狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

引退・勇退

2007-02-27 14:26:43 | 日録
「引退」と「勇退」ってどう違うのか気になる。
いんたい【引退】官職・地位から退くこと。また、現役から退くこと。「政界から―する」「―興行」
ゆうたい【勇退】後進に道を開くため、自ら進んで官職からなどから身をひくこと。「定年をまたず―する」―-こうとう【勇退高踏】官職から勇退し、俗世間を避けて生活すること。(広辞苑第五版)


円楽さんが、引退を表明した。会見の様子を、テレビが繰り返し繰り返し放映していたから、相当人気のある落語家だったに違いない。案に違わず新聞社会面でも大きく取り上げられていた。

 テレビ番組「笑点」の司会で知られる落語家三遊亭円楽さん(74)が、25日「ろれつが回らない。もうもう恥はさらせない」と記者会見で引退を表明した。円楽さんは05年10月に脳梗塞で倒れ、リハビリを続けて06年10月に関西の高座に復帰。
この日、「出来次第では、引退を覚悟している」と話して東京の「国立名人会」に臨み、古典「浜芝」を口演した。

口演後に会見した円楽さんは開口一番、「だめですね」。約30分予定が40分余り長引いた最後の浜芝を「ろれつが回らなくて、声の大小、抑揚がうまくいかず、噺のニュアンスが伝わらない」と総括。「もう、よくなるということが全然ない。今日が引退する日ですかね」。と話した。
会見では、評論家から引退の再考を促す質問も出たが、円楽さんは「黙って去っていく形が自然かもしれません。お客さんは『まだまだできる』と言って下さると思いますが、それに甘えてたんじゃ、あたし自身が許さないんです」ときっぱりと語った。(2.26日付朝日新聞社会面)


話は変わる。地域劇団〝「S」の会〟代表I氏が58歳で村の最高職を辞したのは、平成11年(1999年)であった。そのとき小生が呼びかけ人代表を引き受け、ささやかな、祝賀会をやった事がある。
そのときの案内状は次のようなものであった。
 
『村長さん(前)と一緒に
        おそばを食べて見ませんか』
  ―I(前)M村長を囲む集いのご案内

若葉の薫る爽やかな季節となりました。
皆様には、ご健勝のことと存知ます。
さて、M村長を4期16年間に亘ってお努めにになったIさんが、本年5月14日付けを以て退任されました。誠に残念でたまりません。ご存知のように、Iさんは、《村長さん》として、村民の暮しを向上させるための努力されたと同時に、先駆的とも言える「村」の《第九》の演奏会、オペラ《椿姫》の公演を実現させるなど、格調高い教育、文化の発展に寄与され、近隣のの市町村の模範ともなっております。
つきましては、
《村長》という肩書きを外されたIさんに、改めて喝采を送るべく、左記のようようなささやかな催しを企画いたしました。
銘酒《久慈の山》での乾杯、手打ちのおそばなどを賞味しながら、裃を脱いだお話合いを持ちたいと思います。
お忙しいところでしょうが、趣旨にご賛同の上、ぜひおでかけ下さるようご案内申し上げます。

          記
1.  日時   6月27日(日)午前11時30分~
2.   場所 Kギャラリー
3.  参加費   7,000円  当日申し受けます

   平成11年5月吉日

          呼びかけ人
           A   出版社代表
           B   俳人・T大学非常勤講師
           C   歯科医 コーラス代表
           D(代表連絡先)
               運送店経営   

各位様


当時の多くの新聞は「4期16年に亘って村長を務めたI氏がその職を引退した。」と報じた。
そのとき参加者の皆さんに配った冊子に小生はこのように書いた。再録しておきたい。

青島幸雄の東京都知事選急遽の不出馬の声明を、『引退』と称したかどうか失念してしまったが、I君の場合小生はどうもこの「引退」という表現だけは全く気に食わぬ。
そもそもこの言葉は、負け越した相撲の横綱や、優勝が出来ない巨人軍のかの名監督に注文を付けたり、当選が覚束ぬほど高齢で耄碌した老政治家が、出馬を断念したとき使う用語のことであって、出馬表明をしただけで、無投票当選が確実視されていた、若い働き盛りのI君への記事としては、語彙貧(ボキャヒン)この上なしと見るべきではなかろうか。

 どこの国に、迫られてやっと引退せざるを得なくなった、さる政党の前委員長みたいに雲の上のようなお方を引っ張り出して、吟醸酒「久慈の山」で乾杯する馬鹿がいるものですか。
 I君が選んだ名誉ある「勇退」は、かつて4期目就任の当初からの不動の信念であり、決意だったという彼の談話を耳にした事があった。今その談話が実現したわけであって、改めてI君の勇退を惜しみ、敬意を表するものである。この事実はまさに快挙であったと小生は断言したい。云々。

 われながらうまく出来た巻頭言だと思った。
会は主催者、小生の意見で、全くの政治家不在の集いになった。最後に本人と歯科医のかつて「椿姫」を演じたO女史との共演で、歌劇「夕鶴」の一こまを披露、一段と薫り高い祝宴となった。

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2 コメント

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綺麗な退き時?! (遊彩)
2007-02-27 16:31:29
我々サラリーマンには「勇退」も「引退」もあまり関係なく定年の時期が来れば退いたので、貴殿のように疑問も持たなかった。しかし、世間を見ていて、「ああ~この人は退き時を間違えたな!」と感じる人の’なんと’多いことか!とか。
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小生の場合? (tani)
2007-02-27 22:02:24
小生の場合は、何と表現すべきなのか?
勿論「勇退」も「引退」も無いのは、遊彩画伯と同列です。しかし日本銀行券の所有が殆ど無いのが、決定的相違点でござりませう。
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