新型コロナ XBB.1.5とは わかってきたこと【2/1】
2023年2月1日17時46分
NHKnews
新型コロナ XBB.1.5とは“第9波”は わかってきたこと【2/1】
2023年2月1日 17時46分 新型コロナウイルス
新型コロナの「第8波」はようやくピークアウトしたように見えます。
感染状況は今後どうなるのか、状況を左右しそうなのが変異ウイルス、「XBB.1.5」です。
アメリカでは6割を超えていて、免疫が効きにくく広がりやすいおそれがあるとされています。
「XBB.1.5」によって「第8波」が長引くことはあるのか。
これまでのワクチンは効くのか。
「第9波」は。
わかってきたことをまとめました。(2月1日時点)
感染状況は今後どうなるのか、状況を左右しそうなのが変異ウイルス、「XBB.1.5」です。
アメリカでは6割を超えていて、免疫が効きにくく広がりやすいおそれがあるとされています。
「XBB.1.5」によって「第8波」が長引くことはあるのか。
これまでのワクチンは効くのか。
「第9波」は。
わかってきたことをまとめました。(2月1日時点)
「5類」移行でも 変異ウイルス警戒を
「かなり多くの出席者から、新型コロナウイルスは変化し続けていて、慎重さが必要だという意見が出た」
先月(1月)27日に開かれた記者会見。政府分科会の尾身茂会長はこう述べて、引き続き変異ウイルスに警戒が必要だという考えを示しました。
この日、政府は新型コロナの感染症法上の位置づけを、5月に例年流行するインフルエンザと同じ「5類」にすることを決めました。
「病原性が大きく強まる変異が起きたり、同じオミクロン株であってもどんなに頑張っても医療ひっ迫が起きてしまう事態が起きてしまったりした場合は、対応を見直すことは当然必要になると思う」
XBB.1.5 米国で拡大続く
新たな変異としていま、特に警戒されているのが「XBB.1.5」です。
アメリカでは、去年12月ごろからニューヨークなど東部を中心に急増し、1月28日までの1週間では61.3%を占めるに至ったとみられています(CDC=疾病対策センター)。「XBB.1.5」は、オミクロン株のうち、2022年春ごろから広がった「BA.2」の2つのタイプが組み合わさった変異ウイルス「XBB」に、さらに変異が加わっています。
WHO=世界保健機関の1月25日の週報によりますと「XBB.1.5」はこれまでに54か国で報告されています。
国別では、アメリカが75.0%とほとんどを占め、イギリスが9.9%、カナダが3.0%、デンマークが2.0%などとなっています。
一方で、東京都のモニタリング会議の資料によりますと、東京都内では12月初め以降これまでに31例確認されていますが、検出される割合は1月9日までの1週間でも0.1%で、大きく増加している状況ではありません。
WHOリスク評価 “世界的な感染者数増加につながる可能性”
WHOは1月25日、「XBB.1.5」のリスク評価を更新して公表しました。それによりますと
▼ウイルスの広がりやすさについては、アメリカやイギリス、ヨーロッパ各国のデータではほかのオミクロン株の変異ウイルスより広がりやすいとしています。
▼過去の感染やワクチン接種で得た免疫から逃れる性質は、これまでの変異ウイルスで最も強いとしています。ただ、オミクロン株の「BA.5」に対応したワクチンを接種した人や、ワクチンを接種し感染の経験もある「ハイブリッド免疫」がある人では、「XBB.1.5」に似た「XBB.1」に対する抗体の値は高くなっているとしています。
▼感染した場合の重症度が上がっているという兆候は初期の段階では見られないとしています。
WHOは「XBB.1.5」によって「世界的な感染者数の増加につながる可能性がある」としています。数理疫学が専門で京都大学の西浦博教授は、1月17日の厚生労働省の専門家会合で、「1人が何人に感染を広げるか」を示す実効再生産数はこれまで世界的に主流だった「BA.5」の1.47倍に上るという試算を示しています(1月14日までのデータを分析)。
海外の感染状況に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は「WHOも警戒はしているが、世界で感染者数そのものが増えているわけではなく、感染力がどの程度なのか、まだ分析が必要な段階だ。一方で、アメリカでは死亡者数が多い状態が続いている。報告される感染者数は増えていないが実は把握されていないだけで、ある程度、感染者数が増えている可能性も考えておく必要はある」と指摘しました。
免疫逃避“最大” 結合力“強化”
「XBB.1.5」についての研究も発表されてきています。東京大学医科学研究所の佐藤佳教授が主宰する研究者のグループ「G2P-Japan」は、査読を受ける前の論文として、「XBB.1.5」の特徴を再現して人工的にウイルスを作り、実験を行った結果を公表しました。
研究グループは、ワクチンの接種後に、2022年夏以降の第7波で主流だったオミクロン株の「BA.5」に感染した人の血液を使って、「XBB.1.5」に対する免疫の反応を調べました。その結果、ウイルスを抑える中和抗体の働きは「BA.5」に対する場合のおよそ10分の1にとどまり、免疫を逃れる性質がはっきりしたということです。
さらに、研究グループは、感染力も高まっているのではないかとしています。
新型コロナウイルスが人に感染する際には、細胞の表面にある「ACE2」というたんぱく質にくっつきます。人の細胞にくっつきやすいと感染力が高まります。
「XBB.1.5」には新たに「F486P」という変異が加わっています。
佐藤教授によりますとこの変異があることで、「XBB.1.5」は細胞の表面のたんぱく質に結合する力が、無いタイプの変異ウイルスと比べて4.3倍になっていたということです。
これまでの変異ウイルスでは「中和抗体を逃れること」と「結合力が上がること」は両立しにくかったのが、「XBB.1.5」は両立していて、感染力も高まっているのではないかとしています。(佐藤教授)
「免疫をかいくぐる力が高まり、いわば『完成形』だった『XBB』に、さらに変異が加わることで細胞への感染力も高まり、より広がりやすくなっていると考えられる。これほど大きな変異はこれまでにほとんどなかった」
ワクチン効果は維持か
一方で、ワクチンで発症を防ぐ効果は「XBB.1.5」に対しても維持されているとする分析結果が1月下旬に出されました。
発表したのは、アメリカのCDC=疾病対策センターです。CDCは、2022年12月から1月中旬にかけて、新型コロナの検査を受けた人のワクチンの接種状況などを調べ、「XBB.1.5」などXBB系統の変異ウイルスに対するワクチンの効果を分析しました。
その結果、従来型のワクチンを複数回接種したあと、オミクロン株の「BA.5」に対応する成分を含むワクチンを追加接種すると、追加接種しない場合と比べてXBB系統のウイルスによる発症を防ぐ効果は、
▼18歳から49歳で49%、
▼50歳から64歳で40%、
▼65歳以上では43%でした。
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