、見かけをよくすることも怠ってはならないとアドバイスする。醜いロボットは誰も買わないという。

天才の遺伝子コードは存在するか

2013-02-19 09:42:52 | 科学
By GAUTAM NAIK
wsj日本版から
 香港の元印刷工場の跡地で、趙柏聞(20)という名の神童が、厄介で物議を醸す可能性のある研究に着手した。それは天才の遺伝的特徴を発見することだ。

 趙氏は高校を中退し、中国のビル・ゲイツと称されている人物だ。彼は中国政府などから資金援助を受けている民間企業のBGIの認知ゲノミクス研究所のトップを務めている。


Alex Nabaum
研究によると、IQを構成する要素のうち少なくとも半数が遺伝することが示されている

 この香港の施設では、100台を超える強力な遺伝子解析装置が約2200のDNAサンプルを解析、一度に32億の塩基配列を解読している。これらは普通のDNAサンプルではない。大半は米国で最も賢い人々、つまり、知能という点で並外れた部類に属す人々のサンプルだ。

 大半のDNAサンプルは、知能指数(IQ)が160、あるいはそれ以上の人々から採取された。ちなみにある集団におけるIQの平均は100に設定される。ノーベル賞受賞者のIQの平均は145前後だ。この香港プロジェクトのサンプル参加者と同等の賢さを持つのは3万人に1人だ。そのため、サンプルを探すこと自体、困難を伴った作業だった。

 趙氏は「人々は長い間、知能の遺伝的特徴を無視することを選んできた」と述べた。同氏はチーム初の研究結果を今夏公表できることを望んでいる。同氏は 「とりわけ西側諸国では、これが物議を醸す話題だと信じられているが、中国では違う」と指摘した。中国ではIQの研究がより科学的な問題だと捉えられるため、資金を集めるのが比較的容易なのだという。

 知能のルーツは謎だ。これまでの研究では、IQを構成する要素のうち少なくとも半数が遺伝することが示されている。しかし、科学者らはIQを著しく低下させる可能性のある遺伝子の一部、例えば知的障害に悩む人々に存在する遺伝子を特定しているものの、通常のIQに影響を与える重要な遺伝子はまだ特定できていない。 

 香港の研究者たちは、極めて高い水準のIQの持ち主の遺伝子と、一般人から抽出した人々の遺伝子を比較してこの問題を解決しようと希望している。2つのグループの遺伝子要因を研究することによって、彼らはIQの背後に存在する遺伝的要素の一部を抽出しようと期待しているのだ。 

 彼らの研究で結論が出れば、それは人の遺伝的な認識能力を予測する遺伝子テストの基礎を築くかもしれない。こうしたツールができれば、利用価値はあるが、同時に賛否両論の議論が生じるかもしれない。

 英国ロンドンにあるキングズ・カレッジのロバート・プロミン教授(行動遺伝学)は「もし学習に困難のある見通しの子どもを特定できれば」、その子どもの人生の早い時期に特別の学校教育やその他のプログラムを通じて「介入できる」と言う。 

 しかし、これに批判的な人々は、IQに関連した遺伝子データは誤って解釈されるか、あるいは誤って利用されやすいと懸念する。マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置く監視団体「責任ある遺伝学協議会」のジェレミー・グラバー会長は、知能科学の研究は過去において「特定の人種グループないし個人を標的にし、彼らを非合法化する」のに使われてきたとし、「遺伝学の世界で還元主義(生物学的な作用を物理・化学で説明しようとする主義。過度に単純化しようとする主義)的で決定論的な傾向が依然として極めて色濃く存在しており、このようなプロジェクトではそれが前面に押し出されるだろう」と警告した。

 趙氏自身、生まれつき非凡な人だ。遺伝学上の業績に加え、同氏は完璧に近い英語を独力で学んだと言う。遺伝学者としてのキャリアはキュウリの遺伝子研究から始まった。2007年、同氏は北京の学校の午後のクラスを抜け出し、中国農業化学アカデミーでインターンとしてスタートした。

