悠歩の管理人室

歩くことは、道具を使わずにできるので好きだ。ゆったりと、迷いながら、心ときめかせ、私の前に広がる道を歩いていきたい

離れ業

2011-08-28 22:40:13 | ウォーキング

テレビで「三波春夫 歌芸一筋に生きた道」を見た。
小学生の頃から好きな歌手で、俵星玄蕃のレコードなどは良く聴いていた。
彼の朗々と歌う声が好きだ。聴いていて気持ちが良い。
今、家には彼のレコードその他の音源はない。テレビでたまに聴くくらいだ。
今日の番組を収録しようと思い、夕方娘に電話をして、録画の方法を教わった。
しかし、手違いで時間が過ぎてしまい、
その上テープが見つからなかったので録画を諦めた。

俵星玄蕃その他の曲を聴く内に、歌声に感動し、涙が出そうになった。
彼の気持ちの良い歌声を聴くと感動する。

番組の中で、ある曲を収録するに当たっての永六輔の思い出話の紹介があった。
永六輔作詞、『明日咲くつぼみに』の収録時の話。この時、三波春夫は癌を患っていた。
永は癌のことを知らなかった。もし、知っていたら歌わせなかったと言っていた。
歌詞の中に、死んでいく者の立場からの語りが含まれている。
歌わせたことは悔やんでいたそうだ。
その時、歌い方に注文をつけた。
90歳を過ぎても歌えるような優しい歌い方で歌って欲しいと言った。
しかし、三波はいつもの力強い歌い方になってしまう。永は、何度もだめ出しをした。
それを聴いていた三波の妻は、「もうやめて欲しい、
三波にはこういう歌い方しかできない」と永に言った後、スタジオに入り、三波に言った。
「永さんの言うようになぜ歌えないのか。三波春夫ともあろうものが!」と叱咤した。
これを聴いて、永は泣いてしまったそうだ。

確かに『明日咲くつぼみに』の歌声は、今までにない優しい歌い方だった。
三波の奥さんの、三波がかわいそうで歌わせられない、という思いと、
三波には作詞家の指示通り歌えるはずだという強い思いとが、
二人に正反対のことを言っていながら、矛盾していない離れ業をさせたのだと思った。