(尾崎紅葉風 その1)
勤めのありし妻の負担を軽くせんとて、我毎週水曜日に厨房に立つこと久しきなり。己が好みもありければパスタを作ること多かりしも、けふはきのこを使いて和風にせんとて、仕事の帰りに数多きのこを贖いて帰宅せり。
昨日からの雨未だに降りやまず時にいと激しければ、下拵えを済ませて後、妻を迎えに車を出せり。
「けふは殊にお腹がすきましてよ。」
妻は助手席にて疲れた様子で言いけり。
「君、けふはすこし趣向が違うから是非楽しみにしたまえ。」
「まぁ、左様ですか。楽しみですこと。」
街は雨のために渋滞しけり。そのために空腹はいや増しにけり。
帰宅してすぐに調理に入りけり。出来上がりたるはしめじ、えのき、えりんぎを使いし和風パスタなり。
「いいお味ですこと。きのこがほんとうにおいしいわ。エリンギの切り方がおもしろいのね。」
「や、失敬だな君。それは帆立だよ。」
「またそんなこと言って。」
「いやそれにしてもきのこといふのはいいものだ。調理は簡単でおいしい。」
「それにカロリーもないわ。」
「味付けには尾道屋さんのだししょうゆを使ったんだが、どんな感じだい」
「それでおいしくなったのね。それにバターの代わりにココナツオイルを使ったのもよかったのよ、きっと。」
「なるほど。そうだな。」
妻の空腹いかばりか、あっという間に平らげてしまいけり。
「わたし、これならもう半分ほど食べることできましてよ。」
普段は少食の妻なりけれども、これより水曜日は多めに作るべしと我は思いけり。
雨はなお降りやまず街の夜景は霞みけり。
「エリンギ」
エリンギの 切り方けふも 笑われて
蔵
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