 キュウリの遺伝子研究が09年に専門誌ネイチャー・ジェネティックスで公表された際、同氏は15歳で、共同執筆者として登場した。 

 遺伝学に魅了された趙氏は高校を中退して、世界最大級の遺伝子研究センターであるBGIでフルタイムで働き始めた。BGIは深�祁に本部がある。翌年、BGIは認識遺伝学センターを香港に設置し、同氏を所長に任命した。

 香港プロジェクトの大半のサンプルはこれまで、中国以外から来ている。主たる供給源は前出のプロミン博士のキングズ・カレッジだ。同博士は自らの研究のためにIQがチャートからかけ離れた約1600人からDNAサンプルを収集していた。

人工知能実現?

2012-11-27 09:01:03 | 科学
wsj日本版から

IBMのコンピューター「ディープ・ブルー」が1997年にチェスの世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフ氏に勝利したとき、チェスは論理のゲームにすぎない、だからディープ・ブルーの勝利は大きな意味のある成果とも、驚くべきこととも言えない、と識者らは論評した。比喩やだじゃれ、ユーモアなど人間の言語が持つ機微を習得する芸当はコンピューターには到底無理と思われていた。昨年、IBMが生み出した新たなコンピューター「ワトソン」はこうした課題を克服し、米人気クイズ番組「ジョパディ!」で勝利を収めた。人工知能が人間の能力と競い合う可能性についてそろそろ真剣に考える時期なのではないだろうか。

 発明家で未来学者のレイ・カーツワイル氏は新著「How to Create a Mind(知性の作り方)」の中でこの意見に賛成している。カーツワイル氏は人間の脳を完全に解明して、そっくりの人工知能を作れる時代は多くの人の予想よりはるかに近いと考えている。カーツワイル氏はこれまで技術の進歩を見事に言い当ててきた。したがって、カーツワイル氏の意見は傾聴に値する。

 「人間の脳はあまりにも入り組んでいるため、理論的に理解するのはほぼ不可能」という考え方が流行っている。例えば、マイクロソフトの共同創業者のポール・アレン氏は最近の記事で、IBMのワトソンとカーツワイル氏の両方を批判した。ワトソンの知識は不安定で、特定の領域に限定されており、カーツワイル氏は脳のあらゆる構造が「特定の物事を行うように進化によって精密に形成されてきた」ということを理解していない、というのがアレン氏の主張だ。アレン氏「複雑性というブレーキ」があるため、脳の働きを理解して複製を作ろうとしても、その試みは必然的に制限されると断定している。

 カーツワイル氏が新著の中で示した答えには説得力がある。まず第1に、脳は比較的小さく単純な情報量で構成されている。脳のゲノムは2500万バイトだ。脳の複雑性は秩序だった成長と精巧さに由来する。第2に、脳には大量の重複情報が含まれている。特定の基本パターン認識は脳のさまざまな領域でおそらく3億回繰り返されている。第3に、ハーバード大学医学大学院のバン・ウェディーン氏が同僚とともに最近の研究で発見したように、脳の大部分ではマンハッタンの街を走る通りとエレベーターのように、神経線維の束が横に並んでいて、その束がそれぞれ垂直につながっている。

 その上、人工知能システムの設計は人間の脳が発達してきた方法と一致している。カーツワイル氏は進化的アルゴリズム(手の込んだ試行錯誤、とでも言おう)を使って、今、私たちが当たり前に思っている音声認識ソフトを自ら開発した。

 カーツワイル氏は人間の脳を、認識パターンがどのように発展するかを予想することで機能する機械の集合体と考えており、この点でイノベーターから脳神経科学者に転向したジェフ・ホーキンス氏と一致している(ホーキンス氏は携帯情報端末「パームパイロット」を発明した人物だ)。われわれがある視覚イメージの断片を組み立てるとき、情報は基本的なパターン認識機能から取り入れられ、(神経線維のグリッドを通じて)高次の抽象認識に統合される。一方でまた、情報は抽象認識からパターン認識に下り、視覚イメージに欠けている部分や変化した部分についてパターンを予測することもある。予測がうまくいかないときは「驚き」として認識され、(グリッド状の神経線維を通じて)脳の高次の階層に運ばれ、意識的に分析される。

