呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

カプセルホテルの認可が出ない

2011年02月25日 | 日記

 上海にカプセルホテルができるとある頃話題になりましたが、現在難航しているようです。その理由としては使っている材料が基準をクリアしていない(燃えやすい)こと、火災等が発生した際に避難しにくいこと、そしてもうひとつがカプセルホテルという形態がはじめてであることもあって、中国の法令法規で根拠にできる通達類がないことです。投資者は既に300-400万元を費やしていますので、いまさら降りることもできず、このままあきらめることはないというコメントを残してます。

 

 では、この燃えやすい材料をちゃんとした材料に変えた場合はどうかということですが、それでも次に一人当たりの使用面積が狭いために避難が難しく、消防隊員がやってきても救助しにくく、そういう観点から消防部門が難色を示しているとのことです。これはカプセルホテルの宿命みたいなものですので、材料の変更と違って根本的な解決が難しいでしょう。そして最後に法令面です。カプセルホテルというものに対する技術標準もなく通達もない、そのため今のところ消防部門としては許可を与えようがないということです。仮に通達類が公布されるとしても相応の時間が必要になるでしょうから、当面はこのプロジェクトは「頓挫」せざるをえませんね。

 

 では、仮に以上の点がクリアになって開業できたとしましょう。ビジネス的に成功するのでしょうか。価格設定は一泊88元です。いわゆるエコノミーホテルといわれている錦江之星や如家といったところが一泊200元前後です。でも二人で泊まれば割り勘できるので、価格的にはカプセルホテルと変わらなくなってしまいます。旅行サイトのCtripを見ますと、ロケーションの問題もあるのですが、88元以下の料金で予約できるホテルもあります。こういった諸々を考えると、最初は話題性で宿泊客が増えてもそのうち下火になってしまうような気がします。まあ、始まってみないことにはわかりませんが、

 

 このケースは中国の法整備が遅れているがゆえに新しいビジネスモデルが認められないという事例ですね。事前にある程度の確認を行っていたのでしょうが、確認が甘かったのでしょうね。こういうケースは確かにあります。やりたいと思っていたことが事前の確認不足でそれができない、せっかく会社を作ってしまったしどうしよう、すぐにつぶすわけにも行かないし、しょうがないからこの会社でなんとかやってみようっていうのが。意外とこのあたりを軽視する会社があるんですよね。中国も大分開放されてきたとはいえ、日本から見ると外国であるということを忘れてはいけません。中国での事業を事前に検討する場合、二つ考えることがあります。制度面でクリアできるビジネスか、事業として採算が取れるのかという市場調査の部分の二つです。もちろんこれらがクリアできた上で戦略を考えていくことになります。実際にご相談をいただく場合、まずは制度と市場調査の二つの面から検討していくわけですが、あえて市場調査を行わず、制度だけから入っていくことをやることがあります。なぜならば制度で引っかかってしまってそもそもやりたいことができないという結論が出た場合、市場調査の意味がなくなってしまうからです。商売的には振るパッケージで契約してあれもこれもやってしまいたいということになるのでしょうが、個人的にはビジネスモデルによっては制度面だけを先に調査することをよくやります。それだけで結論が出るケースもありますからね。