地震の直後。
たくさんの方々が応援してくれた。
先の見えぬ絶望を切り抜けるにはね、悲しむよりも何かをやっつけてやるような怒りの方が役に立った。
今から書くことを彼が望むとは思えない。
だがね、彼は僕にとって英雄に近しいのだ。
団員の皆に【共に生きる者】として、彼のことを知って欲しい。
筆舌に尽くし難い感謝は全ての人にあれども、記憶に強く残る人は確かにいる。
マッチングサイトというものがある。
適切な人に、適切にモノや人が届くように。
そんなサイトなのだろう。
「お願いタイガー」という名前だった。
「変な名前~!」と、タケチン達と笑っていた。
タイガーは様々な応援をしてくれて、様々な人に出会った。
そんな中、電話がきたことがあった。
「また、なにかあればお電話致します。また何かあればお電話下さい。」
「分かりました。ありがとうございました。」
「それと…頑張ってください。何も出来ませんけど、応援してます。」
柔らかな関西弁の方だった。
僕はあまり携帯に登録はしないのだが、
【ハマナカさん タイガー】
と登録をした。
応援のありがたさを、心の底に感じたものです。
何をしていても辛くて辛くて、涙が僕を攻めて来る。
電気もなく、水も不安があった。
それでも、彼は僕に頑張ろうと思わせてくれたのだ。
三年が過ぎて、ご存知の通り今は支援ではなく応援をしている。
人の一番の喜びは、成長だと僕は思う。
支援とは、一つ間違えるとその喜びの芽を摘むかもしれない。
僕にはもう、その判断は出来ない。
だから、やれる事はなんだろう。
得意なことはなんだろう。
最も頑張ったことってなんだろう。
真剣に考えてみたら一番頑張ったのは「応援団」だった。
なるほど。
支援は難しいけど、応援は簡単。
応援は、人の成長を促すしのう。
なにより、チカラになれることを知っている。
応援をしよう。
応援団を作ってみよう。
そんな感じでOB達に話をしたのが始まり。
先日の神戸での講演会の時。
「マルさん」と呼ばれてる人がいた。
ちょくちょく、スコップ団関西の集まりなどでは顔を合わせていたのだが、本名は覚えていなかった。
物腰が柔らかくて、誰の頼みも断らない。
一見すると、パシリのように使われているおじさん。
前の日の夜、最終の打合せがあった。
そこでマルさんをなんとなく応援団に誘ってみた。
「おう、やりなよ。男なら。資格はあんだからよ。男だという。」
「あ、はい。やります。」
「ええええええええ!?」
「やるの??マルさんが??」
「…はい。あの、入団させてください。」
「すご~い!本当に?」
「いや…ダメでしょうか?」
「ダメじゃねぇよ。そうか、ありがとう。腹を引っ込めないとね。頑張ろうぜ。」
「はい。」
「フランスはどうする?」
「…。間に合いますか?」
「知らん。己の努力次第じゃろ。やるなら俺は君を支える。君の過去には興味はない。今、入ろうとする勇気に興味があり、その先の未来に期待している。」
「あの、わたし、フランス行きます…」
「ほんとに~??マルさん、そんな簡単に決め…」
「男が決めたことだ、周りは黙ろう。」
「決めちゃわないと揺らぎそうだから、わたし、フランス行きます。団長。改めてよろしくお願いします。」
「分かった。じゃあ、食おう。」
「はい。」
「そうだマルさん。電話番号教えてちょ。ワンギリするから。」
教わった番号を押した。
初めてかけたハズの番号なのに、
【ハマナカさん タイガー】
って登録されていた。
一瞬で全てを悟ったし、あの頃の気持ちも思い出した。
電話口の柔らかな関西弁も、そうだ、この声だった。
ずぅぅ~~~~っと応援してくれてた。
応援団どころじゃない応援を、彼はずっとしてくれてた。
僕は胸が熱くなり、こぼれそうになる涙をなんとか耐えた。
帰り際、駐車場でお伝えした。
「マルさん。」
「はい。」
「マルさんはさ、ハマナカさんで、タイガーの人だったんだね。」
「…知っていたんですか?」
「お礼を述べなくてはいけない。本当に、その節はお世話になりました。ごめんなさい力不足で。あれが僕の精一杯でした。ありがとうございました。」
「うん、うん。いや、こちらこそ、ありがとう団長。」
涙を堪えることが難しかった。
それ以上は話せなかった。
黙ってるなんて、かっこ良過ぎるんじゃねぇの?
その青空応援団関西組の初練習。
僕が行かねぇ訳にはいかないわけ!
礼は述べた!
だから容赦しねぇんだ。
彼の覚悟に対する、それが礼儀だと思ったから。
団員へ告ぐ。
彼は演舞がまだまだだが、心意気は俺以上。
負けんなよ?!
すげぇペーペーが入団してきたぜ。
大阪に練習で向かえる者がいたら、行ってやってくれい!
50歳。
独身。
誰か、嫁はおらんか??
本当に素晴らしい男なのだが、どうしたらいいんだろ?
やい濱中くん!
掌は青空に向けろ!
それじゃ、
「お~い!こっちだよ~!」
だろうがよ!
子どもにも人気じゃのう。
どこにいるか分からない。
見送りありがとう。
板橋くんもありがとう。
ウカウカしてると、ルーキー共に追いつかれそうだ。
圧倒的に練習と研鑽を重ねようか。
副団長共も気を抜くな。
奴等なかなかやるぞ。
「団長の隣でお話しする~ん!」
「ダメ、前に乗り~。」
「いいよ。どうぞ?」
あれ?
お話しは…
寝てる~!!!
朝早いお見送りありがとうね。
大友、すまんが、そういうことなのでガシガシ頼む。
大好きな恩人なのだ。
あの冴えないオッサンは。
ありがとう、マルさん。
よろしく。