 この構図がおおむね正しければ、脳の複製は不可能ではない。技術者はかつて、回路の幅を5ミクロンにしようとしていたころは、1ミクロンにすることなどできないとばかにされていたが、今では0.022ミクロンを実現した。「人間の脳の構造を調べるプロジェクトは同じように進歩している」のだから、悲観的主義者は正しくない、とカーツワイル氏は言う。

 カーツワイル氏はさらに、脳は基本的にリニアな(線形の)組織で、連続して情報を処理していると主張している。だから、われわれは技術の進歩に生じる非線形の流行を把握するのが非常に難しいと感じるのかもしれない。ハードウエアとソフトウエアの両方が急激な変化を遂げるなかで、今後数十年の間に人間の脳がシリコン上に再現されることは絶対にないと言い張るのは、ばかげているし、賢明なことではない。

記者: Matt Ridley

113番元素、発見確定=「ジャポニウム」周期表に?―アジア初、理研が3回合成

2012-10-05 08:22:25 | 科学
理化学研究所は26日、加速器実験で113番目の元素の合成に3回成功し、新元素の発見が確定したと発表した。113番元素はロシアと米国の共同研究チームも発見したと主張し、国際学会がどちらに命名権を認めるか審議している。日本に認められればアジア初で、「ジャポニウム」が有力候補。論文は日本物理学会の英文誌電子版に掲載された。

 113番元素は、周期表ではホウ素やアルミニウムなどと同じ13族に位置付けられる。理研の森田浩介准主任研究員(55)らは2003年9月、亜鉛(原子番号30)の粒子を光速の1割まで加速し、ビスマス(同83)の標的に衝突させ、両元素の原子核が完全に融合した113番元素を合成する実験を始めた。

 04年7月と05年4月に1個ずつ、合成に成功。しかし、両方ともヘリウム原子核を放出するアルファ崩壊を4回繰り返してドブニウム(同105)になった後、二つの原子核に自発核分裂するパターンだったことなどから、国際純正・応用化学連合と国際純粋・応用物理連合の合同作業部会は発見と認めなかった。

 今年8月12日に合成した3個目は、ドブニウムまで崩壊後、さらにローレンシウム(同103)、メンデレビウム(同101)まで2回崩壊する別パターンだったため、発見は科学的に揺るぎないものとなった。 

[時事通信社]

電子機器、ほんとうに航空機運航の障害になるのか?

2012-09-13 08:31:45 | 科学
wsj日本版から
アレック・ボールドウィンは正しかった?

 昨年12月、俳優のアレック・ボールドウィンは飛行機の離陸時に携帯電話のゲームを続けようとしてアメリカン航空の従業員ともみ合いになり、降ろされてしまった。航空機の安全規則に盾突くのはほめられたことではないが、電子機器の危険を軽んじたことは正しかったかもしれない。


 米連邦航空局(FAA)は先月31日、離着陸時に電子機器のスイッチを切るというルールについてパブリック・コメントを募集し始めた。この規制が導入されたのは1991年。パイロットや乗務員から電子機器が航空機のナビゲーション機器に干渉したとかコックピットと地上の交信を妨げたといった報告がいくつかあったことが導入のきっかけになった。

 しかし、その後、米航空機大手ボーイングはこうした現象を再現することができず、連邦航空局は電子機器の電波が航空機の運航に影響する「かもしれない」としか言うことができないでいる。

 この問題を実例に基づいて検証するため、われわれは、昨年航空機を利用した米国人成人492人にアンケートを採った。その結果、40%が直近の離着陸時に電子機器のスイッチを完全には切らなかったと回答し、7%以上はWi-Fi電波のスイッチも切っていなかったと答えた。また2%はアレック・ボールドウィン同様、使ってはいけないはずの時間に電話を使っていた。

