狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

詩集 碧い柩

2006-03-14 12:55:24 | 日録

 最近は、色々な無料誌・紙がさまざまの場所においてあったり、新聞折込と一緒に配達されてくる。以前「くらしの情報ローカル紙」で無料プレゼントに応募して、見事外れたことを書いたが、今度は別の情報誌で、 2回も続けて当たってしまったことを書いてみたい。

 「白い風」というA5版58ページの洒落た造りの冊子で、年4回発行の季刊誌である。
 僕にこの幸運が向いたのは、創刊号のグルメガイドで「鴨セイロそば」無料食事券、そして5号では詩集「碧い柩」が送られてきたことだ。

このカルチャー情報誌「白い風」誌には《わが母校》という特集記事があって、郷土であるT市内の高等学校の紹介が毎号連載されている。詩集の著者Y・T氏は、市内で今は男女共学になってしまったけれど、前身は県でも数少ない歴史を持つ高等女学校であったX女子高校出身の方である。

先ず詩集の著者紹介の記事がある。

<この人に聞く
 地域医療に尽くす医師―
 母として、女として生きて   医師Y・Tさん

 内科・小児科、産婦人科の医師として地域医療に携わるY・Tさん。プライベートでは母、妻、嫁、そして詩人として活躍されています。今回はこの地方での青春時代の思い出や現在に至るまでのとっておきのエピソードについてお伺いしました。

(インタービュー記事)
―クリニックに海の写真がありましたが……。

 海に潜って私が撮影したものです。56歳から始めた遅まきのダイバーですが。日ごろ子供たちとふれあう機会が殆どなかったので、毎年夏休みにあちこちの海に一緒に行っていました。海外の海ロタ島で、その美しさに魅了され、素もぐりでは飽き足らず、海底まで行って見たいと、家族全員(親子5人)ダイビングの資格を取ってしまいました。子供たちがひとりだちしてしまった今も、夫と二人で、体調と相談しながら、年に2~3回魚たちに会いに行きます。>

その後の記事は、記者との質問に答えて、医学の道に入った動機、高校時代水泳部、文芸部、演劇部などで活躍なされ、今でも詩やエッセーを書いておられること、1992年子供たちに贈る詩集「愛」を、1997年には詩と随筆「碧い柩」を自費出版したこと、また母親業と仕事の両立等が、きめ細かく語りかけられている。

そして氏自身、以前からいろいろな病気をして、今も軽度の腎不全と膀胱癌を抱えているのだが、

 聖書の中の『自分が人にしてもらいたいことを、人にしてあげなさい』という言葉に従い、微力ながら残された生命の続く限り地域医療に携わっていきたいと結んでおられた。

 この言葉でもわかる通り、氏は、市内に在るキリスト友会のイースター礼拝会や、クリスマス礼拝会には、毎年欠かさず礼拝献金をなされている熱心なキリスト者であり、僕も以前からご高名や、詩人であることなども存じ上げていたけれど、ダイバーなどということは全く予想もできなかった。また僕は氏の詩集を拝見できたのも今が初めてなのである。

 製本のことは疎いけれど、角背綴じの上製本で、美しい装丁がなされていた。
 収められている10篇の詩はいずれも長い。

   四季のめぐり
    「夏」の1節を記して今日のブログを閉じることとしよう。
 
  地平線の一点から
  放射状に無数の光の矢が
  空間を貫き
  夜を薙ぎ払う

  露の輝きを分けて
  葉群れから鳥達が
  吹き上げる青い炎さながら
  いっせいに飛翔する

  やがて熱の断層が積まれ
  陽炎の揺らめきの向こう
  遥か山並みと海や湖が
  煌き誘いの舞いをまう

  土は素早く色褪せ
  足元から伝い上る熱いヴェールが
  肌に纏わり付く
  苦しみを紛らわすたまさかの風
 

                海ニ逃ゲヨウ
                舳先ハ碧ヲ切リ船跡ハ白尾ヲ描キ
                風ハ髪ヲ漉キ抜ケサル
                波ノ下ハ珊瑚ノ丘ニ魚群ノ乱舞

                山ニ逃ゲヨウ
                氷河ハ真珠ト琥珀ノ織リナス絨緞
                静寂ガ体ヲ透キ通ラセ
                雲ガ湧キ続ケ潤ノ泉

 赫あかと地平線に陽が融け去ると
 余韻にふるえながら
 星がまたたきはじめる
 夢の懐を求め家路につく森の住民たち

 なぜわたしの枕から花の薫りが消えたのか
 なぜわたしの心は眠ろうとしないのか
 夜陰に海鳴りを聴き峰の葉摺れを想う
 明日がい訪れる証しのない長い熱帯夜



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1 コメント

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恐れ入りました。 (針尾三郎)
2006-03-14 13:35:09
イヤー参った。

昔の海軍時代の、〝五省〟でやられては、マイッタ・まいった。

あの頃の針尾当時のことを、書いてみるかっト、思っていた、矢先だったんで。

出鼻を、くじかれた感じ。

イヤハヤ・・・ーー・・。

































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