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福島 葛尾村 帰還困難区域の一部で避難指示解除
2022年6月12日 13時00分 福島第一原発
東京電力福島第一原発の事故で避難指示が出ていた福島県葛尾村の帰還困難区域の一部で12日、避難指示が解除されました。立ち入りが厳しく制限された帰還困難区域で住民が帰還できるようになるのは初めてです。
葛尾村では原発事故の影響で避難指示が出され、村の面積の2割に当たる東部の野行地区が帰還困難区域となりました。
このうちの6%に当たる0.95平方キロメートルの県道沿いの地域が「特定復興再生拠点区域」に認定されて先行して除染などが行われた結果、空間の放射線量が十分低下したなどとして12日午前8時に避難指示が解除されました。
雨が降る中、作業員が野行地区と別の地区を結ぶ道路に設置されたバリケードを開けると車両が通っていきました。
村によりますと、この地域に住民票を登録しているのは30世帯82人ですが、帰還を希望しているのは4世帯8人にとどまっています。
今後、帰還する住民などをどのように増やしていくかや基幹産業となっている農業の再生が課題となります。篠木弘 村長は「11年余り避難生活が続き、住民の皆さんにはさまざまな苦労があったと思う。帰る、帰らないの判断は難しいが、この地域が心休まる場所になればいいと思います」と話していました。
自宅再建の住民「地区再生のためにもここで暮らす」
今回、避難指示が解除された地域で自宅を再建し、帰還への準備を進めてきた半澤富二雄さん(69)は「避難指示の解除はうれしいが、まだ課題が山積しているので、これからの野行地区をどう立て直していくか考えていかなければならない。この地区が好きなので、地区の再生のためにもまたここで暮らし、四季の変化を感じながらのんびり過ごして行きたい」と話していました。
帰還困難区域 これまでの経緯
帰還困難区域を抱えているのは福島県の7つの市町村で、その面積は、12日に避難指示が解除された地域を含めておよそ337平方キロメートルに上ります。
葛尾村の野行地区は原発事故後、比較的、放射線量が高かったため平成25年3月に立ち入りが厳しく制限される帰還困難区域となりました。
その後、平成30年5月にこの区域の6%ほどを国が特定復興再生拠点区域と認定し、優先的に除染やインフラ整備を進め、12日、避難指示を解除しました。
村は、この地域の大部分を「農業再生ゾーン」と位置づけ水田の整備などを進めるほか、かつての集会所のあった場所を「中心地区再生ゾーン」として住民の交流の場とする計画です。
ただ、この地域に帰還を希望している住民は4世帯8人にとどまっています。