  こうした数字は何を意味するのだろうか。ざっくりと計算してみると、平均的な国内便で78人全員が完全に電話のスイッチを切っていた可能性はほぼゼロだったということだ。もしほんとうに電子機器が航空機の計器や通信機器に影響するなら米国内では毎日のように問題が起きているはずだ。

 なぜ明確な根拠なしに規制が長く存続してきたのか。それは人間には原因追及に熱心すぎるという悪しき傾向があるからだ。2つの出来事が相次いで起き、1つがもう1つの原因となった可能性があると、われわれは実際にそうだったと思い込みやすい。

 また、人間は電子機器が使われていないときに障害が起きたかどうかは考えない。さらに、障害が起きなかったときに、電子機器が使われていたかどうかも考えない。

 恐怖の力は強い。そして危険を予防しようとすることは自然だ。当局は規制緩和を嫌がる。安全を重視する以上、それは正当だろう。携帯電話が原因で航空機がクラッシュするなどという恐ろしい事態を思い浮かべてみて欲しい。だからFAAは、こうした不便を予防の名目の下に強制してきたのだ。

 いったん規制が導入されると、電子機器が原因となった事故が起きないことが規制の存在を正当化する。これは、街の中で大掛かりな「クマ・パトロー ル」を組織し、クマが出なかったことに意気揚々だったアニメの「ザ・シンプソンズ」の父親ホーマー・シンプソンの論理とほとんど変わらない。

 ルールに違反すべきだというつもりはない。しかし、こうした規制は、恐怖ではなく根拠に基づいて導入されるべきだ。そして、ほとんどのフライトで スイッチが入ったままの電子機器があるとみられるにもかかわらず飛行機が墜落していないことが、規制に根拠のないことを示している。

(ダニエル・シモンズ氏はイリノイ大学の心理学教授、クリストファー・F・チャブリス氏はユニオン・カレッジの心理学教授。両氏は「The Invisible Gorilla, and Other Ways Our Intuitions Deceive Us」を共同で執筆した)

原発事故の放射能でチョウに奇形

2012-09-01 08:32:03 | 科学
福島原発事故でチョウに突然変異が発生 (琉球大)研究
 (地震で)破損した日本の福島原発からの放射能が、近辺の生き物に影響を
及ぼしている。
 科学者が原発近くの7ヵ所からチョウを採集したところ、12.4%の個体に
奇形または未発達の前肢、眼の傷、翅の損傷など、体に欠陥が見つかった。
これらのチョウを、実験室で正常なチョウと交尾させた場合でも、子の世代で
は異常発生率が18.3%に増加し、遺伝子の損傷が子孫へ受け継がれることが裏
づけられた。
 琉球大の大瀧丈二准教授らのグループが、昨年の福島第一原発事故の
2ヵ月後、144匹のヤマトシジミ(チョウの一種)を国内10ヵ所から採集・分析
しました。その結果、放射能汚染の高い地域から採取したチョウの翅や眼など
に奇形が見られました。さらにその4ヵ月後に再びチョウを採集したところ、
福島近辺で採集したチョウの奇形は2倍以上に増えていた。

 チョウの奇形の原因として大瀧准教授らは、低線量放射線に継続的にさら
されたこと、放射能に汚染された葉をエサとして摂取したことを挙げている。
また親チョウの突然変異が子チョウに遺伝したことから、仮に放射性物質
が分解して放射能汚染がなくなっても、遺伝子の異常は親から子へと残り続け
ることになる。

 気になる人間への影響について大瀧准教授は、「人間はチョウとは全く
違い、放射能に対してはるかに耐性がある」とコメントし、人間の突然変異に
ついては心配無用としている。とはいうものの、低線量放射線の人体への
影響についてはまだまだ分からないことが多く、自然界には無数の動植
物がいることを考えれば、今回の報告のもつ意味は決して小さくない。
またこのニュースが国内ではほとんど取り上げられず、むしろ海外でばかり
注目されているのも気になるところ。

