ファンキーの工場に向かう途中の道からは、ゆきえさんのお墓が見える。
先週、何をどうしたって時間なんて取れるはずもなく。
「来週くるよ。」
と約束をした。
その来週の始まりが今日。
工場に向かう途中で、やっぱり膝が痛くなった。
忘れてはいない。
「夕方行きますから。」
と独り言のように、高速道路から見える遠くのお墓に話しかける。
そして、膝は痛くなくなる。
とても不思議だが、5年程前からずっとこうなのだ。
サダポンから頼まれていたブースの作成を終えて、千田くんとアタロウを乗せた僕の車はケーキ屋に向かう。
生きていれば40歳。
お墓には34歳のまま。
誰も、僕より先に死んでほしくないなぁと思った。
でも。
だからこそ僕は誰よりも長生きをしようと思った。
人類最後の一人になっても、僕は僕を好きな人を悲しませたくないなぁと思った。
「やぁ、すっかりババァじゃねぇか。誕生日おめでとう。」
花もなにもないお墓が嫌だった。
【うっせぇオッさん】とでも言われたのだろうが、僕には聞こえない。
次は、花も買おう。
僕の心に、もう怒りは残ってない。

僕が生き方を変えようと思ったキッカケ。
ゆきえさんの末娘は小学5年生になった。
随分と大きくなったもので、誰か分からないほどだった。
「平先生〜!」
「元気だった?」
「元気だった!テレビでよく見るから遠い人のような感じ!」
「そんなことはないんだよ。」
「あのね先生、あのね、こないだね、」
と彼女の話は止まらない。

チャコも死んで、今はウニがいる。
それと、ハンペンという犬もいる。
ウニは変わらず可愛らしく迎えてくれる。
「随分と顔を出さないじゃんか。」
「すまんね。本当に忙しい。」
「そんなのは言い訳だ。」

「応援団、アタシ好き。」
「そう。それはよかった。」
「青空応援団、かっこいいね先生。」
「死ぬまでやるよ。一人になってもやる。」
「死ぬまで?」
「そうだよ。ハルネちゃんや俺の息子たちとかね、世界中の子ども達をね。子どもだけじゃねぇけどさ。応援はどんなところからでも、ずっと出来るから。」
「死ぬまでなの?」
「君のことは死んでからも、ずっと応援してるよ。」
「天国から?ママみたいに?……。だから、青空応援団なの?」
やっぱり、まだ寂しいんだろうなぁと思った。

「先生、お菓子くれないとイタズラしまーす。」
「おもしれぇ、やってみろよ。」
「トリック オア トリート!」
「うるせぇ、やってみろ。」
「先生、怖い!」
「ほら。クッキー。」
「やっぱり怖くない!クッキー食べる!」
「食べな。」
子ネコもいた。
本当にかわいい。

僕らはそのまま九二四四へ。
クリスマスケーキの撮影をする時節となった。
早いものだね。
言葉の意味なんてサッパリ分からない。
でも、今年もメリークリスマスと言える日が待ち遠しくて、愛おしくてたまらない。

そこかしこに、楽しいことや嬉しいことってありまっせ。
そして、そこかしこに誰かの悲しみもあります。
せめて。
気持ちのいい風を魂に吹かせよう。
そうだ。
ベンチコート。
今日が締切です。
お忘れはありませんか?
先週、何をどうしたって時間なんて取れるはずもなく。
「来週くるよ。」
と約束をした。
その来週の始まりが今日。
工場に向かう途中で、やっぱり膝が痛くなった。
忘れてはいない。
「夕方行きますから。」
と独り言のように、高速道路から見える遠くのお墓に話しかける。
そして、膝は痛くなくなる。
とても不思議だが、5年程前からずっとこうなのだ。
サダポンから頼まれていたブースの作成を終えて、千田くんとアタロウを乗せた僕の車はケーキ屋に向かう。
生きていれば40歳。
お墓には34歳のまま。
誰も、僕より先に死んでほしくないなぁと思った。
でも。
だからこそ僕は誰よりも長生きをしようと思った。
人類最後の一人になっても、僕は僕を好きな人を悲しませたくないなぁと思った。
「やぁ、すっかりババァじゃねぇか。誕生日おめでとう。」
花もなにもないお墓が嫌だった。
【うっせぇオッさん】とでも言われたのだろうが、僕には聞こえない。
次は、花も買おう。
僕の心に、もう怒りは残ってない。

僕が生き方を変えようと思ったキッカケ。
ゆきえさんの末娘は小学5年生になった。
随分と大きくなったもので、誰か分からないほどだった。
「平先生〜!」
「元気だった?」
「元気だった!テレビでよく見るから遠い人のような感じ!」
「そんなことはないんだよ。」
「あのね先生、あのね、こないだね、」
と彼女の話は止まらない。

チャコも死んで、今はウニがいる。
それと、ハンペンという犬もいる。
ウニは変わらず可愛らしく迎えてくれる。
「随分と顔を出さないじゃんか。」
「すまんね。本当に忙しい。」
「そんなのは言い訳だ。」

「応援団、アタシ好き。」
「そう。それはよかった。」
「青空応援団、かっこいいね先生。」
「死ぬまでやるよ。一人になってもやる。」
「死ぬまで?」
「そうだよ。ハルネちゃんや俺の息子たちとかね、世界中の子ども達をね。子どもだけじゃねぇけどさ。応援はどんなところからでも、ずっと出来るから。」
「死ぬまでなの?」
「君のことは死んでからも、ずっと応援してるよ。」
「天国から?ママみたいに?……。だから、青空応援団なの?」
やっぱり、まだ寂しいんだろうなぁと思った。

「先生、お菓子くれないとイタズラしまーす。」
「おもしれぇ、やってみろよ。」
「トリック オア トリート!」
「うるせぇ、やってみろ。」
「先生、怖い!」
「ほら。クッキー。」
「やっぱり怖くない!クッキー食べる!」
「食べな。」
子ネコもいた。
本当にかわいい。

僕らはそのまま九二四四へ。
クリスマスケーキの撮影をする時節となった。
早いものだね。
言葉の意味なんてサッパリ分からない。
でも、今年もメリークリスマスと言える日が待ち遠しくて、愛おしくてたまらない。

そこかしこに、楽しいことや嬉しいことってありまっせ。
そして、そこかしこに誰かの悲しみもあります。
せめて。
気持ちのいい風を魂に吹かせよう。
そうだ。
ベンチコート。
今日が締切です。
お忘れはありませんか?