前項で、エアロスミスの「美獣乱舞」について書いたのだが、この頃、70年代末から80年代初めにかけては、70年代を謳歌したロックの大物アーティスト達がパンクの荒波に揉まれ、オールド・ウェイヴと蔑まされながら試行錯誤していた時代である。あるバンドは過去のスタイルから決別、裏切り者と罵られながらポップに変身(ジェネシスetc)したり、新しい血(メンバー)を入れて、大きな成功を収めたり(イエスetc)バンドの明暗が分かれた時期でもある。
そんな中、「プログレッシヴ・ロック史上最悪」と呼ばれるアルバムをリリースして大コケ、ひっそりと終焉した一つのバンドがあった。エマーソン・レイク&パーマー、アルバムは「ラヴ・ビーチ」である。しかし、私は声を大にして言いたいのである。「ラヴ・ビーチは名盤だと…。」
「ラヴ・ビーチは名盤…」、今まで私はそう言い続けてきた。(その都度、プログレッシヴ・ロック・ファンから軽蔑のまなざしを向けられてきたけれど…。)別に受けを狙って言ってきたのではない、本心から良いアルバムだと思っているのだ。
なんと言っても旧B面全てを使った「将校と紳士の回顧録」の素晴らしさ。プロローグ、キースのスタインウェイ・ピアノをバックにグレッグのテナーヴォイスが入る瞬間の美しさ…。ドラムが入って一気に盛り上がり、ショパンのエチュードなどを挟みながら曲は急展開、最後まで一気に聴かせる構成の妙…。素晴らしいピート・シンフィールドの詞…。冗談ではなく、この組曲、ELPの中でも屈指の名曲なのではないだろうか?(個人的には「悪の教典第3印象」、「海賊」と並んで、ELPの3大傑作と思っている程。)
この「ラヴ・ビーチ」、「B面はともかく、ポップ路線のA面がね…。」と言われることも多いのだが、A面もメロディアスな良い曲揃いだし、グレッグのソロだと思って聴けば、腹も立たないのではないだろうか?それにラストに入っているELPお得意のインストナンバー「キャナリオ」は良い出来である。
…と、先入観なく、1回じっくりと聴いていただければ、名盤ということに同意してくれる方は多いのではないだろうか…と思う「ラブ・ビーチ」、本当に不憫なアルバムなのである。
まぁ、ここまで不当な評価をされてきた理由としては「3人がノー天気に笑っているお馬鹿なジャケット」、「従来のELPのイメージを裏切るあまりにも軽いノリ」という2点が大きいと思うが、そんなことで、このような名盤を聴かないのは本当にもったいない。
エアロスミスの「美獣乱舞」同様、「騙されたつもりで」、純粋に先入観なしに聴いていただきたいと思う次第である。
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