カロリー制限しても寿命は延びず

2012-08-30 20:34:19 | 科学
左がカロリーを制限されたサル。右がより通常に近い餌を与えられたサル。いずれも27歳
wsj日本版から

ある研究によると、サルを使った実験では、カロリーを制限すると健康にはなるが、その寿命は延びないことが示唆された。これは大幅なカロリー制限は寿命を延ばすとの、一部の人たちの考えを否定するものだ。

 過去数十年にわたるマウスとラットを使った各種の実験では、カロリーを制限すると、その寿命は30~40%延びた。カロリー制限が寿命を延ばすという考えは、2009年に発表されたアカゲザル―遺伝子的にマウスなどよりも人間に近く、同じように長期間生きる―を使った研究結果で、寿命が延びる傾向が見られたことで強まった。ただ、その研究結果は明瞭さを欠いていた。


 こうした研究成果は、摂取カロリーを制限するだけで長生きできるのではないかという魅力的な考えが生まれ、何千人もの人は現在、寿命を延ばすために、典型的なカロリー量である1日2200カロリーを30%も下回る熱量しかとっていない。薬品会社は、ひどい空腹感を覚えることなく同様の効果を得られる薬品を研究している。

 科学者らは、カロリー制限がもたらす利点が適応反応につながっているのかもしれないと推測し、食料が不足すれば動物は繁殖できず、その老化プロセスも鈍ると考えた。これによって、食料が豊富になり、繁殖できるようになるまで時間稼ぎができるというわけだ。

 しかし、科学誌ネイチャー(電子版)に29日に掲載されたデータは、この理論は人間には簡単に適用できないかもしれないことを示唆した。メリーランド州ボルティモアの米国立老化研究所(NIA)の老人病専門家で、報告の中心執筆者となったラファエル・ドカボ氏は「明らかになりつつある一つのことは、カロリー制限は地球上を歩いている全ての生き物にとって寿命を延ばす聖杯ではないということだ」と指摘した。

 同氏らの研究ではサルを1~14歳と16~23歳の二つのグループに分けて、通常より30%少ない餌を与え、その結果を通常に近い餌を与えた2グループと比較した。少量の餌のサルはいずれのグループでも、通常の餌のサルたちより長生きすることはなかった。

 健康面への影響はまちまちだった。少量の餌を与えられた雄のサルのコレステロールは非常に低かったが、雌のサルにはこれは見られなかった。カロリー制限はガン発生率を低めたようだが、一方で、心臓血管疾患の発生率をわずかながら高めた。有望な結果は、さまざまな老化に関連した疾患の発生は少量の餌のグループでわずかに遅れたように見えたことだ。

 NIAでのサルの研究は、ウィスコンシン大学で同様の研究が始まった1980年代末にスタートした。アカゲザルは平均して30年近く生きるため、生存中の差異を調べるには長期間が必要になる。

 ウィスコンシン大学の研究は決定的な発見をもたらした最初のものだった。09年に発表された研究結果では、老齢に関連した原因による死亡を除外する限り、カロリー制限はサルたちの寿命を延ばしたことが分かった。ただ、一部の科学者らは、その方法論を疑問視した。これらの死亡を含めれば、寿命が延びたことは消えてしまうというわけだ。

 それにもかかわらず、同大学のデータはカロリー制限が霊長類の寿命に影響する可能性があるとの手掛かりを初めて提供した。ミステリアスなのは、NIAの研究ではなぜ違った結論が出たのかということだ。

 一つの理由は、これらの研究が異なった形で行われたことだ。ウィスコンシン大のサルたちにはNIAの場合よりもはるかに多くのスクロース(蔗糖)が与えられた。また、大学の対照群(カロリー制限のないグループ)は好きなだけ食べることができ、NIAでは一定の量しか与えられなかった。

 テキサス大学健康科学センター(テキサス州アンアントニオ)のバイオ老人病専門家スティーブン・オースタッド氏は「制約条件から見て、いずれの研究もうまく行われた」とし、「いずれも発見したことをどのように人間の条件に当てはめるかについての問題を提起した」と述べた。同氏はNIAの研究には参加しなかったが、この研究についてネイチャーに解説を書いた。

 人々はその遺伝子的組成と食事の構成によってカロリー制限への反応が異なる可能性がある。その結果も、制限を始めた時に太りすぎなのか、あるいは既にやせているのかによって異なるだろう。適正に制限すれば、心臓疾患のリスク低減など健康面での若干の利益は得られるようだ。ワシントン大学(ミズーリ州セントルイス)の科学者は6月、カロリー制限をしている人の心臓は実年齢より20歳も若い人のようだったとの研究結果を発表した。

 一方で、テキサス大のオースタッド氏は、激しいカロリー制限をしている男性はテストステロン(男性ホルモン)が少なくなり、骨密度維持に問題が生じる恐れがあると述べている。

記者: Gautam Naik

赤ちゃんにとって一番の友は犬?

2012-07-19 09:05:46 | 科学
wsj日本版から

米小児科学界の雑誌「ペディアトリクス」のオンライン版に9日掲載された論文によると、幼児にとって犬は一番の友かもしれないという。

 それによると、家で犬を飼っている幼児は、犬を飼っていない幼児より健康で、耳の感染症が少なかった。猫と一緒に暮らしている幼児も病気になりにくいが、犬の場合ほど強い関係はなかった。

 この論文は、フィンランドのクポピオ大学病院の小児科医Eija Bergroth氏などが、同国の都市部、農村部に住む幼児397人を対象に生後9週間目から1歳になるまで、犬や猫との接触により風邪など気道の感染やそれに伴う一般的な耳の感染症から保護されるかどうかを調べた。

 論文の共同著者でもあるBergroth氏は、「家で犬と暮らしている幼児の方が健康で、耳の感染症になるケースも少なく、抗生物質の必要性も小さい」と指摘した。

 毎週のアンケート型式で行われた調査では、犬と暮らしている幼児は病気にかからなかった週が約73%だったのに対し、犬がいない幼児では約65%だった。調査対象は400人以下と少ないが、調査に当たった研究者は、両親に毎週質問状に記入してもらっており、統計上の有意性は高いと述べている。(犬を飼っている家庭の比率は調査期間中に変動したが、約32%だった。また猫がいる家庭の比率は約23%だった)

 犬と暮らしている幼児の中では、犬が戸外で大半を過ごしている家の幼児が最も病気にかかっておらず、抗生物質の利用も最も少なかった。Bergroth氏は、戸外で多くの時間を過ごす犬は、より多くのほこりや細菌を家の中に持ち込むからだろうとの見方を示した。ほこりや細菌にさらされることが多ければ、幼児の免疫力が高まるとみられる。

 この調査では、幼児の健康に影響を与える母乳か人工栄養かの違い、出生時の体重、子供の数、妊娠中の母親の喫煙などの要因を排除して分析した。

記者: Jennifer Corbett Dooren

妊婦の血液だけで胎児のDNA解析可能に-米研究チーム

2012-07-08 08:56:15 | 科学
wsj日本版から
米スタンフォード大学医学部の研究チームは4日、妊娠中の女性の血液サンプルのみを使って胎児の全ゲノムの塩基配列を解析できたと発表した。これは、子どもがどういう遺伝的状況で生まれてくるのかを知るため、従来のように母体侵襲、つまり妊婦の腹部と子宮の壁に針を挿入するような方法をとらなくてもいい方法を見つける取り組みで前進したことを意味する。この研究は4日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載された。医学界では、現在実施されている検査にまつわるリスクなしに、速く、比較的安価で、しかも正確に遺伝的状況を予測する方法を見つけることに強い関心が集まっている。今回の研究は、こうした関心を反映している。例えば、胎児の遺伝的状況を得るために多用されている羊水穿刺(ようすいせんし)は、妊婦の腹部と子宮の壁を通じて針を挿入する必要があるため、わずかに流産のリスクがある。今回の研究には米国立衛生研究所(NIH)やハワード・ヒューズ医学研究所が出資した。

 研究チームによると、今回の方法では父親のDNAが必要ないという。論文が引用した情報源によれば、米国では生まれてくる子どものうち推定3~10%は本当の父親が分からないとされている。それだけに、父親のDNAが必要ないのは利点だ。この論文の上席執筆者であるスタンフォード大学のスティーブン・R・クエーク教授(応用物理学・生物工学)は、「父親から必ずDNAを採取できると想定するのは現実的でない。父親が誰か当然分かっているとする想定もそうだ」と述べた。

 この研究は、胎児が妊婦の血液にDNAを放出するという1990年代末の医学的発見から派生して実施された。クエーク博士が共同設立者となった2社を含む多くの企業は既に、分子計測技術を使って、母親の血液内の21番染色体が他の染色体と比較して多く存在するかを計測し、胎児がダウン症かどうかを判断している。同教授は、現在行われている研究はこの手法を採用し、「全ゲノムに適用している」と述べた。

 ただし、ワシントン大学のジェイ・A・シェンデュラ准教授(ゲノム科学)は、こういった非侵襲的な全ゲノム検査を病院で実施する準備が整うまでには恐らくあと数年かかるだろうと述べた。同准教授はこの研究に参加していない。同准教授は先月「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」に掲載された似たような研究、すなわち母親の血液サンプルと父親の唾液を使って胎児のゲノムの塩基配列を解析した研究の筆頭研究者だ。

 同准教授は、ゲノム解析の費用が近年下がってきたものの、妊婦の定期検診で行えるようにするためには、コストがもっと下がる必要があると指摘した。同准教授は「1人や2人ではなく、何千人もの妊婦を対象にしたいのであればコスト低下が不可欠だ」と述べた。

 スタンフォード大学の研究チームは血液サンプルから解析する手法を2人の妊婦で試した。1人は健康な妊婦、もう1人はディジョージ症候群の妊婦だった。ディジョージ症候群は心臓などに問題を引き起こす恐れのある遺伝的疾患だ。同チームはディジョージ症候群の妊婦の胎児が母親の遺伝的状況を受け継いでいることを正確に特定できた。チームは臍帯(さいたい)から採取した血液中のDNAを使って、この結果を裏付けた。

 米臨床遺伝学会(ACMG)のエグゼクティブディレクター、マイケル・ワトソン氏は、この技術を出産前に使う上で残る大きな問題の一つが、どういった遺伝子突然変異が重い病気を引き起こすのか、はたまた引き起こさないのかに関する情報量が限られていることだと指摘した。同氏は「われわれはこれを理解する段階で行き詰まっている」と述べた。同氏は今回の研究に参加していない。

記者: Amy Dockser Marcus

「ヒッグス粒子」発見か=国際研究チームが発表

2012-07-05 08:55:39 | 科学
 欧州合同原子核研究所(CERN)の物理学者チームは4日、物質の質量の起源となる「ヒッグス粒子」とみられる新粒子を発見したと発表した。



 新粒子の存在は2つの国際グループが確認した。その1つを率いるジョー・インカンデラ氏は、新粒子は間違いなく(物質を構成する粒子を相互媒介する)ボース粒子であり、これまでに発見されたなかで最も重いボース粒子である、と述べた。

 CERNは、極めて高い精度で、この新粒子が陽子の125~126倍の質量を持つことが確認されたとしている。

 ただ、発表を行った研究チームは、今回の発見がまだ暫定的なものであり、今後、追加実験で検証する必要があると述べた。

 ヒッグス粒子は物質の最小単位である素粒子の中で唯一発見されておらず、「神の粒子」と呼ばれる。

記者: GAUTAM NAIK